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2018年6月21日 (木)

社外取締役への企業の支援策を語るのはタブー?

本日(6月20日)は、関経連さんのお招きで、昨年9月1日に続き「最近の事例から考える企業不祥事の予防策-東証『企業不祥事予防のプリンシプル』の解説を中心に」と題する講演をさせていただきました(100名以上の会員企業の皆様にお越しいただき、ありがとうございました)。企業不祥事予防に向けての経営層の皆様の関心の高さを、あらためて痛感した次第です。終了後は企業法制委員会の皆様と意見交換をさせていただき、また、有益な意見も頂戴しました。

さて、6月18日の日経朝刊「私見卓見」では、経営コンサルタントの方による「社外取締役への支援手厚く」と題する小稿が掲載され、興味深く拝読いたしました。上場会社では社外取締役が増えており、企業統治の決め手となるものと評価されていますが、では社外取締役への支援は十分だろうか・・・といった疑問を述べておられます。会社と社外取締役との関係は一様には決められないものの、経営執行部の業務執行を批判的に検証し、場合によって対立することもあるのに、そのような場面を想定した社外取締役への支援体制がきちんと図られることが重要とのこと。

私もまったく同感です。会社と社外役員が対立することは決して好ましいことではありませんが、対立する可能性を想定して社内における情報収集や専門家との相談体制などを平時から取り決めておくことは当然ではないでしょうか。ちなみにコーポレートガバナンス・コードの補充原則3-2(ⅳ)では、「外部会計監査人が不正を発見し、適切な対応を求めた場合や、不備、問題点を指摘した場合の会社側の対応体制の確立」が要請されており、ほとんどの上場会社がこれをコンプライしているにもかかわらず、具体的な対応体制を詳細に開示している例はほとんどないと思います。また、このたびの会社法改正で審議されている社外取締役への「業務執行の委任」についても、取締役会での包括的な業務執行の委任が求められますので、社外取締役が経営執行部と対立する場面は想定されていないものと思われます。

本気で社外取締役を活用する気持ちがあるならば、会社にとって不都合な事実や不都合な意見を歓迎する意思を担保する仕組みが必要があると考えます。具体的には、上記私見卓見で論者が述べておられるような費用負担の仕組みです(なお、監査を担当する社外取締役さんや監査役さんについては制度的に担保されていますが、実際には「職務執行に必要と思われる相当額」が補償されるだけであり、相当性に関して会社と対立すれば、たとえ社外役員が必要と思っても補償されません)。

以前、このブログでも書きましたが、私もこのたびの会社法改正審議において、日弁連を通じて「監査役、取締役による株主総会検査役選任権」の創設を提案しましたが、法務省側では「検査役の報酬を誰が負担するのか明確ではないうえに、法改正が必要なほどに立法事実が認められない」ということで俎上にも挙げてもらえませんでした。

社外取締役さんが「健全なリスクテイク」のために意見を述べたり、不正リスクを管理するための意見を述べるためには、経営執行部と対立してでも審議を尽くす必要があるはずです。しかし、(調査や専門家委任に関する)費用面での支援がないとすると、会社側から出される情報だけで議論をするしか方法がないわけで、果たしてそれで社外役員としての役割が果たせるだろうか、との疑念を拭えません。というよりも、会社と摩擦を起こさない「空気が読める」社外役員が必要とされているのが現実であり、「有事のための社外役員支援制度」を平時に取り決め、これを開示する、といったことは(上記補充原則3-2と同様に)実際にはタブー視されているのではないでしょうか。

結局のところ、物分かりのよい社外役員さんは、会社と合わない場合には退任することで会社と円満解決に至るわけですが、その円満解決はガバナンス改革の進む中で抬頭してきた機関投資家の期待通りの行動となるのかどうか。第三者委員会委員のように、ステイクホルダーの利益保護を目的として中立公正な立場で会社業務を支援する専門家も出現している時代となり、もうそろそろ「社外取締役への支援問題」をタブー視するのをやめて、真剣に議論すべき時に来ているのではないかと思います。

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コメント

山口先生

突然のご連絡をさせて頂きます。過日の、日経「私見卓見」での拙稿にご言及頂き有難うございます。

現在、M&Aを中心にコンサルタントをしながら、某海外(スリランカ)上場会社の社外独立取締役をしつつ、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程で会社法の研究をしております。昨年度まで、中央大学大学院国際会計研究科で「M&Aとガバナンス」の兼任講師をしておりました。

社外取締役は、その独立性や専門性を失わず、建設的かつ批判的に、会社執行部と向き合っていくことができれば、会社ガバナンスに実効的に貢献することができるように思います。そのためには、単なる社外取締役の人数の多寡ではなく、執行部による具体的な制度的支援が重要で、その他に、社外取締役に相応しい人材の開拓・育成も重要だと思います。

とりあえず、ご挨拶かたがたお礼を申しあげます。

四方藤治

投稿: 四方藤治 | 2018年7月 2日 (月) 00時05分

四方様 ご丁寧にありがとうございます。
私も同感です。企業のなかには、社外役員の教育に力を入れ始めているところも出てきました。ただ、厳しい意見を言える人こそ、本当は社外役員にふさわしいのに、別の会社からオファーが来なくなるために、言わない人も多いようです。社外役員にふさわしい人材の「見える化」のような作業も必要ではないか、と考えております。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2018年7月 4日 (水) 17時47分

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