神鋼グループ・品質データ偽装事件-刑事立件の可能性
皆様すでにご承知のとおり、本日(4月25日)、神戸製鋼さんがデータ偽装事件について東京地検特捜部、警視庁の合同捜査を受けていることが明らかになりました(神鋼さん自身もHPで事実関係を認めております)。
3月6日に神戸製鋼さんが「当社グループにおける不適切行為に関する報告書」をリリースして以来、私は本件については(報告書はきちんと読了しておりましたが)全く関連エントリーを書いておりませんでした。といいますのも、後だしジャンケンのように思われるかもしれませんが、「これは刑事立件の可能性があるなぁ」と感じていたからです(一部講演等ではコメントとして申し上げておりましたが・・・)。
私がそのように推測していた理由は、3月6日の神鋼さんの報告書が調査委員会の報告書ではなかったからです。公開されたものは、第三者による報告書を神鋼さんが要約してまとめ直したものなので、取引先を含めたステイクホルダーにとって、客観的な事実関係はわからないままとなってしまいました。たとえばデータ偽装行為に関する不正競争法防止法違反の該当性について、開示を拒否したことで民事の問題で解決される道が絶たれ、あとは刑事問題として解決するしか方法がないように思いました。刑事事件として取り扱う以上、上層部の主観的な認識が焦点となることはやむをえませんが、本来明らかにされるべき組織としての構造的な欠陥に光をあてるには刑事立件の可能性が高まるように思います。
私自身は、昨年10月17日のエントリー「神鋼品質データ偽装事件は不正行為か不適切行為か?」で述べたように、「不適切行為」ではなく「不正行為(不正競争防止法違反もしくは詐欺)」と指摘しておりましたが、品質偽装問題は、サプライチェーンにおける自浄作用(たとえば取引先との間では不正競争防止法違反による損害賠償請求訴訟による解決)が機能することを条件として、刑事立件はないと考えていました。しかし、神鋼さんは海外の司法当局の訴追をおそれて第三者委員会報告書を開示しないという決断をとりましたので、その判断については否定はしませんが、その分、今度は国内における刑事訴追リスクが高まるのではないか、と予想されたところです。
実は3月6日の報告書では、私としては「明らかにされるべき3つのポイント」が、まったく明らかにされていないと考えています。その「3つ」が明らかにされなければ、神鋼さんのデータ偽装がなぜ今頃発覚するに至ったのか、その「根本原因」には迫れないと考えています。その3つのポイントというのはまた別途エントリーさせていただくか、もしくは(時間がなければ)講演等で明らかにしたいと思います。
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