社長の「重過失」責任を問うことはかなり難しい-ユッケ食中毒事件東京地裁判決
本日(3月14日)の朝日新聞(東京版)朝刊に、2011年に発生した(5人が亡くなった)富山のユッケ食中毒損害賠償請求訴訟の地裁判断(東京地裁)が報じられていました。被告は会社、社長、そして店長となっています。会社は賠償責任を認められましたが(もともと争わず?)、争っていた社長さんには「重過失」が認められず、賠償請求は棄却されたそうです。12年前のシンドラーエレベータの死亡事故に関する高裁判決では、本日、当時の社長さんに逆転無罪の判決が出たそうですが(ただし主として事実認定の問題)、いずれの判決でもご遺族の方々にとっては無念な結果となりました。
上記朝日の記事によりますと、当時、生食の提供が禁じられていたわけではなく、また肉の表面を削り取る国の衛生基準が周知されていたわけではない、との理由で重過失は認められなかったそうです。社内の内部統制として、国の基準に沿うように徹底していなくても、社長に重過失(著しい注意義務違反)があったとは言えない、という結論です。事実関係や法律上の主張等を正確に確認したいので判決全文を読んでみたいです。
私は当時、こちらのエントリー(ユッケ食中毒事件に伴う規制強化とコンプライアンス上の苦悩)等にて、いくら食肉に関する衛生基準が厳格化されても、規制の実効性は乏しいのではないか、と疑問を呈しておりましたが、なるほど重過失の有無を問うような場面では、社長さんの民事責任を追及しやすくなる、という意味で実効性はあるようにも思えます。ただ、日本システム技術最高裁判決では、社長さんの内部統制構築義務違反について重過失は否定されましたので、なかなか実業会社の経営トップの損害賠償判決を(内部統制構築義務違反を根拠に)勝ち取ることはむずかしいですね。
| 固定リンク
コメント