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2018年3月20日 (火)

第三者委員会の公正性・中立性を担保するもの

相変わらず外部調査委員会の仕事で忙しくしております。なかなか本気モードのブログが書けずに申し訳ございません<(_ _)>

さて、本日(3月19日)の日経朝刊法務面「法務トーク」では、「調査委員会選び 社外役員主導で」と題して、久保利弁護士のご意見が掲載されていました。久保利氏は、企業不祥事が発覚した企業では、東証の企業不祥事対応のプリンシプルに従った行動がとられていることが多い、しかし「第三者委員会」といっても「名ばかり委員会」にすぎず、現役経営者に選ばれたにすぎないものも多い」と指摘しています。

私も、諸事情から2017年に公表された社内調査委員会、社外調査委員会の報告書およそ40本ほどを2月に精査しましたが、そのうち独立調査委員会報告書といいながらも、どうみても中立性や公正性に疑問を持たざるを得ないものが相当数含まれているように思いました。とりわけ久保利弁護士も指摘しておられるように、「この委員会の構成員はどのようなプロセスで選定されたのか」といったところが不透明なものが多いですね。

内容については触れることはできませんが、現在、私が委員長を務めております外部調査委員会については、私自身が社外取締役(指名委員会等設置会社の4名の社外取締役)全員の面接を受け、社外取締役4名から推薦を受けて取締役会で選任されました。ちなみに各委員も個別に社外取締役の面接を受けて社外役員の信任を得て選任されています。だからといって、素晴らしい調査ができる、というわけではありませんが(そんな甘いものではない)、少なくとも調査における中立性、公正性は十分に担保されているものと思って業務を遂行しています。

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コメント

山口先生、いつもエッジの効いたコメント、有難うございます。名ばかり第三者委員会が依然多いのは、経営者の負託責任や担当弁護士の職業倫理からの期待からすると嘆かわしいと私も感じます。ただ、調査の公平性、客観性を求める視点だけでなく、調査そのものが企業側の危機管理の一環として行われている視点で考えることも重要かと感じています。「真実の追及」とは言え、時間的制約の中で利用可能な資料も限界があり、社内の関係者からのヒアリングは保身と正義感、政治的思惑などが入り混じったバイアスの下で行わざるを得ないので、外部の調査委員だけでは程度の差はあれ、限界があります。会計監査人ですら、前期決算修正を極端に嫌うので正義の味方という訳ではありません。したがって、私は社外役員、とりわけ社外監査役の果たすべき役割と責任が極めて大きく、なぜこの点が従来強く指摘されないのか不思議に感じています。外部の俄か調査委員に比べ、社内の事情や人脈により精通し、問題、課題の本質や要点、背景、仮説を認識している筈です。また、企業信用の維持など危機管理も考え合わせたバランスある対応を経営者に進言できる立場にあります。調査委員の人選や調査の契約範囲の決定も取締役の業務執行であるので、妥当性監査の対象として監査、監督すべきと言えるでしょう。社外監査役が「会社に騙された」と他人事のように自らの監査責任を放棄したり、調査委員に就任することを自己監査に当たると忌避し、守秘義務を盾に沈黙を守ることは、有事におけるステークホルダーに対する責任の認識が希薄と考えます。最低限、オブザーバーとして、社内調査、第三者委員会調査をモニタリングすることが欠かせないのではないでしょうか。

投稿: 森本親治 | 2018年3月30日 (金) 08時09分

森本さん、たいへん貴重な意見、ありがとうございます。おっしゃるとおり、第三者委員会の委員長をやっておりますと、社外役員の助けを必要とする場面が出てきます(これは実感です)いわば社内と社外との緩衝役というところです。ぜひまた、このテーマでエントリーを書きたいと思います(いまの委員会の活動が終了した後、ということになりそうですが)。

投稿: toshi | 2018年4月 6日 (金) 15時27分

現在注目している「第三者調査報告書」は日本レスリング協会の「パワハラ調査」です。
数年前に山口先生が「パワハラの背景に不正やコンプライアンス違反が隠れている」という内容の論稿を御発信されていました。
3月29日の内閣府消費者委員会「第11回公益通報者保護専門調査会」でも、「パワハラ・セクハラ・マタハラの通報はあっても良いが、人間関係・不満の通報(特に匿名通報)には事業者の調査窓口では現実的に調査対応できない」といった議論がありました。
ハラスメントと人間関係不満の線引きが難しいのは「人間関係がハラスメントの背景になっている」ことがあるかもしれず、更にその人間関係の背景に不正行為があるかもしれない(不正を上司(通常のレポートライン)に通報したため)ことです。
冒頭のパワハラ案件は内部調査・第三者調査だけでなく「内閣府の調査」もあるようなので、背景解明に期待しています。
森本様がおっしゃる「社外監査役の活躍」にも期待し、私も弁護士登録をされた社外監査役に通報を続けています。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年4月 7日 (土) 18時08分

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