今後検討されるスチュワードシップ・コードにおける法律的論点
本日(6月25日)の朝日新聞朝刊一面に、機関投資家の圧力によって企業のガバナンスがじわりと変わってきていることを紹介する記事が掲載されていました。株主総会のピークとなり、株主提案への賛成率が、機関投資家の賛同によって高まっていることも報じられています。政府主導のガバナンス改革の効果が6月総会にもはっきりと出ているようです。
ガバナンス改革を支える機関投資家の行動規範としてはスチュワードシップ・コードが挙げられますし、今後は機関投資家と企業との対話の機会も増えると思いますが、上記記事のように、会社の経営や支配に機関投資家の影響力が高まるにつれて注目されるのは、「機関投資家の適切な行動をどうやって規律していくか」、つまりスチュワードシップ・コードにおける法律的論点の研究だと思われます。
先日も「次号が楽しみ」とご紹介しましたが、判例時報の最新号(2367号)に、元高裁判事でいらっしゃる鬼頭季郎弁護士の「企業間ビジネス紛争及び会社組織紛争に関する裁判の運営上の諸問題-企業法務の訴訟弁護士及び裁判官のために(2)」なるご論稿が掲載されています。そこでは「機関投資家の行為規範における法律的論点」に光が当てられており、とても参考になります。ご論稿では、日本の裁判所における経営判断原則適用における諸問題についても勉強になりましたが、会社を取り巻く力学的変動の中で「当事者の衡平上の視点から」浮上してくるような法律問題が論じられるのは刺激的で、やはり一番楽しいですね。
そういえば、神田秀樹先生と上村達男先生の対談「座談会-金商法と会社法の将来-再び、公開会社法を巡って-」(資料版・商事法務2018年3月号)も、「株主主権」とか「経済合理性を有する無色透明な株主」を想定する法制ではなく、適用される地域、国ごとに「市民としての投資家」「倫理観を持った投資家」を想定した市場ルールの在り方を探るというスケールの大きなお話が「公開会社法」を中心に展開されていました。機関投資家がコーポレートガバナンスの一翼を担う役割が強くなるのであれば、「企業との対話」「企業による情報開示」「株主による共益権の行使」においても、最終目的である「企業の中長期的な持続的成長」のために、株主がどのように企業と関わりあうのか、という点にも法律的な視点が必要になることを感じました。
私のような凡人の頭では、法律家は「守りのガバナンス」の領域ではモノが言えるが、「攻めのガバナンス」の領域では法律的思考は無用(役に立たない)、といった先験的な認識に至るわけです。しかしながら、実際には機関投資家の抬頭が進む中で、新たな法律問題が次々と発生するわけでして、鬼頭先生の上記ご論稿の言葉をお借りするのであれば「(法律的論点が浮上する前に)企業法務弁護士や裁判官にとって先回りして研究しておくべき」ということになるのでしょうね。
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