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2018年2月23日 (金)

品質検査データ偽装事件について最近思うこと

日本取引所「上場会社における企業不祥事予防のプリンシプル(案)」が公表されましたので、いろいろと持論を書こうと思ったのですが、あまり時間がありませんので、品質検査データ偽装事件について思うところをふたつほど、備忘録も兼ねて記しておきます。

ひとつは品質管理について、製薬業界の「信頼性保証本部」のような組織は活用できないだろうか、という点です。製薬業界では薬機法に基づく「法令遵守」のレベルの話かもしれませんが、品質管理・保証は「安全」のためのもの、そして製品の信頼性保証は「安心」のためのものということで、営業や研究開発、製造各部門において「品質管理・品質保証」的な役割を果たす責任者が存在するわけですが、そういった手法は「モノづくりメーカー」さんにも参考になるところは多いのではないでしょうか。

そしてもうひとつは(これは昨年から申し上げているところですが)品質偽装の相手方企業には何ら問題はなかったのか、という点です。自社工程が遅れることのないように、偽装を認識しつつそのまま受領しているケース、というのは言い過ぎかもしれません。ただ、品質偽装商品の取引先企業について、「お詫び文書」が送付されてから、データ改ざんの事実を取引先経営陣が認識するまでのタイムラグについて、一度きちんと調べてみるとよいと思います。なにゆえか、タイムラグが発生している企業を何社か確認しています。不祥事予防という点からみると、このような問題に光を当てて、そのタイムラグの原因をきちんと探ることが大切ではないでしょうか。

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コメント

消費者との関わりがあるメーカーでは、それなりに意識が高くなってきているので、安全安心を担保する組織的な手当てはそれなりに有効かと思います。
しかし、消費者関連法にさらされていない、いわゆるBtoBの業界は意識が非常に低く、いくら組織をつくっても効果は限定的かと思います。食品偽装事件等を他人事のようにみてきたメーカーが、ようやく世間の批判にさらされるようになってきて、これからは先生のおっしゃるような先行している業界の成功例を応用するケースが出てくるかもしれませんね。

品質偽装の相手方企業には何ら問題はなかったのか、という点はすごく大事ですね。最近の品質偽装事件は、様々な日本的な慣行に起因するものであり、メーカを一方的に責めるべきではないと思います。
例えば、到底守ることができないような契約条項に実質的な交渉なしに合意してしまう。合意というか、もはや事務処理のような世界がありますよね。コストと乖離した要求仕様や品質保証条件も同様です。交渉がないまま前例を踏襲するのが当たり前のようになっています。だから、ある程度実態とギャップがあるのはみんなわかっていることなんです。無意識の信頼関係が存在してきたと言ってもよいです。だから、メーカーを一方的に叩くのはおかしいですね。信頼関係に寄りかかって、やってはいけないレベルまでやっちゃってるケースがあり、そこが叩かれるべきポイントです。
ただ不思議なもので、上記のような世界はあくまで日本企業同士の話であって、外国企業との取引では必ず実質的な交渉があって、リアルな契約がきちんと交わされるのが面白いです。互いに信頼が無い事案においてこそ、原理原則的な仕事の在り方が現われる。
国内取引でもそのようになれば、法務部門の契約審査も本来の役割に目覚めて活性化するでしょうし、ものづくりメーカーが「叩かれるべくして叩かれる」世の中になっていけるものと思います。しかし、日本企業同士の無意識の信頼関係もなかなか捨てがたいところ。むずかしいですね。

投稿: JFK | 2018年2月24日 (土) 01時43分

JFKさん、おひさしぶりです。また、丁寧なコメントありがとうございます。先週、あるところで経済団体の方から、JFKさんと同様の意見をいただきました。
結局、組織の中だけでなく、サプライチェーン全体で改善していかなければ問題は解決しない、というものでした。ただ、私としては、そうはいっても組織の中の問題を解決することはサプライチェーンにも影響を及ぼすものと考えています。

投稿: toshi | 2018年3月 9日 (金) 21時04分

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