社外取締役は「見ざる聞かざる言わざる」が得策?
本日(1月16日)の日経新聞朝刊に「社外取締役の義務化」に関する会社法改正関連の記事が掲載されていました。大会社に社外取締役の選任を義務付けた場合、もし社外取締役が辞任して「ひとりも社外取締役がいない状態」になったら取締役会は開けるのだろうか・・・といった疑問もあり、果たして会社法で義務化する必要はあるのかな・・・とも思います。
ところで判例時報の最新号(2351号)に、AIJ投資顧問年金消失事件に関連して、ITM証券の社外取締役、常勤監査役が同社破産管財人から提訴されていた裁判の判決が掲載されています(東京地裁平成28年7月14日)。結論からすれば、いずれも請求は棄却(つまり社外取締役さん方の勝訴)となっていますが、要は「年金基金等に金融商品を不正に販売するにあたり、社内取締役の違法な業務執行を行っていることを疑わせる事情が存在し、かつ、社外取締役らがその事情を知り得ることが(法的責任を認めるにあたり)必要」としています。
判決では、その「違法な業務執行を行っていることを疑わせる事情」の存否、「知り得る状況」の存否について詳細に検討されています。ただ、上記のような基準で検討するとなりますと、そもそも社外取締役って、見ざる聞かざる言わざるが一番法的責任を免れるには得策ではないか、と思えます。熱心に監査活動を行って社長の不正を知ったにもかかわらず、これを止めることができなかった監査役さんのほうが、海外往査といいながら、愛人と海外バカンスを楽しんでいる監査役よりも厳しく責任を追及されるって、どうなんでしょうかね?(笑)「ガバナンス改革」のもと、社外取締役の積極的な経営参画、監視機能の発揮が求められていますが、「一生懸命社外役員として頑張れば頑張るほど法的責任が認められやすくなる」というのはいかがなものでしょうか。
社外取締役や監査役の監視義務、監査義務を熱心に果たしたほうが馬鹿を見ない結論に至るためには、①違法性を認識しうる状況をなぜ構築できなかったのか、②業務執行の違法性を認識しうる状況が存在したにもかかわらず、なぜ当該社外取締役は認識しえなかったのか、といったところまで遡って、「信頼の原則」を適用するほうが妥当ではないでしょうか。
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