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2018年1月12日 (金)

子会社不正について「親会社による公表は不要」なる選択肢

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週刊エコノミストの最新号(1月16日号)に、拙著「企業価値を向上させる実効的な内部通報制度」の書評を掲載いただきました。おかげさまで、アマゾンのランキングもそこそこ復活してまいりました(どうもありがとうございます)。以下本題です。

1月11日の毎日新聞1面および2面では、ガラス最大手の旭硝子さんの子会社(AGCテクノグラス社)が、2015年以降、実験や臨床検査に使われる「遠沈管」の一部について、必要な検査項目の一つを実施していない製品を大学や研究機関に納入し続けていたことが報じられています(たとえば毎日新聞ニュースはこちらです)。とりわけ同紙2面記事では、子会社不祥事について親会社が会見をせず、また子会社HPのみで不祥事を公表している親会社(旭硝子社)の情報開示姿勢に疑問を投げかけています。

会見を開くかどうかは、不祥事の軽重によって会社側の裁量に委ねられるところが大きいように思いますが、たしかにグループ会社のHPのみ公表しながら親会社では一切公表しないという「公表判断」については少し考えてみる必要があると思います(なお、親会社である旭硝子さんは、今回のマスコミ報道を受けて1月10日に親会社HPで簡略に不適切行為の内容を公表しました)。

親会社側は、経営幹部の方が「(品質検査を実施しなかった製品については)消費者が使う製品でなく、不正な保証書を出した納入先もわかっていたため、問題ないと判断した」と釈明しておられるようです。ただ、子会社の公表文章を読みますと、品質検査の未実施が2015年2月から開始されていたとのことで、約3年間も続いていたことがわかります。品質検査書の偽装が特定の社員によってなされていたとしても、ほかの社員も「見て見ぬふりをしていたのではないか」つまり組織ぐるみのルール違反ではないか、との疑問も湧きます。また、取引先への製品回収等に関する呼びかけがなされていますので、子会社HPのみでの広報で本当に情報収集の姿勢に問題がないのか、これも疑問が生じるところです。さらに、親会社の方が説明されているような理由であれば、子会社でも公表する必要はなかったのではないか、と思います。わざわざ子会社だけで公表した、というのは、(少なくとも文面を読んだかぎりでは)内部通報者に外部へ情報提供をさせないための方策に過ぎないのではないか、とも疑われそうです。

他社事例では、公表しない不祥事は一切しない、公表する場合には親会社と子会社双方のHPで公表する、といった取扱いケースが多いのではないでしょうか。「不正が重要とは判断しなかったので一切公表しなかった」といった理由は明確ですが、子会社では重要だが、親会社では重要とは思わなかった、という理由は果たして世間的に理解されるのかどうか。今後、他社でも同様の公表姿勢が選択肢のひとつになるかもしれませんので、少し考えてみる必要がありますね。

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コメント

1月11日の毎日新聞は1、2面に旭硝子子会社の件、5面に【社説:経団連次期会長に中西氏】と【河野太郎外相(消費者相時代に山王パークタワーで「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」にテレビ会議で参加し、終了後に姿を現されました!)】の記事が載っていたので手元に保管しておきました。
旭硝子子会社の案件は、親子関係のグループガバナンスを考えさせる内容から、3月9日に開催される東京弁護士三会主催のシンポジウム「企業コンプライアンスに活かす!今こそ育てる内部通報制度~国内外グループ会社の一元窓口処理も射程として~」を想起しました。
シンポジウム第一部の講演「民間事業者向けガイドラインの骨子」では山口先生がよく御存じの消費者庁消費者制度課企画官殿(民間事業者ガイドラインの「第一人者」でしょう)が御登壇されます。福岡、札幌でも説明されるのでしょうか?
グループ会社一元窓口、消費者庁の行政通報一元窓口検討に合わせて、経団連には「会員企業の一元通報窓口」処理を御検討いただきたく、榊原会長と次期会長(5月に就任される)中西宏明様にも要請したいと思います。

毎日新聞出版、週刊エコノミストでは「必読書」と評される「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」です。「第一人者」としての御活躍をお願いします。
消費者庁検討会、先生の著作とも長いタイトルが実効・向上(口上)の「決め手」となっています。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年1月14日 (日) 19時50分

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