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2017年12月14日 (木)

地面師詐欺事件と売主側に関与した専門家の法的責任-最高裁の判断下る

積水ハウスさん、アパホテルさんの事件報道をもとに、このところずっと注目しておりました地面師詐欺における専門家責任(弁護士過誤)に関する裁判についてのご報告です。こちらの経済系ジャーナル記事でも取り上げられているとおり、本人確認情報を提供した弁護士の法的責任に関する判断が、一審と二審では分かれておりました。一審では本人確認をした弁護士が敗訴したものの、控訴審ではその責任を否定する逆転判決が出されておりました。ちなみに、私が11月に取り上げたエントリーはこちらこちらです。

そして本日(12月13日)、事件関係者の方からご報告いただきましたが、地面師詐欺の被害者(なりすまし本人からの不動産買主)による上告受理申立てを棄却する最高裁決定が12日付けで出されたそうです。新証拠が上告人から提出されていたようですが、やはり私の予想どおり「なりすまし本人」に本人確認情報を提供した弁護士の過失(ミス)は最高裁で否定されたことになります。なお、本件裁判については、訴訟代理人から判例時報社に判決文が持ち込まれているようなので、追って逆転判決となった控訴審判決、そして昨日の最高裁決定が判例時報に掲載されることになるものと思います。

地面師詐欺事件で専門家責任が容易に認められるようになりますと、ゲートキーパーとしての法律専門家としての仕事を誰もやりたがらなくなり、また一部の悪質な法律家の暗躍の場を拡大することになってしまって、地面師詐欺被害を増幅しかねないといった危惧を抱いておりましたので、私個人としては結論には納得しております(なお、本件では真の買主から当該弁護士に対する損害賠償請求訴訟も提起されていますが、こちらは未だ裁判係属中だそうです)。

ただ一方で、これまでのエントリーで述べているように、たとえ売主側に法律専門家の関与があるとしても、とりわけ買主が法人の場合には売主確認に関する内部統制システムを適切に整備・運用する必要があるということが言えそうです。ほしい物件であればあるほど、「相手方が本人であってほしい、いや、本人に違いない」といったバイアスが買主側に働いてしまうので、冷静に売却を決定するためのプロセスをあらかじめ社内ルール化しておく必要がありそうですね。

12月 14, 2017 民事系 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月12日 (火)

取引先社員による内部告発の脅威-大手ゼネコン役員辞職

本日(12月11日)ある会合で、新刊の拙著をお読みになった方から「以前出された本よりも読みやすくなったが、『内部通報』と『内部告発』の区別はわかりにくい。せめて『内部告発』は『外部告発』と表記すべきだ。そうすれば内部通報との区別もイメージしやすい」とのご意見をいただきました。外部第三者への社員による情報提供は「内部告発」という用語が一般的に使われているのですが、一般の方に向けた本であれば、たしかにイメージしやすい表記をすべきだったかもしれませんね(法律上の用語でもないので、今後は検討いたします)。

さて、当ブログの本日の話題はといえば、間違いなく多くのマスコミで取り上げられているこちらの記事になってしまいます(清水建設、執行役員辞職。下請け業者に実家の雪下ろしさせ・・・毎日新聞ニュースより)。最初に報じたのが毎日新聞ニュースでしたが、テレビニュースでは、多くの下請け事業者の社員が清水建設執行役員の方の実家に集まり、雪下ろしではなく「草むしり」をしている映像が映し出されておりました。報道では「マスコミからの照会により社内調査を進め、本件が発覚した」とありますが、テレビニュースには下請業者社員の方が(顔ボカシをして)インタビューに応じておられたので、まちがいなく内部告発(外部告発)でマスコミに情報が提供されたものです。

大手ゼネコンさんの不祥事といえば、偽計業務妨害罪容疑で捜査が進行している談合や賄賂といった事例が思い浮かびますが、(もちろん競争不正という意味ではとても違法性は高いのですが)「会社のためにやった」という意味では、日本人はやや寛容なところがあると思います。しかし「実家の草むしり、雪下ろしを下請け業者にやらせた」というのは私利私欲のための優越的地位の濫用であり、社会的批判はとても強いものとなるはずです。当該下請け業者の資本金が3億円以下なのかどうか不明ですし、ゼネコンさんが法人として利益(役務の提供)を得たわけではないので、下請法違反には該当しないのかもしれません。しかし、この下請け業者さんは福島の除染作業を請け負って100億円もの売上を計上していたそうですから、ゼネコンさんが見返りに業務を委託していたのではないか・・・といった疑惑を持たれてもしかたのない行為です。

