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2018年4月30日 (月)

GWにおススメの調査委員会報告書-雪印種苗・品種偽装事件

(二日続けての委員会報告書ネタになりますが)品質問題を発生させた企業の調査委員を二つ兼務していることもありまして、研究目的で雪印種苗さんの「種苗法違反等に関する調査報告書」を一日かけて読みました。「全文開示版」と「簡略版」がリリースされていまして、全文版は240頁、簡略版でも130頁、いずれも読了しました。

新聞でも報じられているように、委員会報告書が開示された4月27日、雪印種苗(メグミルクさんの100%子会社)の社長さんが辞任をされましたが、今後の第三者委員会報告書のモデルになるのではないかと思うほどに秀逸な報告書です。もともと種苗法違反(商品の表示に関する規制違反)の事実を独立した第三者によって解明していく、ということだったのですが、二度にわたる内部告発が指摘していた「品種偽装」の疑惑が浮かび上がり、最終的には社長さん(当時の専務)が品種偽装の隠蔽に関わっていたことまでが刻銘に描かれています。まさにデジタル・フォレンジックがなければ社長さんの関与は認定できなかったのでありまして、DFの威力をまざまざと見せつけられる内容になっています。

最初の内部告発(2014年)が新聞社に届いたため、新聞記者が動くのですが、会社は当該記者への対応に万全を期して、なんとか記事化されることを防ぎます(内部告発が直ちに新聞ネタにはならない現実がわかります)。しかし、二度目の内部告発(2017年11月)が業界団体のところへ届くと、今度は農水省から報告要請を受けることになります。ここで種苗法違反の事実調査目的で設置された第三者委員会が、過去2回の(品種偽装疑惑解明のための)社内調査委員会の問題点を厳しく指摘し、「社内調査委員会の結果には依拠できない」としてフォレンジックおよび独自ヒアリングによる本格調査に移行します。監査役が社内調査のヒアリング記録を改ざんしたり、取締役が親会社(雪印メグミルク社)の社外役員の調査を妨害したり、さらには親会社に虚偽報告を行います。この報告書を読みますと、いかに社内調査委員会というものが脆弱であるか、思い知らされます。

「10年ほど前にはたしかに不正が行われていたが、雪印事件をきっかけに不正は止めている」という子会社の調査事実(本当はその後も品種偽装が続いていたのですが)を親会社が知ったとき、親会社はステイクホルダーのために、また全グループのために、不祥事を公表すべきか否か。本件では不祥事を公表しない、という方針を親会社も了承するのですが、(子会社から虚偽報告を受けていたとしても)親会社として、過去のグループ会社の不正をどこまで公表すべきか、とても悩ましい問題ではあります。本件でも、子会社から相談を受けた親会社は、いったん公表すべきでは?との意見を表明するのですが、その後は子会社調査の結果を受けて「非公表」という方向性を承認するのですが、このあたりは有事の経営判断とも関連するグループ会社管理の在り方として議論したいところです。

本報告書は大きく分けて「種苗法違反」に関する報告と「品種偽装」に関する報告に分かれますが、ゴールデンウイークにお時間のある方には、ぜひとも「品種偽装」の部分(第三章以下)について、フォレンジックで浮かび上がった関係者メールの生々しいやりとりが描かれている「全文開示版」の通読をおススメいたします。この報告書を読んで監督官庁がどのように動くのか、社長退任というガバナンス上の対応が、今後のステイクホルダーの動きにどう影響が出るのか、とても興味深いところです。それにしても内部告発の威力はすごい(私個人の感想ですが、会社も第三者委員会委員も、誰が告発したのかはわかっていたのではないでしょうか)。このような結果にならないためにも、内部通報制度を機能させる必要があります。

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2018年4月29日 (日)

DF(デジタルフォレンジック)業者が足りない!-調査委員会激増の中で

本日(4月28日)も、私が委員長を務めておりますTN社外部調査委員会を開催しておりましたが、終了後、「社内調査、社外調査の委員会が増えているので業者の『取り合い』状態が続いているようだ。掛け持ちができない仕事なのでたいへんな状況」との話題が出ておりました。速やかに調査委員会を立ちあげたいのにDF業者さんがいない・・・という状況は、考えてみると恐ろしいです。

