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2018年2月 6日 (火)

社外取締役を数社兼務するのであれば工夫(覚悟?)が必要である

昨日(2月4日)の朝日新聞一面に、「社外取締役191人、4社以上で兼務 経営監視に懸念も」と題するガバナンス関連の記事が掲載されていました(朝日が一面でこのような記事を掲載するのは珍しいですね。ちなみにWEB版はこちらです)。

朝日新聞と東京商工リサーチが共同で株主総会招集通知などから集計されたようです。1900社ほどの上場会社から確認できた社外取締役4482人(2017年3月末時点)のうち、兼務の状況(非上場や政府系なども含む)をみると、7割の3158人は兼務していなかった。2社兼務は821人(18%)、3社は312人(7%)とのこと。兼務には社外監査役も含むそうなので、私も2社兼務ということになります。

4~5社兼務というのは時間的に相当厳しいように思いますし、機関投資家や議決権行使助言会社から批判されるのもわかります。いっぽうで、ガバナンス改革の中で求められているような社外取締役がそんなにいらっしゃるようにも思えず、素晴らしい方にオファーが集中してしまうこともやむをえないように思います。今後は「取締役会における社外役員の比率」はさらに高いものが要求されますので、ますます社外取締役が増えることが見込まれ、そうなりますと兼務比率もさらに高くなるでしょう。

そこで、もし3~4社、社外取締役を兼任する方が増えるとなりますと、機関投資家の皆様の要求を満たすための工夫が必要になります。たとえば「社外取締役は積極的に情報収集に努めるべきである」と言われますが、むしろ重要情報が社外取締役に集まるシステムを先に作ってしまうことです(これは実務では社外取締役のほうから積極的にシステム構築を要求しなければ動かないと思います)。毎日のように会社情報が社外取締役のところへ届くわけですから、ビジネスモデルを理解することにも、また社内の「異常」を感知するためにも役に立つはずです。

また、社外取締役間や社外監査役との連携として(監査役会をモデルとして)役割分担を決めることです。社外役員に「攻め」も「守り」もありません。弁護士だろうが元経営者だろうが元官僚だろうが、重要な意思決定に参画する以上は全ての案件に関与しなければなりません。とりわけ多くの会社で複数の社外取締役が選任される時代になりましたので、複数の社外取締役(社外監査役)がどのようにダイバーシティを発揮するのか、役割分担が(暗黙のうちにでも)決まっていけば、効率的に知恵を発揮することができるのではないでしょうか。

そして最後に、これは社外取締役側の問題ですが、有事になれば本業よりも社外役員としての仕事を優先させる覚悟が必要と思います。数社兼務していて、一番コワイのが会社の有事です。経営権紛争、企業不祥事、大規模なM&Aなど、社外役員の役割に期待がかかる有事となれば平時の10倍くらいの時間を割かなければ「善管注意義務違反」に問われかねません。以前、このブログでも企業不祥事が発生するや否や「いそがしいから」という理由で辞任してしまった社外役員さんの話をしましたが、それもマズイような気がいたします。「工夫」とは言えませんが、兼務をする以上は、本業や他の会社に迷惑をかけてでも、有事から逃げない覚悟だけは持っている必要はありますね。

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