会社法の過料(行政罰)を刑事罰に引き上げることの是非について
今週月曜日(6月4日)、日本公認会計士協会の某委員会の皆様と、2時間ほど(公式な)意見交換をさせていただきました。意見交換といいましても、実質は私がヒアリングを受ける・・・というものでしたが、私自身もたいへん勉強になりました。
ヒアリングの内容については(ご迷惑になるかもしれませんので)書けませんが、議論の途中で感じたのが会社法の過料規定に関する素朴な疑問です。これだけ会計監査人の「公益の番人」たる役割が期待される時代となり、企業と株主との建設的な対話が求められる時代になったにもかかわらず、ディスクロージャーに関連する違反行為が過料(秩序罰)のまま会社法の中に残っているのはいかがなものでしょうか。
たしかに会社法は小さな株式会社にも適用される法律なので、大きな上場会社を基準に検討することはできません。しかし、過料の対象となっている違反行為の中には、情報開示に関連するようなものが含まれており、違反行為の悪質性からみれば刑事罰に値するものも多いように思います。とりわけ会計監査人への報告義務違反や調査妨害といった行為は、欧米諸国では当然に刑事罰が規定されているのですが、日本の会社法では過料としての罰則規定があるだけで、その制裁としての実効性がほとんどありません。今こそ過料という秩序罰の一部について、刑事罰に格上げすべく法改正が必要ではないでしょうか。このあたりの「社会的な合意形成」はある程度はなされていると思うのです。
会社関係者の「行為規範」に関連するところなので金商法の改正ではなしえないと思われますし、やはりこのあたりは会社法改正で対応すべき課題ではないかと。不正リスク対応監査基準の新設、違法行為への対応に関連する会計監査人の倫理規定の改訂などにより、会計監査人の行為規範については改訂が進むなかで、会計監査人と向き合う会社関係者の行為規範(およびその実効性担保の手段)についてもそろそろ抜本的な改訂が必要ではないかと考えるところです。
| 固定リンク
コメント
株主総会招集通知には立派なガバナンス体制が各社書いてありますが、経営者不正が明らかになった各社でも一律に立派な記載内容であったりするように感じます。
刑事罰でなければ公益通報者保護法の対象ではないようですし、ここは急ぎ改正していただかなければならないと思います。
投稿: たか | 2018年6月11日 (月) 08時33分