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2018年2月20日 (火)

取締役監査等委員→社外監査役の「横滑り」はあり?

最近驚いたガバナンス関連の話題といえば某大手食品会社の社長さんがセクハラ事件で辞任した件と、本日の日経WEBが報じる積水ハウスさんの「会長解任騒動」の件です。大手食品会社さんのほうは、コンプライアンス経営にとても厳しい意見をお持ちの二人の社外取締役の方々がどのようなご意見を述べられたのか、興味があります。そして積水ハウスさんについては、当ブログでも地面師事件は(しつこいくらい?)語りましたが、この件を契機としてこのような問題が勃発していたとは想像もしておりませんでした。

私は、積水さんのライバル会社の社外取締役という身分なので、大人げないコメントは一切しないつもりですが、積水ハウスさんといえば、日本を代表する名門企業であり、コーポレートガバナンス構築への取組みも、素晴らしいのは同社のガバナンス・コードへの対応方針を読んでも明らかです。ただ、そうであるならば、人事・報酬諮問委員会が、こういった有事にどのように対応されたのか、ぜひとも知りたい。こういったときにこそ、前面に出て株主から負託された役割を果たすのが任意の指名・報酬委員会の(期待されている)役割ではないでしょうか。また、そのためのガバナンス・コードへのコンプライではないかと。

ところで「ガバナンス・コードへの対応」ということで少し話を変えますが、ひさびさに監査等委員会設置会社に関連するお話をしたいと思います。この1月末で、すでに監査等委員設置会社に移行した、もしくは移行を表明した上場会社は、835社に上っているとのこと(週刊経営財務の調査より)。しかし現時点において、この数字は正確ではないかもしれません。なぜならすでに複数の上場会社が「逆移行」もしくは「逆移行を表明」しているからです。

「監査等委員ではない社外取締役を複数選任せよ」といった議決権行使助言会社の推奨基準、「監査等委員会など、社長の選任・解任や個別取締役の報酬決定に何の機能も果たしていないのではないか」と言って憚らないモノ言う機関投資家の抬頭・・・ということもあり、監査等委員会設置会社に移行したものの、ふたたび監査役会設置会社に移行した、もしくは移行表明した上場会社が複数社現れることになりました。私の事務所でも、あいかわらず「監査等委員会設置会社に移行したけど、やっぱり監査役会設置会社のほうがガバナンスが機能する」ということで「逆移行」の相談を受けております(皮肉ではなく本当に、本来、監査等委員会設置会社というガバナンス形態は、「指名委員会等設置会社への移行過程」だと説明されていたと思うのですが)。

ところで取締役→常勤監査役という「横滑り」については、「自己監査」という趣旨においていろいろと問題が指摘されているものの、法的には問題はないと解されています。しかしながら、取締役監査等委員にいったん就任した方が、その後「監査役会設置会社への移行」として、ふたたび「社外監査役」に戻るとなると、うーーーん、これはどうなんでしょうか。会社法2条16号の定める「社外監査役」の要件からみると、就任前10年間に取締役だった方は会社法上の(つまり監査役会の半数以上を占めるべき)社外監査役には就任できないように読めるのですが・・・。すいません、私が「監査等委員である取締役」については、この会社法2条の例外が認められる・・・といった条文を見落としていたらご指摘いただきたいのですが。私はこのあたりが「逆移行」のネックになっていると思っているもので。。。

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