たしかに、私が独自で調べた結果からみますと、1月~4月までにリリースされた(上場会社の企業不祥事発生に伴って立ち上げられた)社内調査委員会、社外調査委員会の数は、2015年から今年までの推移でみますと18件→18件→10件→27件となっていて、今年は激増しています。さらに開示が必要かどうか、会計監査人の品質管理部門の判断に資するための予備調査まで含めますと、調査委員会が相当に増えていることは間違いありません。予備調査にまでフォレンジックが必要かどうかは事案次第かと思いますが、フォレンジック業者の取り合い状態・・・というのも頷けます。

フォレンジックには①委員との連携(保全対象者の絞り込み、キーワード検索の有効性)、②フォレンジックを監督するアドバイザー(費用対効果)、③会社の協力関係(対象者のPCやスマホ、クラウドの提供)が必要ですが、なんといっても保全から解析、一次レビュー、二次レビューに多くの専門人員の投入が不可欠で、ここのところが事実認定のための証拠発見、件外調査の合理性確保の決め手となります。実際に調査活動に携わりますと、フォレンジックの巧拙が調査の成否を決める、ということも実感します。将来的にはAIによって作業の一部は代替できそうですが、やはり人間の勘や会社、委員の我儘への忍耐(?)なども必要なのですべて代替できるような仕事ではありません。

フォレンジック担当者は、会社と委員会がどのような姿勢で対峙しているのか、一番近くで見ています。「なんちゃって委員会」なのか「真にステイクホルダーに説明責任を尽くすための委員会」なのか、一番わかる立ち位置にいらっしゃいます。今後、どんな方々に調査委員会を構成してもらうか、悩んだときはフォレンジック業者の方に聞いてみるのも良い方法かもしれませんね。

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2018年4月26日 (木)

神鋼グループ・品質データ偽装事件-刑事立件の可能性

皆様すでにご承知のとおり、本日(4月25日)、神戸製鋼さんがデータ偽装事件について東京地検特捜部、警視庁の合同捜査を受けていることが明らかになりました(神鋼さん自身もHPで事実関係を認めております)。

3月6日に神戸製鋼さんが「当社グループにおける不適切行為に関する報告書」をリリースして以来、私は本件については(報告書はきちんと読了しておりましたが)全く関連エントリーを書いておりませんでした。といいますのも、後だしジャンケンのように思われるかもしれませんが、「これは刑事立件の可能性があるなぁ」と感じていたからです(一部講演等ではコメントとして申し上げておりましたが・・・)。

私がそのように推測していた理由は、3月6日の神鋼さんの報告書が調査委員会の報告書ではなかったからです。公開されたものは、第三者による報告書を神鋼さんが要約してまとめ直したものなので、取引先を含めたステイクホルダーにとって、客観的な事実関係はわからないままとなってしまいました。たとえばデータ偽装行為に関する不正競争法防止法違反の該当性について、開示を拒否したことで民事の問題で解決される道が絶たれ、あとは刑事問題として解決するしか方法がないように思いました。刑事事件として取り扱う以上、上層部の主観的な認識が焦点となることはやむをえませんが、本来明らかにされるべき組織としての構造的な欠陥に光をあてるには刑事立件の可能性が高まるように思います。

私自身は、昨年10月17日のエントリー「神鋼品質データ偽装事件は不正行為か不適切行為か?」で述べたように、「不適切行為」ではなく「不正行為(不正競争防止法違反もしくは詐欺)」と指摘しておりましたが、品質偽装問題は、サプライチェーンにおける自浄作用(たとえば取引先との間では不正競争防止法違反による損害賠償請求訴訟による解決)が機能することを条件として、刑事立件はないと考えていました。しかし、神鋼さんは海外の司法当局の訴追をおそれて第三者委員会報告書を開示しないという決断をとりましたので、その判断については否定はしませんが、その分、今度は国内における刑事訴追リスクが高まるのではないか、と予想されたところです。

