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2018年1月 5日 (金)

社外取締役の活躍が期待されるトヨタの相談役廃止審査制度

今朝(1月4日)の毎日新聞(東京版)7面には「主要121社アンケート」の集計結果が掲載されていまして、「相談役・顧問制度を今後廃止する」と回答した企業はわずか2%しかありませんでした。そもそも制度が存在しない企業もあるかもしれませんが、それなりに相談役・顧問の存在が企業価値向上に資するものと(表向きには?)判断している企業が圧倒的に多いようです。東証に提出するコーポレートガバナンス報告書には、今月以降新様式による「相談役・顧問に関する事項」が記されることになりますが、どのような開示実務が定着するのか楽しみですね。

ところでトヨタ自動車さんは新たに「相談役審査制度」を今年から導入するそうです。現在同社には50名ほどの相談役がいらっしゃるそうですが、同社の社外取締役の方々が、相談役任期を更新するかどうかを審査したうえで決定するシステムに変更するとのこと(中日新聞ニュースはこちらです)。これは私が昨年の週刊エコノミスト(2017年9月26日号)や雑誌「ビジネス法務」(2017年12月号)の論稿で提案させていただいていたシステムに近いものであり、私も推奨したいと思います。

ただ、審査の主体となる「役員人事案策定会議」ですが、社長、副社長らが委員の半数を占める(社外取締役は半数)中で、果たして社外役員の方々が「忖度抜きに」判断できるかどうかは微妙なところではないでしょうか。本当に社外取締役が機関投資家の意見を代弁する立場にあるならば、(社外取締役の職務としては厳しいものではありますが)ぜひ社外取締役が中心になって審査制度を運用していただきたいと思います。できれば「そもそも当社に相談役・顧問制度は必要なのかどうか」という点まで審査対象にしていただければと。

さらに、相談役制度存廃への社外役員の関与において懸念事項とされるのは、「出身企業の相談役・顧問をやりながら、他社の社外取締役を務めている経営者OBが多い」という現実です。ガバナンス改革が叫ばれるようになった3~4年ほど前から、「社外取締役には経営者OBが最適である」というのが通説となり、大きな上場会社では経営者OBの社外取締役さんが増えています。したがって当然のことながら、出身企業の相談役・顧問を続けながら他社の社外役員(社外取締役、社外監査役)を務めるケースも増えているようです。そのような方々が、ご自身の身分をさておいて「相談役や顧問として残る必要なし」と公正な立場で審査できるかどうか不安があります(トヨタさんの場合、どうなのかは存じ上げませんので、あくまでも一般論ですが)。

最近の議論として、「社外取締役の受け手を増やすために、相談役・顧問制度を廃止せよ」とか「経営者OBは外に出て日本企業の発展に寄与せよ」とのフレーズで、「社外取締役?OR相談役?」を迫りますが、そもそも相談役を務めながら社外取締役に就任しているケースが多いのですから、そのような議論は少し的外れではないかと考えています。

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コメント

山口先生あけましておめでとうございます。
私が相談している『独立』社外取締役5名のうち御二方は相談役を務めながら社外取締役に就任しています。
文字通り「相談(実態は、ほぼ通報なのですが)」させていただいてます。
あとの御三方は会長・社長職であり、現状の上場企業では社外取締役の構成も経営者またはOBを取り混ぜて、各社さまざまということです。
ガバナンス改革が進む中で、相談役・顧問制度や社外役員の独立性の意図するところが明確化・統一化されてゆく一年になってほしいです。

ところで、企業法務とは異なるかもしれませんが、昨日1月6日より報道されている大阪大学の入試ミスについては、外部からの指摘と阪大の対応経緯がクローズアップされて、問題を指摘された側の「都合の悪い情報」の共有の仕方にも注目が集まっています。卒業生である山口先生もビックリされたのでは?
こういう場面でこそ、上場企業の場合ならば、コーポレートガバナンス・コード原則2-5と補充原則2-5を遵守して、取締役会や社外取締役・監査役による通報窓口が機能することを期待して、社外取締役に実態「相談」を続けてまいります。
昨年あたりから、問題点(ミスも含めた)の指摘経緯・不正の通報経緯の解明に対する世論の関心の高まりを感じています。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年1月 7日 (日) 22時32分

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