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2018年3月29日 (木)

米国の内部告発法は決して「内部告発奨励制度」ではない

三菱マテリアルさんのHPに特別調査委員会の最終報告書が公表されましたね。かなりショッキングな内容であり、多くの経営者の方にもぜひお読みいただきたいところです。

また、品質偽装問題を生じさせてしまった企業にとって気がかりな記事が本日(3月28日)の日経朝刊に掲載されていました。「米、車欠陥の内部告発制度 タカタ元社員が1号に」との見出しで、米国の自動車公益通報者法が紹介されていました。同法に基づいて、日本のタカタ社のシートベルトの不具合を告発した2名の社員に、1億円以上の報奨金が出されることが決まった、とのこと。今後は日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーにも矛先が向けられ、新たな脅威になるといった論調でした。

タカタ社の事例を契機に成立、施行された米国の自動車公益通報者法ですが、従業員による不正申告によって企業が約1億円以上の制裁金を課された場合(和解も含みます)、当該従業員には10%から30%の報奨金が付与される仕組みになっています。通報者は日本企業の従業員でも構いませんし、通報事実は施行前(2015年12月以前)の不正に関する情報でも構いません。日本国内での不正でも、当該自動車(自動車部品)が米国内で使用されているのであれば対象になります。

通報者には自動車メーカーだけでなく、部品メーカーや販売会社、そしてそれらの下請け業者も含みますので、日本企業にも相当の脅威となることは間違いないと思います。ただ、だからといって米国の内部告発保護法が「内部告発奨励法」かというと、それは間違いだと思います。上記の記事では紹介されていませんが、たとえば自動車公益通報者法の条文をよく読みますと、公益通報者が保護され、また報奨金をもらえる条件として「先に会社の内部通報制度を利用して、それでも会社が是正措置を講じなかった場合」とされています。つまり、内部通報制度をしっかりと整備し、また運用していれば、内部告発者が多額の報奨金をもらえる可能性は低い、ということになります。

ただ、企業の内部通報制度が整備されていたとしても、7つほどの例外(通報制度を活用せずとも内部告発ができる場合)が定められていますので、具体的にどのような内部通報制度を整備、運用していればよいのかは、法文をチェックしておく必要があると思います。つまり、「いい加減な内部通報制度ではダメ。通報者の秘密を守り、通報者に不利益な処分をあたえないことが保証されている制度でなければならない」ということがわかります。最近の米国における内部告発関連の法制度は、社内通報を重視する傾向が強いのではないかと思われます。したがって、日本企業の対策としても、まずは自社の内部通報制度をしっかりと構築し、従業員に信頼されるような運用を心がけることが第一ではないでしょうか。

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