実は3月6日の報告書では、私としては「明らかにされるべき3つのポイント」が、まったく明らかにされていないと考えています。その「3つ」が明らかにされなければ、神鋼さんのデータ偽装がなぜ今頃発覚するに至ったのか、その「根本原因」には迫れないと考えています。その3つのポイントというのはまた別途エントリーさせていただくか、もしくは(時間がなければ)講演等で明らかにしたいと思います。

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2018年4月22日 (日)

最新の法務・会計雑誌に拙稿を掲載いただきました。

P_20180421_200904_400ゴールデンウイークまであと一週間となりましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。「ブログを書く時間がない」などと言いながら、しっかり(?)告知だけはさせていただこうかと思い、筆をとった次第でございます。

世間では財務次官のセクハラが大きな話題となっておりますが、本日発売の中央経済社「ビジネス法務」6月号におきまして、イビデングループ・セクハラ内部通報最高裁判決を取り上げた「最判平30.2.15にみるグループ内部通報制度見直しの視点」と題する論稿を掲載いただきました。会社法上の企業集団内部統制や内部通報制度に関する重要判決なので、著名な学者の皆様によるレベルの高い判例評釈が待たれますが、私のほうはとりあえず「速報版」ということで執筆いたしました。

セクハラの認定基準、セクハラ認定と親会社の法的責任、本最高裁判決の意義、射程距離、今後のグループ会社管理における影響などを論点として書かせていただきました。また、最後のほうで公益通報者保護法との関係についても言及しております。ご興味がございましたらご一読いただき、ご意見、ご批判を賜れればと存じます(もちろん本最高裁判決の元となる地裁、高裁判決もすべて目を通したうえで執筆しておりますが、実は高裁判決で示された認定事実のところが「読み物」としては一番おもしろかったりします)。

 

P_20180421_201116_400そしてもう一冊ですが、第一法規「会計・監査ジャーナル」5月号におきまして、連載第2回「精神論ではなく実践論としての職業倫理を考える ②職業倫理を発揮できる土壌はあるか」を掲載いただきました。

企業の有事対応を支援するなかで、いつも感じるところですが、どんなに職業倫理の大切さを説いてみても、これを発揮できる組織風土がなければ絵に描いた餅になってしまいます。とりあけ「忖度」が大好きな日本企業にとっては大きな課題かと。

そこで、どのような組織風土を形成していくべきなのか、平時からの取組に着目して「実践論」としての職業倫理を考えてみました。大きな書店でなければなかなか入手できないかもしれませんが、こちらもご興味がありましたらぜひお読みいただきたいと存じます。なお、本誌に別の弁護士さんが執筆された「近時の動向を踏まえた平成30年6月総会の留意点」はなかなか読み応えがあって勉強になりますね。

 

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2018年4月19日 (木)

「あえてexplainするという選択」-関経連CG改革への建議

外部調査委員会で委員長を務めておりますTN社の件において、連日DF(デジタルフォレンジック)で深夜まで頑張っておられる委員(委員補佐)の皆様をみておりますと、ノホホンとブログを更新している気持ちにもなれず、ずいぶんと更新頻度が落ちております。また、新聞で大きく報じられております事件の品質管理委員会委員にも就任したことで(開示されましたら、またあらためて告知いたします)、工場見学など早朝から活動せねばならず、当分の間は週1ペースの更新になるかと思いますが、どうか見捨てないでくださいね(笑)。

ということで、いろいろとブログネタはあるのですが、どうしても書きたかったのが関経連さんの「実効性あるコーポレートガバナンスへの改革に関する意見について」と題する建議です(4月17日リリース)。うーーーん、毎度ながら、関経連さんの企業統治改革への意見、とんがっていてスキです(笑)。企業統治の仕組みについては、個別企業ごとに柔軟な制度設計とすべき、というのが基本思想でして、表題にも書いたとおり、コンプライを目標とするのではなく、あえてエクスプレインする、という選択肢もあるのではないか、と締め括っています。ホント、そのとおりかと。最近は機関投資家の方々の中にも「コンプライよりもエクスプレインする企業のほうが形式よりも実質的な改革を進めている企業といえるのでは」という意見も出ていますよね。

