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2018年1月11日 (木)

特設注意市場銘柄指定制度におけるプリンシプル・ベースの運用

昨日(1月9日)の日経朝刊(私見卓見)に、日本取引所自主規制法人理事長による「東芝問題と『建設的曖昧さ』」なる小稿が掲載されました。ご承知のとおり、昨年10月、取引所自主規制法人は、特設注意市場銘柄に指定されていた東芝社について、指定解除と上場維持を決定しました。この自主規制法人の措置については、市場関係者の方々から「判断基準があいまいで投資家を混乱させた」と批判されており、上記論稿は、これに応える内容となっています。

私にとって、「特注銘柄指定制度の運用はプリンシプルベースといってよいのかどうか」よくわからなかったところでしたので、理事長ご自身の見解とはいえ、「やはりプリンシプル・ベースに基づく運用がなされるのだ」と認識できたことは「一歩前進」でした。この理事長の見解についてはご異論・ご批判もあるかとは思いますが、金融庁長官を務めておられた頃の「金融規制の質的向上:ルール準拠とプリンシプル準拠」(平成19年当時)で述べておられるご意見と、ほとんど変わっていないと思います。「建設的な曖昧さ」という概念は、銀行監督の世界では標準的な考え方とのことですが、この概念を一般の上場会社への(取引所による)監督にも適用する、ということの意味が大きいように思います。

たしか2010年に理事長(当時:金融庁長官)が執筆された「金融行政の座標軸」の中で、上場会社に適用される内部統制報告制度には、日本でもめずらしいプリンシプル・ベースでの法運用を前提とした規制手法を採用した、と書かれていました。特注銘柄制度においても、内部管理体制の構築状況を判断基準とする以上は、プリンシプル・ベースに準拠した運用がなされているとしても不思議ではありません。ただ、私見卓見では「ルールベースとプリンシプルベースの微妙なバランス」のうえで運用すると述べられています。特注銘柄制度が制裁ではないとしても、上場会社の事業に重大な影響を及ぼす制度である以上、(どのような場合に指定され、また上場廃止になるのか、もしくは指定を解除されるのか、といった)予見可能性についても一定の配慮がなされていると思われます。

では、予見可能性にも配慮した運用ということであれば、東芝社が指定解除となった要因はどこにあったのでしょうか。この点は、いままであまり議論されていないように思います。ひょっとすると理事長個人の見解として、文藝春秋2017年12月号の手記や週刊東洋経済のインタビューで述べておられた意見が参考になるのかもしれません。ただ、私の推測としては、①米国子会社WH社における内部統制上の不備(経営幹部への圧力をかけたとされる)に関する通報内容を速やかに開示した姿勢、②債務超過が明らかとなった後の解消に向けた一連の経営判断が、社外役員を中心とした取締役会が主導したこと、そして③現社長が、東芝グループに向けて「現場の不都合な事実はすみやかに情報提供してくれ」と何度もメッセージを繰り返してきた姿勢、といったところではないでしょうか。

上記はあくまでも私の推測ですが、こういったプリンシプルベースの規制手法を適用するのであれば、判断主体である取引所の考え方を、事後的にも開示することが「予見可能性」との折り合いからみても妥当な気がします。なぜ東芝についてはこの時期に指定解除という決定に至ったのか、たしか報道では反対意見もあったように記憶しておりますが、公式にも示していただければある程度は予見可能性にも配慮していると評価されるのでは・・・と思う次第です。

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