本事件に関連するネット掲示板を読んでおりますと「ゼネコンと下請けの関係からすれば、こんなの日常茶飯事だろ」「告発した社員は下請け業者から解雇されるだろうな、余計なことしたんだから」といった書き込みが散見されます。もし、本当に掲示板の書き込みが正当な意見だとすれば、ゼネコンさんの社内調査は(税金が使われている受託事業である以上)かなりスコープを拡大する必要があると思います。また、清水建設さんのヘルプライン(内部通報規程)では、おそらく取引先社員による内部通報も許容しているはずですから、当該下請け業者社員による内部通報の有無も調査すべきです(もちろん、このような不適切行為が「公益通報」に該当しないとしても、下請け業者への報復的な取引制限については民事上問題になりうるものと考えます)。

かりに「こんなのゼネコンの世界ではあたりまえ」であったとしても、世間の常識とかけ離れていれば告発の脅威にさらされます。人手不足の折、今後は同様の不祥事発覚がさらに増えるものと思われますが、社内で問題行為を早期に発見するためにも内部通報制度を充実する必要があります。

12月 12, 2017 コンプライアンス経営 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年12月11日 (月)

ダスキン事件株主代表訴訟判決確定から10年(あらためて考えること)

大林組さんの入札不正(偽計業務妨害容疑)事件が報じられていますが、今後どんな展開になっていくのでしょうかね?不正競争防止法違反事件に発展するのでしょうか、それとも共犯事件に発展するのでしょうか。今後の特捜部の捜査に関心が集まりますね(以下本題です)。

日本の上場会社で敵対的買収防衛策が話題に上るようになって10年が経過しましたが、同じく不祥事対応の重要性が真剣に語られる契機となったダスキン事件株主代表訴訟大阪高裁判決の確定からまもなく10年が経過します(最高裁決定は平成20年2月12日)。

法令違反の有無・・・という点では少し状況が異なりますが、近時の品質検査データ偽装問題でも、「安全性に関する問題は確認されていないが、安全性に関わる社内ルール違反の行動が認められた場合に、当該違反行為を公表すべきかどうか」という点が議論されています。「SNSに書き込みがあったから公表した」「神戸製鋼所が公表したことを参考にして公表した」「経産省から強く公表を勧められたので公表した」等、さまざまな理由が(社長さんの記者会見で)述べられていますが、おそらく社内の経営陣の皆様からすれば「この程度でなんで公表しなければいけないのか」といった心境ではないかと思います。

ただ、11年前のダスキン事件大阪高裁判決では、同社の取締役会での「積極的には公表しない」といった判断が善管注意義務違反とされました。違法添加物の入った「大豚まん」をすべて販売してしまい、販売終了後2年ほどが経過し、健康被害も出ていない状況のなかで、「過去に違法添加物の入った豚まんを売ってしまいました」と公表しないこと(あるいは公表の要否をきちんと判断しなかったこと)について、大阪高裁は取締役、監査役11名に総額5億7000万円の損害賠償を命じました(平成20年には最高裁でも高裁判決が維持されています)。

当該ダスキン事件株主代表訴訟判決については、取締役の内部統制構築義務や危機に直面した取締役への経営判断原則の適用といった論点がありますが、平成13年当時の取締役会と同29年の取締役会では、裁判所の考え方も異なるでしょうし、またコンプライアンス経営に関する社会状況も異なることから、ダスキン事件判決の(今日の企業社会における)射程距離についてあらためて考え直す必要があるのではないかと思っております。

詳細はまた具体的な事例などを交えながら述べたいと思いますが、私なりにダスキン事件判決から考えることは、①内部統制は整備面よりも運用面に議論が移っていることを法的にどう考えるべきか、とりわけ有事行動への「信頼の原則」の適用をどう考えるか、②不祥事発覚時に社内調査や第三者調査が行われることが慣行となりつつあるが、当該調査結果について裁判所はどこまで依拠できるか、③企業としては、どのような場合に(過去の)不祥事を公表することが法的義務とされるのか、「公表基準」なるものを策定した場合には、当該基準に従った行動をとれば善管注意義務を尽くしたことになるのか、④監査役や社外取締役等の非業務執行役員は、たとえ結果として違法行為を阻止できなくても、どこまでの行動をとれば善管注意義務を尽くしたと評価されるのか、といったあたりでしょうか。

いずれもダスキン事件に関する事実にヒントが隠されていると思います。おいおい、最近の事例などをもとに論点への考え方をまとめてみることにします。

12月 11, 2017 ダスキン株主代表訴訟控訴事件 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 8日 (金)

拙著「実効的な内部通報制度」がアマソン(ビジネス法入門)で1位になりました。

2日続けての自分ネタで恐縮ですが、12月7日の昼過ぎから現在(8日午前1時)まで、拙著「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」がアマゾンの「ビジネス法入門」ランキングで1位になりました。皆様、どうもありがとうございます!皆様がご覧になる時刻にはすでに落ちていると思いますが、ともかく1時間毎に更新されるランキングで12時間ほど首位をキープできたのは素直にうれしいです。