ただ、上記関経連意見の個別提案をみると、機関投資家の気持ちを逆なでしているものも散見されます(四半期報告廃止、社外取締役の制度化反対、政策保有株式制度の柔軟化、議決権行使助言会社への規制導入、ROE指標重視への警鐘等)。関経連さんの意見は「三方よし」の近江商人の教えを基本としており、「株主も(大切にすべき)ステイクホルダーのひとつにすぎない」というところが基本にあります。たとえばROEの過度の重視は企業倫理、日本企業の経営哲学にそぐわないと明言しています。

ホンネで言えば、この関経連さんの意見に共感する上場企業さんも多いと思います。そもそもコーポレートガバナンスの在り方をソフトローで誘導すること自体、議論の対象にすべきですが、どうせコンプライするのであれば、日本を代表するグローバル企業(外国人株主の保有比率が高い企業)の多くが範としている「近江商人 商売十訓」のほうが参考になるような気もいたします。「正札を守れ。値引きは却って気持ちを悪くするくらいがオチだ」なる訓戒は、売上高営業利益率にも通じるのではないでしょうか。

とりあえず、関経連さんの意見における個別提言については、また時間のあるときにでも、きちんと読んで理解しておきたいところです。あと、UACJさんの株主による人事権行使の件や積水ハウスさんの株主代表訴訟ネタについても書きたいのですが、後者については私の立ち位置からして問題がありそうなので(笑)、もはやブログでは永遠に書けないかな・・・。さらに財務次官のセクハラ問題で財務省顧問弁護士が調査窓口となったことが波紋を呼んでいますが、これって内部通報の外部窓口を顧問弁護士が務めている企業が多いこととどんな関係に立つのか・・・、また別途エントリーでまとめたいと思います。

 

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2018年4月16日 (月)

利益相反行為への関与と企業年金損害との因果関係を認めた判決

この6月に施行が予定されているコーポレートガバナンス・コード改訂2018(案)では、自社の企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、企業自身が取組むことを要請しています。最終受益者たる従業員の資産を預かる立場として、スチュワードシップ・コードへの署名を促し、併せて事前規制による基金の健全性確保を図ろうというものだと理解していますが、司法が関与する事後規制という意味でも重要と思われる判決が出たようです。

4月13日(金)日経新聞の夕刊(社会面)によりますと、年金基金(九州石油業厚生年金基金-すでに解散)が、同基金の資産を運用していたファンドの元社長を被告として争っていた損害賠償請求訴訟において、元社長の損害賠償責任を認める控訴審判決(東京高裁)が出ました。当該年金基金には年金コンサルタントが助言をしていたそうですが、このコンサルタントに、「うちのファンドに資産を預けてもらえるように助言してくれれば、その資産額に応じてフィーを払う」と同ファンドが約束し、実際にも当該コンサルタントの助言によって多額の基金が預けられました。しかしながら、その運用結果として260億円以上の損失が基金に発生したそうです。控訴審では、ファンドの元社長による「(コンサルタントの)利益相反の助言への関与」について故意の不法行為が成立するとして157億円の賠償義務を認められています(ただし、請求額は1億円とのこと)。

基金側の代理人は「今回の判決は、ファンドや年金コンサルタントに警鐘を鳴らしたものといえる」と述べておられます。なお、利益相反行為は年金コンサルタントが行ったものであり、その利益相反の助言に関与したものとしてファンドの元社長さんの不法行為が認めらていますが、ファンド自身への損害賠償請求は棄却されているようです(ちなみにファンドとしては「双方代理」の事実を年金基金側には伏せていたそうです)。元社長の行為に対する違法性判断を含め、いろいろと論点はありそうで、そもそも「双方代理」については行政処分をもって事後規制を図るべきとの意見もありそうです。

