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2017年12月18日 (月)

グループガバナンスの難しさを痛感する亀田製菓子会社会計不正事件

第2クールを迎えた経産省「コーポレートガバナンスシステム研究会(CGS研究会)」では、いままでエアーポケットだった(とされる)グループガバナンスを中心課題として審議されるそうです(12月8日の第2クール第1回提出資料参照)。日本の会社法は単体企業を基礎とした利害調整規範として規定されていますので、法律家が企業集団のガバナンスを議論することはなかなか難しいのが実態です。

12月13日(木)の日経朝刊(経済教室)では「子会社管理 成功の秘訣は?」と題して、経営学者でいらっしゃる若林直樹氏(京大教授)の論稿が掲載されていました。グループ経営の巧拙を、親会社のコストとベネフィットから分析する手法はとても説得力があり、親会社の経営陣に説明する際にはコーポレートファイナンスの見地からの解説のほうが納得感があるのではないかと思います。

さて、先週金曜日(12月14日)、亀田製菓さんの海外子会社の会計不正事件について、外部調査委員会の報告書が公表されました。子会社の経理部長が棚卸在庫を過大に計上して原価を下げ、過剰な利益を計上していたというもので、不正会計事案としてはどこにでもありそうな内容です。ただ、本報告書は親会社である亀田製菓さんが「なぜ早期に子会社不正を見抜けなかったのか」、親会社のグループガバナンスへの取り組みを詳細に分析しており、とても興味深いものになっています。「なぜ経理部長が自身の判断で不正に手を染めたのか」といった理由についても、逡巡の末に答えを出しているところは誠実です。報告書もとてもわかりやすい文章で整理されていますので、グループガバナンスに関心のある方にはお勧めの報告書です。

僭越ながら、私が本報告書を高く評価する点は、他の第三者委員会報告書ではあまり触れられていない「監査の問題点」を詳細に解説しているところです。親会社の内部監査、監査役監査、そして子会社の会計監査人監査の問題点について(法的責任を追及する意図ではない、と前書きされているものの)かなり詳細に追及しており、「もし監査が十分になされていれば、2014年の時点で不正を発見することができたのではないか」「しかし、子会社監査に費やしうる人的資源や物的資源を考えれば、やむをえない面もある」といったところ、理想ではなく現実論に立脚した評価がなされています。これは私の感想ですが、海外子会社の会計監査人と親会社の会計監査人との意思疎通がさらに密であれば、会計不正を早期に発見できたのではないかとも思えます(ただ、本報告書では、当該子会社の売上規模からすると、親会社会計監査人からみると重要子会社とは言えなかったとのこと)。

このたびの「グループガバナンスの難しさ」との関係でいえば、本報告書は親会社の海外子会社管理に関する「関連部署間の連携不足」を指摘しています(報告書66ページ参照)。海外事業部門が主たる管理をしているが、部門間の縦割り慣行によって問題点の共有がなされていなかった、という点は私の経験からみても「どこの会社でも指摘できる」発生要因だと思います。海外事業部門の力が強い組織だと、監査部門はどうしても「○○さんを通さないと質問できない」といった亀田製菓さんと同じ悩みを抱きます。コーポレートガバナンス・コード補充原則3-2②にもあるように、平時から有事を想定した取り組み(不正疑惑が発生した場合の社内ルールの策定等)を進めることが大切ではないかと思います。

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コメント

縦割りと部門横断のジレンマ(どうにもならない問題)については、直属上司への通報、取締役への通報で不利益を受けて痛感しています。
当該(元)取締役は部門横断的な経営を推奨し、「見ざる聞かざる言わざる動かざるはダメだ」と表向き吹聴していたのですが。。。
親会社社長(現会長)や社外取締役、社外監査役に通報した経緯は監督省ほか消費者庁にも相談しました。

経済産業調査会出版の「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」を、ようやく入手して拝読しています。
コーポレートガバナンス・コードや会社法の「公益通報者保護」関連部分を抜粋されていることは、とても有難いです(コードや法律を全部読まなくていいので。。。)
通報窓口として、取締役に「社外」の冠がついて、監査役に「社外」の冠がつかないのは気になっています(上場企業でも「社外」監査役という立場・役割設定が少ないからでしょうか?)。
序章の消費者庁アドバイザー(意見聴取(ヒアリング)開催年度の)就任時期(平成26年じゃないかな?)、「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」設置時期に疑念(笑)を感じて、経済産業調査会にメール送信するとともに、27日の研修会申し込みも完了しました。
調査会HPを拝見して、書籍常設店を先に知っていれば入手に苦労しなかったのに。。。と少々後悔しました。

投稿: 試行錯誤者 | 2017年12月18日 (月) 18時07分

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