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2017年11月28日 (火)

消費者裁判手続特例法のコストパフォーマンスは如何に?

11月27日の日経ニュース「消費者一括救済、訴訟ゼロ 特例法施行から1年余り」を読みましたが、施行から1年余り経過した消費者裁判手続特例法の活用事例が未だ一件もないとのこと。平成25年の法制定以降、ビジネス法務の世界では「日本版クラスアクション到来!」と恐れられ、「民事訴訟の特別版が出来たことで、まじめな企業もターゲットになるぞ!準備は大丈夫か?」などと盛り上げて(煽り立てて?)おりましたが、いざフタを開けてみるとこんな感じになっているようです。

ただ、私は平成28年6月30日に公表された「消費者団体訴訟制度の実効的な運用に資す る支援の在り方に関する検討会報告書」の内容について、検討会の座長でいらっしゃった升田純先生のお話をいろいろとお聴きしていたので、「運用するにはかなりハードルが高いなあ」という感想は持っておりました(上記の日経ニュースを深堀りされたい方は、この検討会報告書をお読みになることをお勧めいたします)。本特例法のコストパフォーマンスを上げるためには、①公益活動を担う弁護士の報酬等を含めた財政支援、②被害情報が特定適格団体にタイムリーに入るためのシステム作り、③企業側の瑕疵を立証可能とするための科学的知見の補助、といったところがポイントになろうかと思います。

また、「いまのところ訴訟が一件も提起されていない」と報じられていますが、これは消費者庁の「特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」の存在も大きいのではないかと思っております。 その33頁以下に「(6)特定適格消費者団体の責務(法第75条第2項関係)」なる指針が示されていますが、特定適格消費者団体は、事業者に対していきなり訴訟を提起することが困難なのですね。原則として事業者との間で事前交渉を行うことが求められています。そうなると、トンデモ事業者は逃げたり、資産を散逸する時間ができますし、まじめな事業者は、共通義務確認訴訟で敗訴しないための要件を満たすように事前準備をすることも可能です。 つまり、「相当多数性」「共通性」「支配性」要件の欠如を指摘して、被害弁償や将来的な被害拡大防止策を図ることにより、特定適格消費者団体が提訴を断念するよう努めることになります。

私も当ブログにおきまして、「日本版クラスアクションが来るぞ!」と煽っていたひとりなので(笑)、少し言い訳に聞こえるかもしれませんが、消費者法関連の企業リスクというものは、大きな事件が起きたり、政局が変わることによって企業に突如降りかかります。そのときになって対処しても遅いのであり、今からきちんと不正リスク管理を怠らないことが肝要ではないかと思います(って、ホントに説得力に乏しい言い訳にすぎませんが。。。)

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