本件では利益相反行為を助長した関係者個人の民事賠償責任が認められたところに大きな意義があるだけでなく、役員個人による利益相反行為の関与(助長行為)と基金の損失・損害(157億円)の間に相当な因果関係が認められた、という点にも興味が湧きます。何度も繰り返し、当該ファンドへの資金移動があり、その都度コンサルタントへの報酬が支払われたようなので、どういった理屈で因果関係が認められたのか、ぜひとも判決文を読んでみたいところです。

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2018年4月10日 (火)

会計監査人、内部告発者に参考となるエフオーアイ事件高裁判決

今年の3月23日に東京高裁で言渡されたエフオーアイ事件控訴審判決の速報版は3月26日付けエントリーで書きましたが、ある事件関係者の方から「研究資料にしてください」ということで判決全文を頂戴いたしました(どうもありがとうございます<m(__)m>)。一審で敗訴したエフ社の監査役と元引受証券会社が実質的に控訴をしていましたが、監査役さんの控訴については棄却、元引受証券会社さんの控訴については逆転で責任(損害賠償責任)が否定されるという結論になっています。

元引受証券会社の責任を否定した判決理由部分をザックリまとめますと、

引受審査の場面においては、元引受証券会社は企業会計及び会計監査の専門家である公認会計士等と同等の作業を重畳的に実施させる実益は乏しく、専門家との合理的な役割分担の下で効果的な審査の実現を図るのが金商法の趣旨であると解される

監査結果の信頼性に疑義を生じさせるような事情が判明した場合、元引受証券会社は、自ら財務情報の正確性について公認会計士等と同様に実証的な方法で直接調査する義務はなく、一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意を用いて監査結果に関する信頼性についての疑義が払しょくされたと合理的に判断できるか否かを確認するために必要な限度で追加調査を実施すれば足りると解すべきである

財務情報には明らかに不自然点があり、二度にわたる内部告発が元引受証券会社に届いたのであるが、元引受証券会社としては、公認会計士等による監査結果に関する信頼性に疑義が生じた場合に該当するものとして、一定の追加調査を行っており、それは通常要求される程度の調査を行ったと評価される。よって「相当な注意を用いた」といえる、つまり元引受証券会社には過失はない

といった論旨です(元引受証券会社の主張に対しては、高裁はかなり詳細に理由を述べているので、興味のある方はぜひ判決全文をお読みください)。会計監査人の監査結果への信頼・・という点が、元引受証券会社の免責の根拠として重視されています(いわゆる「信頼の原則」の適用。なお金商法21条1項4号、17条の解釈あり)。本判決の結論からみると、財務情報に違和感のある場合はもちろんですが、それ以外、たとえば内部告発が会計監査人に届いた場合などにも、会計監査人の注意義務違反、善管注意義務違反の有無が慎重に判断されるものと思われます。エフオーアイ事件訴訟では、会計監査人は早々に和解をされたようですが、監査法人(会計監査人)には(行為規範を考える上で)おススメの判決ではないかと。

なお、本判決を詳細に読みますと、内部告発の工夫次第では元引受証券会社をかなり追い詰めることもできそうですね(まぁ、今回もかなり追い詰められたわけですが・・・)。会計監査人や元引受証券会社、さらには取引所に対して深度ある調査を求めたいのであれば、内部告発人としては告発文書の書き方に注意をすべきと感じました(そういえば先日のイビデングループ・セクハラ最高裁判決でも、「通報者が何を会社に要求していたのか」ということが論点になっていました。あまり詳しくはここで論じることはしませんが、内部通報や内部告発にもコンプライアンスに精通した代理人が就くことが重要かもしれません)。

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2018年4月 6日 (金)

もはや「なんちゃってコンプライ」ではすまされない「ガバナンス・コード改訂版への対応」

(4月6日 午後追記あり)

毎日、調査委員会のヒアリング準備に追われておりまして、まともなエントリーが書けておりませんが、3月30日に公開されましたコーポレートガバナンス・コード改訂(案)をようやく読みましたので、ひとことだけコメントさせていただきます。私の個人的な印象は、タイトルのとおり「ガバナンス改革の深化が進み、もはや『なんちゃってコンプライ』ではすまなくなるぞ!」というもの。

