内部通報制度の認証制導入に期待する
消費者庁公益通報者保護制度の実効性向上検討会報告書において提言されていました「内部通報制度の認証制度」ですが、5月12日の日経朝刊一面で「今年の9月ころに実施される予定」と報じられていました(サンダースさんがコメント欄でご紹介されているので、私も少しだけ書かせていただきます)。民間事業者による自主的な取組を促進するための施策として、消費者庁でも検討されてきた制度ですね。ISOでも新たな指針として検討されているそうです(これは知りませんでした)。
この制度は、消費者庁による民間事業者向けガイドラインを参考に、実効性の高い内部通報制度を整備して、コンプライアンス経営の推進に積極的に活用する企業を認証する、というものです。民間の第三者評価機関が、40項目程度の審査基準をもとに評価・認証するようですね。認証を受けた民間事業者側は、取得を積極的にアピールすることで、自浄能力の高さ、製品やサービスの安全性を社会に広報していただくことを想定しています。
ここからは私の個人的な意見ですが、この認証制度が大企業向けなのか、というとそうではなく、中小企業にも認証の機会を付与すべき、ということです。民間事業者向けガイドラインは、小さな事業者でも参考にしていただくことを念頭に置いていますので、中小企業の実情も踏まえて、前向きに取り組んでいる事業者の方々も認証される資格はあるはずです。なので、認証評価基準の運用は弾力的であるべきです。
つぎに、いったん認証を受けた後に「ほったらかし」では意味がない、という点です。継続研修制度や認証更新制として、整備よりも運用を重視した認証制度にすべきです。認証を受けたにもかかわらず、不正が起きたから認証取消し・・・といったものではなく、たとえ不正が起きたとしても自浄能力を発揮することに寄与すれば「優れた制度」として認められるべきですし、また形だけ整備していたとしても、実際に運用されている形跡がみられない、ということでしたら認証を取り消す、といった仕組みが必要かと思います。
そして最後になりますが、認証を受けた企業の取組みを、できるだけ公共財として周知すべきです。とくに、中小企業の内部通報制度については創育工夫の余地が多いはずです。様々なアイデアで優れた内部通報制度を整備・運用している事業者がいらっしゃれば、できるだけ他社の参考にもしていただければと。なお、老婆心ながら、(制度が実施される前に)行政法に詳しい方に、こういった認証の付与、取消といったことの法的性質について、きっちり学んでおいたほうが良いかなぁと思いますね。
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コメント
第三者認証制度も、ISO9001や14001などは認証に係るコストを認証申請をする事業者が負担しています。同様のコスト負担の仕組みでコンプライアンス関連の第三者認証の信頼性が担保されるか疑問があります。
今までの第三者認証制度の運用の中で、三菱自動車の死亡事故品質問題隠遮や大規模漏個人情報洩発生時のPマーク認証継続などを見ていると、制度運営のコストを誰が負担するのかが肝のような気がします。
投稿: 楡杞 | 2018年5月16日 (水) 09時15分
5月12日の日経も14日の消費者庁HPの認証制度(報告)も、まだ読んでいなくて申し訳ないのですが、本日16日の「第13回公益通報者保護専門調査会」でも、委員の方から12日の報道に関する発言がありました。
一方、今回は通報に関する秘密の保護「守秘義務を課すこと」の議論が興味深かったのですが、ある委員から「通報窓口担当者の心理を慮ると、通報者の秘密を守るため(通報者の特定を心配して)調査をためらってしまう懸念」が発せれらました。
これを聴いたとき、すぐに頭に浮かんだのは「通報者が不利益・報復を心配して通報をためらう」ことと表裏一体だな。。。ということです。
数分後に別の委員から「(秘密が守られないと)通報者が通報をためらう」心配意見が出たので、考えることは同じだなと思いました。
今回、全体的に感じたのは、法律で細かい義務まで規定しても実際には対応できないという意見と、そうは言っても根本的に通報者の人権に関わる部分は通報窓口に義務が必要という意見が、寄せては返す波のように打ち返すという、いわゆる周波数の違う「波動」が生じているということです。
どちらが正しくて、どちらが間違っているということではなく、周波数がそれぞれ異なるので「同調」することは難しく、なおかつお互いに「同調圧力」を掛けてはいけないということだと思います。
そもそも長年に渡る不正というものは、通報者に「同調圧力」を掛けることで隠蔽をはかることが多いので、同じことをしては身も蓋も(表も裏も)あったもんじゃありません。
また事業者の窓口や外部通報窓口を代表する委員から「通報者に、調査を進めるため氏名を明かしてよいか」と同意を求めると「ほぼ返答がない」とのことで、「上司の誰それにこういうことをされた」という通報の場合は「もう手の打ちようがない」とのことでした。
それでも事業者としては「調査を進めたい」のが本音であると明かされ、これがホントなら「調査を進めたい」という事業者の態度自体は素晴らしいことだと感心しました(感心したのはホントです)。
投稿: 試行錯誤者 | 2018年5月16日 (水) 21時18分