最新の法務・会計雑誌に拙稿を掲載いただきました。
ゴールデンウイークまであと一週間となりましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。「ブログを書く時間がない」などと言いながら、しっかり(?)告知だけはさせていただこうかと思い、筆をとった次第でございます。
世間では財務次官のセクハラが大きな話題となっておりますが、本日発売の中央経済社「ビジネス法務」6月号におきまして、イビデングループ・セクハラ内部通報最高裁判決を取り上げた「最判平30.2.15にみるグループ内部通報制度見直しの視点」と題する論稿を掲載いただきました。会社法上の企業集団内部統制や内部通報制度に関する重要判決なので、著名な学者の皆様によるレベルの高い判例評釈が待たれますが、私のほうはとりあえず「速報版」ということで執筆いたしました。
セクハラの認定基準、セクハラ認定と親会社の法的責任、本最高裁判決の意義、射程距離、今後のグループ会社管理における影響などを論点として書かせていただきました。また、最後のほうで公益通報者保護法との関係についても言及しております。ご興味がございましたらご一読いただき、ご意見、ご批判を賜れればと存じます(もちろん本最高裁判決の元となる地裁、高裁判決もすべて目を通したうえで執筆しておりますが、実は高裁判決で示された認定事実のところが「読み物」としては一番おもしろかったりします)。
そしてもう一冊ですが、第一法規「会計・監査ジャーナル」5月号におきまして、連載第2回「精神論ではなく実践論としての職業倫理を考える ②職業倫理を発揮できる土壌はあるか」を掲載いただきました。
企業の有事対応を支援するなかで、いつも感じるところですが、どんなに職業倫理の大切さを説いてみても、これを発揮できる組織風土がなければ絵に描いた餅になってしまいます。とりあけ「忖度」が大好きな日本企業にとっては大きな課題かと。
そこで、どのような組織風土を形成していくべきなのか、平時からの取組に着目して「実践論」としての職業倫理を考えてみました。大きな書店でなければなかなか入手できないかもしれませんが、こちらもご興味がありましたらぜひお読みいただきたいと存じます。なお、本誌に別の弁護士さんが執筆された「近時の動向を踏まえた平成30年6月総会の留意点」はなかなか読み応えがあって勉強になりますね。
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コメント
日本公認会計士協会絡みでのコメントです。
4月6日に協会から研究報告「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」が公表されました。「会計監査の在り方に関する懇談会」の「内部統制報告制度の運用状況については必要な検証を行い、制度運用の実効性確保を図っていくべき」との指摘に対する、初めての真摯な検討成果として貴重なものと受け止めました。
(訂正)内部統制報告書における開示すべき重要な不備の詳細な事例分析は、企業が内部統制を構築・運用・評価する上での有用な知見として活用できると思います。小生が特に注目したのは、Ⅳ.内部統制監査の留意事項とⅤ. 内部統制報告制度の運用上の課題の部分です。
訂正報告書に関連して、「このことは、内部統制に重要な不備が存在していたにもかかわらず、内部統制報告書において重要な不備が開示されていなかったケースが存在することを示唆しており、内部統制報告制度及び内部統制監査制度の信頼性が問われかねない。」という本制度の抱える基本問題を改めて指摘したことは非常に重要です。Ⅴにおいて、形骸化、形式化の実態と問題点がかなり詳しく述べられていることと併せ、一歩踏み込んだ分析として高く評価したいと思います。
ただ小生としてやや不満なのは、①制度そのものの持つ問題点、②監査役の果たすべき役割に僅かしか言及がないことですが、これは協会という立場と運用の分析と改善点の提示という本報告のスコープからくる制約として、已むを得ないのかも知れません。
いずれにしても、本報告が公認会計士のみならず金融庁、企業関係者、監査役、研究者の間で広く検討されて、本制度の在り方に関する議論が活性化することを大いに期待しています。
投稿: いたさん | 2018年4月29日 (日) 21時33分
いたさん様、いつも有益な情報、ありがとうございます。ご指摘の訂正報告書の課題は、私が6~7年ほど前から問題としてブログでも指摘してきたところであり、真正面から取り上げられるようになったことはたいへんうれしく思います。もちろんだからといってすぐに解決する話ではありませんが、おそらく今後は問題点を多くの方が共有でき、有能な方による解決方針も出てくるかもしれません。まだきちんと読んでおりませんが、またブログで取り上げたいと思います。
投稿: toshi | 2018年4月30日 (月) 00時57分