2015年に施行されたガバナンス・コードについては、多くの上場会社がホンネとタテマエを使い分け、「コンプライ」といいながら、実際には面従腹背、後ろを向いて舌をペロッと出しているというのが実際のところではないでしょうか。そんな日本の上場会社の「なんちゃってコンプライ」に終止符を打つべく、今回の改訂が実施されるものと思われます(正式施行は6月が予定されています)。

まずなんといっても「CEOの後継者計画の実施と、選解任プロセス透明化のための指名委員会の設置」です。後継者選任プロセスに独立社外取締役がどのように関わるのか、きちんと方針を開示している会社は少ないですし、きちんと運用しておられる会社はさらに少ないと思います。

つぎに「取締役会における取締役報酬の具体的な決定」ですね。こちらも報酬決定の透明性が求められていますので、報酬委員会による個別取締役の報酬決定が要請されています(文面では「個別」とは記載されていませんが、個別でなければ意味ないですよね)。役員報酬はインセンティブ報酬のほうが話題になりますが、こちらもキツイです。これ、ホントに上場会社で実施されるのでしょうかね?それとも正直に「できません、なぜなら・・・」とエクスプレインされるのでしょうか。

さらに「内部留保の取り崩し(健全なリスクテイク)」です。これまで、上場会社の内部留保については「将来の投資に迅速に対応できるよう手元流動性が必要なため」と説明していましたが、これからは「アンタ、なにゆうてまんねん!」ということになりそうです。「事業リスクを的確に把握したうえでの事業ポートフォリオの見直し」が要請されていますので、手元資金(内部留保)をどの程度確保しておくのか、その合理的な理由を示さなければ「資本コストを意識していない経営者」と烙印を押されてしまうわけで、これもキツイです。

(追記)4月6日の日経朝刊19面に「自社株の買い越し1.3兆円 企業、市場に資金返却」なる見出し記事を見つけました。「企業統治強化の流れの中で、経営者が株主に報いる姿勢を強めている」とありますが、手元資金の有効活用を求める投資家の要望が企業行動に及ぼす影響は大きくなりつつあります。

そして「政策保有株式の縮減」です。株式の持ち合いは「サラリーマン経営者がリスクをとらずに自社の議決権を保有している状態」という見方が強いです。オーナー経営者であれば株主と経営者の利害が一致しますが、サラリーマン経営者の場合には利益相反状況です。だからこそ、サラリーマン経営者の会社にはインセンティブ報酬制度の導入が強く求められていますが、なんといってもリスクをとらず、資本コストも意識しない経営は許されない、という機関投資家の意見が強くなっているので、今後どう解消していくべきか、コンプライする以上はその道筋を明らかにしなければならないと思います。

以上、思いつくままにコメントしましたが、ガバナンス・コード対応には「ホンネとタテマエ」の使い分けは許されないと考えます。本気で対応するか(コードの趣旨に沿った形で運用するか)、さもなくば堂々と「コードには従いません、なぜなら・・・」と言い切るか、御社の選択肢は二つに一つだと思います。ちなみに英国版ガバナンス・コードが2016年に改訂されていますが、「当社は日本版には従わない、ただし個々の企業文化を重視する英国版には従っている」といった理由もありかな…などと考えています(そもそも日本版コードは英国版コードに従っているのでしょうか?従っていないのであれば、その理由を示していただきたいものです)。

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2018年4月 3日 (火)

グループ管理、サプライチェーンにこそ不祥事の「根本原因」がある

当ブログにお越しの方々はすでにご承知のことと思いますが、日本取引所は3月30日付けで「上場会社における企業不祥事予防のプリンシプル」を公表されたようです(日本取引所のリリースはこちらです)。パブコメとこれに対する取引所の考え方もリリースされており、プリンシプルを理解する際に役に立ちそうですね。さて、皆様方の会社にとって、「不祥事の芽」とはいったいどのような事情を指すのでしょうか。