これまでも1位になったことはありましたが、今回のようにジワジワと上昇して1位になるのは初めてです。良くも悪くも(?)、多くのビジネスパーソンの皆様に評価していただけたのかもしれません。ありがたいことに、経済雑誌でもご紹介いただけるようですが、企業不祥事がいろいろと報じられている現状と無縁ではないと思います。

本業と忘年会のために、ブログを書く時間がなかなかとれませんので、このようなご報告だけで本日は失礼いたします<(_ _)>

12月 8, 2017 本のご紹介 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2017年12月 7日 (木)

国家公務員倫理研修の講師を務めさせていただきました。

本業と講演でかなり忙しい時期でして、ブログの更新もなかなか進まない状況です。放送法の合憲性が争われた受信料訴訟に関する最高裁判決を含め、書きたいネタが山積しておりますので、またまとめてアップしたいと思います。

本日は人事院・国家公務員倫理審査会主催の研修(国家公務員倫理法に基づく研修)の講師として、200名以上の官僚の方々向けにお話をさせていただきました(霞が関プラザホール)。国会の会期中にもかかわらず、本当に多数の皆様にお越しいただき、ありがとうございました。このような機会は間違いなく一生に一度なので(笑)、私自身の弁護士としての経験をもとに、「公務員倫理はかくあるべし」という意見をはっきりと申し上げました。

終了後は裁判員制度の立ち上げにご尽力された池田審査会会長(元福岡高裁長官)や、立花委員(人事官)、前田委員(資生堂相談役)とも少しだけ意見交換をさせていただきましたが、さすがにこの場で前田委員に東芝の6000億円増資の件についてご質問する勇気はありませんでした(^^;;

あの「ノー○ンしゃぶしゃぶ事件」以降、国家公務員の方々の過剰接待問題があまり報じられなくなったのも、この審査会が「グレー案件」に積極的に関与するようになったから・・・ということのようで、私自身も企業のコンプライアンス経営支援に参考となる意見をいただき、とても勉強になりました。

12月 7, 2017 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 5日 (火)

経営陣の処分と任意の指名・報酬委員会の役割

12月6日はNHKの受信料請求事件の最高裁大法廷判決が出ますね。ビジネス法務に直接関係があるというわけではありませんが、放送法の合憲性に関する判断はとても興味深いところです。放送と通信の垣根がなくなりつつある現状について最高裁が言及するのかどうか、判決をじっくり読みたいですね。

さて本日はひさりぶりのガバナンス関連のお話です。最近は不祥事が発覚しますと、社内調査委員会や第三者委員会が事実調査をして、「このような不祥事を発生させたのは、ガバナンスが機能していなかった」と指摘されることが多いですね。そこで調査委員会報告の結果を受けて、代表取締役の降格(取締役へ)や3カ月間減俸30%といった社内処分が発表されますが、これって任意の指名委員会や報酬委員会を設置している会社ではどうしているのでしょうか?

今年7月の東証の調査では、東証1部上場会社の3割以上が任意の指名・報酬委員会を設置しているそうで、そのような設置会社の半数近くでは委員の過半数を独立社外取締役が占めているそうです。ただ委員会の開催は年1回程度の会社が多いようで「本当に委員会が機能しているのだろうか」との疑問も生じます。

ところで、会計不祥事を発生させてしまった東証1部の某企業(指名・報酬委員会設置済)では、社内調査委員会を設置して調査結果を公表したのですが、社長や他の経営陣の減給にあたり、指名・報酬委員会を開催すべきかどうか、役員間で議論されたそうです。社内には懲罰規程に基づく懲罰委員会があり、そこで審議すべきなのか、それとも降格や減給を含め、新たに設置した指名委員会、報酬委員会で審議すべきなのか、たしかに迷うところかもしれません。

もちろん任意の委員会を設置した理由は、後継者計画に従って次期社長を選任するため、報酬決定に対する取締役会の監督の実効性を高めるためというものであり、ガバナンス・コードの要請もそのような点にあることは間違いありません。しかし不祥事が発生した場合の社内処分も指名・報酬に関わる問題ですから、独立社外取締役が過半数を占める委員会にて審議する実益もありそうです。結局、その会社では、懲罰規程に基づく審議経過の客観性を指名・報酬委員会が事後的に担保する、といった形で指名・報酬委員会が関与したそうですが、本当にそれでよかったのかどうかはわかりません(実質的にはすでに決定されたことを追認したにすぎない、ということになりそうです)。

企業不祥事といっても「法令違反」が認められないケースもあること、社内処分は案件ごとに自浄作用の発揮の一環として行われるものであること、経営陣の処分については利益相反状況が認められることなどを考えますと、私は指名・報酬委員会が積極的に関与するほうがステイクホルダーへの説明がつきやすいようにも思うのですが、いかがでしょうか。こういったことも含めて(実施宣言をした上場会社では)コードの運用責任が果たされるべきと考えます。

12月 5, 2017 コーポレートガバナンス・コード | | コメント (2) | トラックバック (0)