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2018年4月 6日 (金)

もはや「なんちゃってコンプライ」ではすまされない「ガバナンス・コード改訂版への対応」

(4月6日 午後追記あり)

毎日、調査委員会のヒアリング準備に追われておりまして、まともなエントリーが書けておりませんが、3月30日に公開されましたコーポレートガバナンス・コード改訂(案)をようやく読みましたので、ひとことだけコメントさせていただきます。私の個人的な印象は、タイトルのとおり「ガバナンス改革の深化が進み、もはや『なんちゃってコンプライ』ではすまなくなるぞ!」というもの。

2015年に施行されたガバナンス・コードについては、多くの上場会社がホンネとタテマエを使い分け、「コンプライ」といいながら、実際には面従腹背、後ろを向いて舌をペロッと出しているというのが実際のところではないでしょうか。そんな日本の上場会社の「なんちゃってコンプライ」に終止符を打つべく、今回の改訂が実施されるものと思われます(正式施行は6月が予定されています)。

まずなんといっても「CEOの後継者計画の実施と、選解任プロセス透明化のための指名委員会の設置」です。後継者選任プロセスに独立社外取締役がどのように関わるのか、きちんと方針を開示している会社は少ないですし、きちんと運用しておられる会社はさらに少ないと思います。

つぎに「取締役会における取締役報酬の具体的な決定」ですね。こちらも報酬決定の透明性が求められていますので、報酬委員会による個別取締役の報酬決定が要請されています(文面では「個別」とは記載されていませんが、個別でなければ意味ないですよね)。役員報酬はインセンティブ報酬のほうが話題になりますが、こちらもキツイです。これ、ホントに上場会社で実施されるのでしょうかね?それとも正直に「できません、なぜなら・・・」とエクスプレインされるのでしょうか。

さらに「内部留保の取り崩し(健全なリスクテイク)」です。これまで、上場会社の内部留保については「将来の投資に迅速に対応できるよう手元流動性が必要なため」と説明していましたが、これからは「アンタ、なにゆうてまんねん!」ということになりそうです。「事業リスクを的確に把握したうえでの事業ポートフォリオの見直し」が要請されていますので、手元資金(内部留保)をどの程度確保しておくのか、その合理的な理由を示さなければ「資本コストを意識していない経営者」と烙印を押されてしまうわけで、これもキツイです。

(追記)4月6日の日経朝刊19面に「自社株の買い越し1.3兆円 企業、市場に資金返却」なる見出し記事を見つけました。「企業統治強化の流れの中で、経営者が株主に報いる姿勢を強めている」とありますが、手元資金の有効活用を求める投資家の要望が企業行動に及ぼす影響は大きくなりつつあります。

そして「政策保有株式の縮減」です。株式の持ち合いは「サラリーマン経営者がリスクをとらずに自社の議決権を保有している状態」という見方が強いです。オーナー経営者であれば株主と経営者の利害が一致しますが、サラリーマン経営者の場合には利益相反状況です。だからこそ、サラリーマン経営者の会社にはインセンティブ報酬制度の導入が強く求められていますが、なんといってもリスクをとらず、資本コストも意識しない経営は許されない、という機関投資家の意見が強くなっているので、今後どう解消していくべきか、コンプライする以上はその道筋を明らかにしなければならないと思います。

以上、思いつくままにコメントしましたが、ガバナンス・コード対応には「ホンネとタテマエ」の使い分けは許されないと考えます。本気で対応するか(コードの趣旨に沿った形で運用するか)、さもなくば堂々と「コードには従いません、なぜなら・・・」と言い切るか、御社の選択肢は二つに一つだと思います。ちなみに英国版ガバナンス・コードが2016年に改訂されていますが、「当社は日本版には従わない、ただし個々の企業文化を重視する英国版には従っている」といった理由もありかな…などと考えています(そもそも日本版コードは英国版コードに従っているのでしょうか?従っていないのであれば、その理由を示していただきたいものです)。

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コメント

 「内部留保の取り崩し(健全なリスクテイク)」です。これまで、上場会社の内部留保については「将来の投資に迅速に対応できるよう手元流動性が必要なため」については、確かに、金融機関からの借入金利が低い中、また、上場していて資本市場から資金調達ができる中、説明がつきにくいですよね。
 また、資本コストの関係も、厳しい指摘かと。未だに、多額の手許現金やグループファイナンスなど、資本効率を悪化させることに平気な方も少なくないでしょう。

投稿: unknown1 | 2018年4月 6日 (金) 14時23分

コーポレートガバナンス・コード改訂パブコメ募集については4月13日の日弁連公開講座「社外取締役が促す攻めと守りのコーポレート・ガバナンス」で知りました。
本日4月18日の内閣府消費者委員会「第12回公益通報者保護専門調査会」においては参考資料4として、消費者庁が昨日17日付けで日本取引所グループに提出した「コーポレートガバナンス・コードの改訂に係る意見」が配布されました。
これまでの前記専門調査会で、内部通報制度に関する消費者庁の取り組みや日本取引所「上場企業における不祥事予防のプリンシプル」についての審議もあった中で、CGコード(原則2-5)(補充原則2-5)、いわゆる内部通報制度に関する原則の具体的な〈修正案〉も示された意見でした。
くどいようですが(原則2-5)(補充原則2-5)については山口先生の著書「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」の第1章にも特記されており、私も繰り返し読み返しています。
本日の専門調査会でも座長代理が「形だけのものでなく実効的な内部通報制度」というキーワード(絶対的なキーワードだと思います)を発していました。
「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」の第7章3項、通報者の気持ちを斟酌する-「仏作って魂入れず」にならないために、の文言がゴールの見えない永遠のテーマにならない社会を望み、私も微力ながら通報当時者として頑張ります。
仏様、もう少し我慢して下さい。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年4月18日 (水) 21時15分

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