ところで、この予防のプリンシプルでは、原則5では「グループ全体を貫く経営管理」、そして原則6では「サプライチェーンを展望した責任感」について言及されています。原則1から4までとは少し毛色が違うような気もしますが、(これは個人的見解ですが)、このグループ管理とサプライチェーンにおける予防責任という点にこそ、不祥事の「根本原因」に迫るヒントが隠されているように考えています。

企業不祥事発覚時に組織される社内調査委員会、第三者委員会は、不祥事の発生原因をどうしても社内事情に求めたくなります。報告書をみても、組織風土や内部統制・ガバナンスの不全について、社内の状況を中心にまとめられています。しかし、過去に性能偽装事件や労基法違反事件、薬機法違反事件、カルテル、FCPA疑惑の調査に携わる中で、私は本当に不祥事の根本原因を追究するのであれば、グループやサプライチェーンの構造的な欠陥にまで踏み込む必要があると考えています。

たとえば、①親会社で労基法違反の疑惑が生じたので、当該業務をそっくり特定の子会社に移管して「ブラック企業」の評判を回避した事例、②社外役員の顔に泥を塗ることができないので、FCPA疑惑が生じる金銭支出についての判断を海外子会社の役員会に移行した事例(もちろん実質的な意思決定は親会社の執行部です)、③談合疑惑に巻き込まれないように、取引先中堅ゼネコンに談合をさせる大手ゼネコンの事例、④大手メーカーの受注調整(在庫管理)を最適化するために、「納期を守ること、欠品を出さないこと」を最優先事項として取引先に要求し、品質偽装等の不正を「やらざるをえない」状況を取引先に作出している事例など、数え上げたらきりがありません。

これらの行為を「リスク管理」と呼ぶ方もいらっしゃるかもしれません。また「こういった知恵を出すのが法務の仕事だ」とおっしゃる社長さんもいらっしゃるかもしれません。ただ、これでは何も変わりません。短期的には収益につながるかもしれませんが、長期的な企業価値を毀損することは明らかです。

よく「企業風土」とか「コンプライアンス意識」といったことが語られますが、(社員による私利私欲のための違法行為は別として)一社だけで完結する企業不祥事は少ないと感じています。まさにいま金融庁や取引所が語る「根本原因」にまでさかのぼる勇気があるのであれば、このグループとしての風土、サプライチェーンにおける不正防止の最終責任者の特定、という点こそ指摘しなければなりません(ただ、不都合な真実という意味で、誰も語ろうとしない領域かもしれませんが・・・)。今回の「不祥事予防のプリンシプル」を語るにあたり、この原則5と6については、そういった理解のうえで読み進める必要があると考えます。

 

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2018年4月 2日 (月)

大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)の社外監査役に就任いたしました。

本日(4月1日)、大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社、Osaka Metro)の社外監査役に就任いたしました。大阪市交通局の時代から「監査役担当」という形で経営会議には出席しておりましたが、民営化によって監査役会設置会社となり、会社法上の社外監査役に選任いただきました。関西ではJR西日本に次ぐ規模の鉄道会社となりますが、皆様の生活を支える企業の経営に携わる者として、誠実に職務を遂行しく所存です。

朝早く、取締役会を開催した後、梅田駅のセレモニーに参加をして、その後は監査役会。お昼からは新阪急ホテルにて記念パーティーに参加いたしました。たいへん盛大なものでしたが、私は主にグループ会社の役員の皆様にいろいろと各グループ会社の現状を教えてもらいました。100%子会社は少なく、多くは関西企業が少数株主として資本参加をしています。運輸収入以外にも収益基盤を広げるためには、グループ会社との連携も重要になると思いますので、企業集団としての事業リスクなどにも配慮しながら監査を進めていきたいと考えています。

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)の取締役相談役の方も社外取締役として経営に参画いただきますし、本日、東京メトロの常勤監査役の方ともお話ができました。ぜひとも東京メトロさんの事例も参考にさせていただこうかと思っております。

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