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2017年12月29日 (金)

年末年始に読みたい-企業不祥事調査報告書のおススメはズバリこれ!

日産自動車、亀田製菓、東レ、ミクシィ、三菱マテリアルと、連日のように企業不祥事に関する調査報告書が開示されています。また、神戸製鋼の第三者委員による調査は2月まで続行されるようで、年末にかけて多くの調査委員会報告書がマスコミの話題になりました。12月28日には、某社(証券コード2388)において、不適切会計事案に関する第三者委員会報告書をもとに、会計監査人が「限定付適正意見」を表明する事態に発展しています(限定付適正意見は今年3件目でしょうか、監査法人も限定付適正意見を表明することに躊躇がなくなるかもしれませんね)。

そのような中で、あまりマスコミでは取り上げられていませんが、たいへん秀逸であり、皆様にご一読をお勧めしたいのが12月27日にリリースされたJA全農神戸食肉偽装事件に関する特別調査委員会報告書です。JA全農の常勤監事さん等が委員に含まれているので日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会とはいえません。しかし「中立公正な立場でJA全農を取り巻くステイクホルダーへの説明責任を果たす」といった委員の思いが報告書の読み手にも伝わってきます。ちなみに食肉偽装事件の概要は、こちらのニュースをご参照ください。

なぜ「おススメ」かといいますと、お読みいただくとおわかりのとおり、認定事実、原因分析、再発防止に向けた提言等すべてとてもわかりやすい文章で「一般の方に向けて」書かれています。一読すれば、ほぼ事件の全容が頭に入ります。とくに委員の質問とヒアリング対象者の回答、全社アンケートへの社員の回答例がとても効果的に使われていて、JA全農におけるコンプライアンス経営の課題が明確に浮かび上がってきます(この手法は当該委員長の好みの問題かもしれませんが、他社が題材としてコンプライアンス経営を学ぶうえではとても参考になります)。

JA全農神戸直営レストランにおいて、料理長が「神戸牛フィレ」と偽って「但馬牛フィレ」を長年使っていた(偽装していた)わけですが、発覚はJA全農への第三者(と思われる)による情報提供だったそうで、残念ながら内部通報は確認されませんでした。JA全農神戸では、実はそれなりに内部通報制度は機能していたようです。ではなぜ本件では機能しなかったのか、そこにスコープをあてて、料理長の不正を知りつつ何も言えなかった関係者の証言を詳細に紹介しています(この手法はたしか日本交通技術社の海外贈賄事件の報告書やゼンショー労働環境改善に関する報告書などでもみられたような・・・)内部通報制度を機能させるための提言についても傾聴に値する内容であり参考にさせていただこうかと思っております。

料理長がなぜ偽装に手を染めたのか、その動機についても、また不正を正当化する理由についてもリアルです(このリアル感は、他社にも参考になると思います)。さらに「監査制度がなぜ機能しなかったのか」という点も重要なポイントです。報告書を読むかぎり、少しの努力で料理長の不正は見抜くことができたように感じます。職人に対する遠慮があることや、監査人に職業的懐疑心が欠けていること等から、簡単に見抜くことができそうな不正でも(この言い方は多分に「後出しジャンケン」なので、あまり好みませんが)見抜くのが困難であることがわかります。JA全農神戸が本件偽装事件を起こした最大の原因は、実はこの監査の脆弱性にあったのではないか、と委員による指摘がなされていますが、その意見の前提となる「いかに容易に見抜けたか」という点の説明が実に巧い(ここも参考にさせていただきます)。

委員の方も、報告書の最後に「この事件を機会に、全農でも本報告書を教材として使っていただきたい」と書かれていますが、他社でも十分に教材として活用できるものと思います。しかし報告書を読んでいて、こんなにお腹がすいてきたりヨダレが落ちそうになるのは初めてでした(^^;。神戸牛にしても但馬牛にしても、関西人にとってはまさに「垂涎のブランド」なのです。

※※※

今年のエントリーはこれでおしまいです。今年も拙ブログを御愛読いただき、ありがとうございました。本日も、関与している事件で「ギョッ!」とすることが発生して、到底「仕事納め」にはなりませんでしたが、とりあえず(強制終了で?)来年に持ち越しです。本当にジェットコースターのような一年でしたが、ブログを書く時間が「ひとときの息抜き」となりました。来年も健康に留意しつつフル回転で本業に没頭いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。では、皆様良いお年をお迎えください<m(__)m>

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