« 品質検査データ偽装事件の発覚経過を機関投資家はどうみるか? | トップページ | 経営陣の処分と任意の指名・報酬委員会の役割 »

2017年11月30日 (木)

品質検査データ偽装に気づいた企業は素直に公表できるだろうか

(最近はこの話題が多くて恐縮です)経団連の会長さんが会員企業1300社に対して品質検査データに問題がないか、調査を要請することを決めたと報じられています(モノ作り企業を対象に・・・ということかと思いますが)。日本企業の国際的信用を毀損しないための要請だと思いますが、もし会員企業において検査データに問題が認められた場合には、果たして事実を公表できるのでしょうか?

これまで品質データの偽装を公表した神戸製鋼所、三菱マテ・グループ、東レ・グループでは、いずれも自ら不正を発見して、すでに取引先に申告済です。しかし、これから調査をして不正を発見した会社は、おそらく取引先にも不正を隠ぺいしたままの状態です。その状況で公表するとなりますと、顧客、取引先の混乱は相当なものになります。いままで公表した企業以上に「なぜ隠ぺいしていたのか」「なぜ不正に気付かなかったのか」と世間から大きな批判を浴びることは必至です。

また、これまで公表した企業の場合、取引先や顧客からの問い合わせが増えたことで「やむなく」公表に至ったわけですが、取引先に説明もしていない企業の場合は、内部告発でもないかぎりはバレる可能性は薄いはずです。だとすれば、やっぱり公表せずに隠し通すことに賭ける(墓場まで持っていく)ことを選択するのではないでしょうか?

「品質検査には誤差はつきもの。トクサイが認められている以上、品質検査官には裁量が与えられているのだから、これは誤差の範囲内での修正と判断したんだろうね。だから公表するほどでもないだろう」

経営者が隠すことを正当化するバイアスは十分に働くと予想します。

たしかに「隠し通すことに賭ける」ことでバレずに済む会社もあると思います。ただ、私の経験上、そのような会社には「負のストーリー」が脈々と受け継がれて、悪しき組織風土が根付くものと思います。何かあっても、社員は「この会社は不正は隠すことを容認している」として、現場の不正がトップに届かない風潮が増幅されます。内部通報制度も機能しないはずです。

そこでひとつの提案ですが、今回の品質検査データの調査にあたっては、公認不正検査士(CFE)資格者に「社内調査が公正に行われているか、その情報が経営トップに正確に伝わっているか」といった点についてチェックを委託して、CFEのお墨付きをもらうことを検討されてはいかがでしょうか。現在、日本には公認不正検査士が2000名以上います。弁護士、会計士等の資格保有者も多数存在します。社内調査の公正性担保、ということだけであれば費用対効果、という面においても適切ではないかと(こういったときにこそ、CFEが活躍すべきではないかと思います)。

そこまではむずかしい、ということであれば、せめて公正なプロセスチェックが期待できる監査役等による監視・立会は不可欠ではないでしょうか。ぜひとも、不正を隠すような事態、告発によって後日発覚してしまうような事態をなくすためにも、適切な不正調査の在り方についてご検討いただきたいと思います。

 

11月 30, 2017 企業不祥事を考える |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/66102266

この記事へのトラックバック一覧です: 品質検査データ偽装に気づいた企業は素直に公表できるだろうか:

コメント

いやもうこの話、否が応でも日本相撲協会を連想してしまうわけです(^_^;)。

しかし、「過去の不正」、ありていに言ってしまえば、永年、それも大相撲発祥以来ずっと行われてきた八百長行為を全部認めて膿を出し切るなんてことは絶対に出来ないわけです。ましてや大昔と違って、一年に本場所だけで90試合も取り組みをやらされているわけで、これを全部ガチンコ(演出無しの本気)でやったら、力士といえど死んでしまいます。。

違う話をしているようで、大企業、メーカーと状況は酷似していませんでしょうか。社内取締役たる貴乃花親方は不正を知り、取締役会ではなく警察に訴えた、と。

何処かに無理があるのです。そこを変えていかない限り、不正はなくならないどころか減りもしません。調査や監査は所詮対処療法だということを肝に銘じておかねばなりません。そして、何らかの形で過去に決着をつけないと前には進めません。

投稿: 機野 | 2017年11月30日 (木) 10時46分

経済産業省や国土交通省、厚生労働省などが被監督企業から集金して、CFE等に遵法性監査を委託してみてはどうでしょうか。
長年にわたる不正の場合、取締役や執行役など幹部が全く知らないはずがなく、抜き打ちや税務調査並みの半強制力を背景とした調査でなければ、本気で隠蔽する風土の組織には、全く歯が立たないのではないかと感じます。
毎四半期会計監査を受けている上場企業で不正会計が減らない
昨今、性善説に基づく規制がどれくらい遵守されているか疑わざるを得ないと言えます。
もはや、各企業団体の経営者任せではメイドインジャパンのブランドが毀損するだけでなく、国民の安心安全が担保できない事態に、行政が法規制の実行性確保の仕組みを再構築することを期待します。

投稿: たか | 2017年11月30日 (木) 22時05分

皆様、ありがとうございます。
>機野さん、そのお話、講演で使わせていただきます。
>たかさん、そうですね。具体的な提案を監督官庁に対して要請してみたいと思います。議員さんへの根回しも含めて検討してみます。

投稿: toshi | 2017年12月 1日 (金) 00時11分

コメントを書く