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2018年4月10日 (火)

会計監査人、内部告発者に参考となるエフオーアイ事件高裁判決

今年の3月23日に東京高裁で言渡されたエフオーアイ事件控訴審判決の速報版は3月26日付けエントリーで書きましたが、ある事件関係者の方から「研究資料にしてください」ということで判決全文を頂戴いたしました(どうもありがとうございます<m(__)m>)。一審で敗訴したエフ社の監査役と元引受証券会社が実質的に控訴をしていましたが、監査役さんの控訴については棄却、元引受証券会社さんの控訴については逆転で責任(損害賠償責任)が否定されるという結論になっています。

元引受証券会社の責任を否定した判決理由部分をザックリまとめますと、

引受審査の場面においては、元引受証券会社は企業会計及び会計監査の専門家である公認会計士等と同等の作業を重畳的に実施させる実益は乏しく、専門家との合理的な役割分担の下で効果的な審査の実現を図るのが金商法の趣旨であると解される

監査結果の信頼性に疑義を生じさせるような事情が判明した場合、元引受証券会社は、自ら財務情報の正確性について公認会計士等と同様に実証的な方法で直接調査する義務はなく、一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意を用いて監査結果に関する信頼性についての疑義が払しょくされたと合理的に判断できるか否かを確認するために必要な限度で追加調査を実施すれば足りると解すべきである

財務情報には明らかに不自然点があり、二度にわたる内部告発が元引受証券会社に届いたのであるが、元引受証券会社としては、公認会計士等による監査結果に関する信頼性に疑義が生じた場合に該当するものとして、一定の追加調査を行っており、それは通常要求される程度の調査を行ったと評価される。よって「相当な注意を用いた」といえる、つまり元引受証券会社には過失はない

といった論旨です(元引受証券会社の主張に対しては、高裁はかなり詳細に理由を述べているので、興味のある方はぜひ判決全文をお読みください)。会計監査人の監査結果への信頼・・という点が、元引受証券会社の免責の根拠として重視されています(いわゆる「信頼の原則」の適用。なお金商法21条1項4号、17条の解釈あり)。本判決の結論からみると、財務情報に違和感のある場合はもちろんですが、それ以外、たとえば内部告発が会計監査人に届いた場合などにも、会計監査人の注意義務違反、善管注意義務違反の有無が慎重に判断されるものと思われます。エフオーアイ事件訴訟では、会計監査人は早々に和解をされたようですが、監査法人(会計監査人)には(行為規範を考える上で)おススメの判決ではないかと。

なお、本判決を詳細に読みますと、内部告発の工夫次第では元引受証券会社をかなり追い詰めることもできそうですね(まぁ、今回もかなり追い詰められたわけですが・・・)。会計監査人や元引受証券会社、さらには取引所に対して深度ある調査を求めたいのであれば、内部告発人としては告発文書の書き方に注意をすべきと感じました(そういえば先日のイビデングループ・セクハラ最高裁判決でも、「通報者が何を会社に要求していたのか」ということが論点になっていました。あまり詳しくはここで論じることはしませんが、内部通報や内部告発にもコンプライアンスに精通した代理人が就くことが重要かもしれません)。

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コメント

論点がズレてしまいますが、
上場審査段階で身を挺して匿名通報した従業員の通報内容が事実であったことを踏まえれば、まさに公益通報であったと思います。
エフ社経営者らは、公益通報者と目星をつけた内部監査従業員を精神不安定者として処遇したようです。
エフ社の案件から得られた教訓は、何だったのか。粉飾経営に甘い法令規制のままで良いのでしょうか。
通報を生かせなかったどころか、見殺しにしてしまった東証自主規制法人や検察、主幹事証券監査役と審査部は再発防止に向けてどのような取り組みをされるのか、大変興味深いところです。
内部告発と公益通報では語感が全く違うように思います。

投稿: たか | 2018年4月11日 (水) 22時24分

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