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2018年3月 5日 (月)

リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?

すでに多くのマスコミで報じられているとおり、リニア工事談合事件において逮捕者が出る事態となりました。課徴金減免申請(自主申告)をしている2社からは逮捕者が出ていないことから、リニエンシー制度の活用の有無によって検察の対応も分かれたとの推測(あくまでも推測です)も出ています。

ただ、3月4日の毎日新聞ニュースによりますと、リニエンシーを活用した大林組、清水建設の役職員の方々も立件の予定、とされています。つまり公取委の調査開始前にリニエンシーを活用した(様式第2号による報告書を提出した)ものではないとして、課徴金の免除まではもらえず、減額にとどまる(つまり刑事告発を見送る、というわけではない)ものと推測されますね。検察による偽計業務妨害罪容疑の捜索・差押えが先行していたから、ということでしょうか。

さて、今回のリニア工事談合への検察の捜査手法を眺めますと、昨年12月のこちらのエントリーでも予想したように、今年6月から施行される日本版司法取引(刑事訴訟法上の協議・合議制度)を先取りしたものではないか、といった観測がますます現実味を帯びているように思えます。元検事の著名な弁護士の方も、3月4日の産経新聞ニュースの記事で解説をされています。もちろん独禁法事件については公取委の告発権限もありますので、検察独自で判断できるわけではありませんが、捜査や公判に協力的な姿勢を示す役職員には、身柄拘束に関しては慎重な対応を心掛ける・・・といった実務を定着させるための試金石になっているように思います。

先の毎日新聞ニュースでは、談合の事実を否認して逮捕された方の後任の方が「談合はあった」と供述している、と報じています。談合を認める供述を開示した時期と逮捕の時期との前後関係は明らかではありませんが、いずれにしても身柄拘束の可能性を仄めかして捜査協力を求めた可能性はあると思いますし、今後の経済財政関係犯罪への司法取引の威力を垣間見るような出来事です。

逮捕者が出た2社については東京都が指名停止とするそうですから(こちらのニュース参照)、リニエンシー制度の活用に関する経営判断は、企業業績に大きなものとなります。企業の取締役、監査役にとって、今後リニエンシーを活用するかどうか、司法取引に応じるかどうかの判断には、大きなリーガルリスクが伴うことになりそうですね。

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