« 不祥事防止、発見に向けた創業者(創業家)の役割 | トップページ | 企業法務2018年の展望(会社法務A2Z) »

2017年12月25日 (月)

来年こそ高まるか-公益通報者保護法の改正に向けた機運

12月24日の日経朝刊におきまして、ひさしぶりに公益通報者保護法の改正に関する記事が掲載されました。内閣府の公益通報者保護制度の実効性向上に向けたプログラム(工程表)では、来年法改正の予定とされていますが、消費者庁としてはやはり2019年を目標にしているようです。このたびの法改正は企業や監督官庁にも大きな影響を及ぼすはずなので、経済団体や関係省庁との折衝が続くものと思われます。

ただ、私は⑴ガバナンス改革が進む中で、ガバナンス構築の目的として「CSR経営の推進への配慮」ということが語られるようになってきたこと、⑵最近の一連の無資格検査事例、品質検査データ改ざん事例においては内部通報制度が機能していなかっために内部告発やSNSへの書き込みが不祥事発覚に寄与したこと、⑶リニア工事不正受注事例において、リニエンシー制度が機能し、経営者にとって他社よりも早く正確な情報収集が重要であることが改めて認識されるに至ったこと等から、公益通報者保護法の改正への機運は経済団体でも高まるものと予想しています。

とくに最近は、グループ企業における不正情報が親会社に届かないことで、親会社が致命的な信用低下を招く事案が目立ちます。これだけ戦略的なM&Aが増えていますので、いくらグループ・ガバナンス、企業集団内部統制に配慮したとしても、かならず不祥事は発生します。だからこそ、発生した不祥事をどれだけ早く親会社が察知するか、そこがグループ全体の企業価値向上のためには不可欠の施策であり、内部通報制度の充実や公益通報者保護法の法改正への対応に関心を向けるべきです。

日経記事では、公益通報できる「通報者の範囲の拡大」や行政通報(内部告発)に関する消費者庁窓口の一元化について紹介されていますが、実際には法改正が予定されている項目はたくさんあります。また、記事には掲載されていませんが、企業が内部通報制度を適切に運用することを促すためのインセンティブ作り(認証制度、表彰制度)も進められています。2018年は、法改正に向けたワーキング・グループ等の活動がさらに活発になると予想されますが、どうか今後の審議内容(公益通報者保護制度の実効性を高めるためのシステム作り)について、多くの方々に関心をもっていただければと願っています。

|

« 不祥事防止、発見に向けた創業者(創業家)の役割 | トップページ | 企業法務2018年の展望(会社法務A2Z) »

コメント

内閣府消費者委員会を傍聴・拝聴していますと、消費者庁消費者政策課「消費者基本計画工程表」に公益通報者保護推進が書かれていたり、消費者庁消費者調査課による「消費者白書」説明資料に公益通報者保護推進が記されていたりします。
また消費者調査課が推進している「消費者志向経営(山口先生が示されたCSR経営と同義と思いますが)自主宣言企業」の中に、私が社長宛てに通報している企業が入っていたりすると、認証「制度」や表彰「制度」の「精度」を高める(というより真っ当な、信ぴょう性のある制度にしてもらいたい)という思いが強くなり、消費者庁に【一元的な行政通報窓口】を設ける意義が極めて大きいと考えざるをえません。
「消費者基本計画工程表の検討会」が本年10月30日より消費者庁にて開始され、「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」検討委員の拝師先生も検討委員となっています。
上記第一回検討会10月30日は傍聴申請をしていたのですが、三井住友銀行東館SMBCホールでの「内部通報拡大シンポジウム」に、もろにかぶってしまったので、消費者庁消費者政策課殿にお詫びをして山口先生、奥山編集員の基調講演を拝聴しました。
内閣府特命担当大臣に「公益通報者保護法改正要望書」を送付したいという申し出には議員会館事務所の方に御承諾を得たので鋭意作成中ですが、経団連・経済同友会などの経済団体とも情報共有・連携し、報告・連絡・相談を、一歩一歩進めたいと思います。
レポートラインの健全化とともに、「絵に描いた餅」「仏作って魂入れず」が死語になってくれることを願います。

「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」
こういう読み易い企業法務の本がロングセラーになってほしいと思いますし、高巖消費者委員会委員長の「コンプライアンスの知識」のように増補改訂版が続々と発行(中味は徐々に発酵・醸成されてゆくのでしょうが)されることを望みます。
「内部通報制度の運用と実効性の向上」「公益通報者保護制度の実効性の向上」が進めば、初版の内容が古くなり増補改訂版への期待が高まります。
一年でも早く改訂版が出るような「世論」の高まりにも期待しています。

投稿: 試行錯誤者 | 2017年12月25日 (月) 20時58分

試行錯誤者さん、今年一年いろいろな情報をいただきましてありがとうございました。このたびも情報ありがとうございます。そういえば消費者庁の窓口一元化については拙著では触れていませんでした。おかげさまで拙著の売れ行きは好調のようです。来年も法改正に向けたプロセス等になんらかの形で関与できればと思っております。

投稿: toshi | 2017年12月29日 (金) 20時13分

1月17日に本年最初の内閣府消費者委員会本会議(第265回)を傍聴したところ、事前に詳細が知らされていない(その他の)議事として「公益通報者保護法」に関することが議論されたのでビックリ!しました。
1月15日付けで内閣総理大臣による内閣府消費者委員会委員長への「公益通報者保護法(平成16年法律第122号)の検討」の諮問があったことが明かされ、「公益通報者保護専門調査会」再開および「設置・運営規定」改正が決定しました。
昨年12月20日の消費者委員会打ち合わせで消費者庁より「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討」について説明があり、意見交換を行ったことも資料開示されました。
その後は1月18日「公益通報者保護専門調査会」委員、座長が決定し、1月26日「第9回公益通報者保護専門調査会(2011年の第8回で中断していたとのこと)」開催と怒涛の展開で、昨日26日は70席以上はあろうかと見える傍聴席が満杯でした。傍聴席には少なくとも3名の消費者庁「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」検討委員が着席し、私は御一方の隣席で集中して拝聴しました。
「法改正にとどまらず、【究極の目的】は制度が上手く機能すること、より良い仕組みにすること」との調査会委員の総意は心に響いています。
2月2日に徳島県庁内で開催される内閣府消費者委員会「第2回消費者行政新未来創造プロジェクト検証専門調査会」でも、「公益通報受付窓口(市区町村)及び内部通報制度(事業者)の整備促進」に関するヒアリングが議題で、【未来に向けた創造的な調査会】で検証されることに大いなる意義、いわゆる大義を感じます。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年1月27日 (土) 19時57分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 来年こそ高まるか-公益通報者保護法の改正に向けた機運:

« 不祥事防止、発見に向けた創業者(創業家)の役割 | トップページ | 企業法務2018年の展望(会社法務A2Z) »