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2018年6月18日 (月)

グループ会社ガバナンス-海外子会社管理は各社各様

6月18日(月)の日経法務面でも海外拠点における不正調査に関連する特集記事が掲載されているようです。不正リスクだけに限られませんが、グループ会社ガバナンス、とりわけ海外グループ会社の経営管理については、事業戦略として多くの会社で関心事になっていますね。

そういった意味で、6月8日の日経朝刊に掲載されていた「損保の海外統治 三者三様」なる見出しの記事はたいへん興味深いものでした。日本の損害保険大手3グループの海外事業の統治戦略の違いが際立っている、とのことで、各社の将来における収益力を左右する海外統治に各社が工夫をこらしている状況が紹介されていました。そこで、上記記事をもとに、各社トップのコメントも含めて、記事の内容を下記のとおり図表にまとめてみました。

Kaigaisonpo

日本の多くの企業でも、海外グループ会社の経営管理については、上記の3つの選択肢の中で悩んでおられるケースが多いのではないでしょうか。また、上記の分類はあくまでも一般論であり、現実には海外グループ会社の個社固有の事情(たとえば外国人トップなのか、少数株主は存在するのか、地域統括会社は存在するのか等)によってもっと細分化された管理が必要になってきますね。

健全なリスクテイクが求められる時代なので、SOMPOさんのように海外グループ会社への権限移譲ということも検討されて当然かと思いますが、「攻め」と「守り」の長所・短所は認識しておく必要があるように思います。これは行動経済学からの視点ですが、期待値が同じであるにもかかわらず、現状に留まっていては損失を被ることが確実な場合、人はリスク志向型となります。反対に、現状がうまくいっているが、さらに業績を上げたいと考える場合には「現状維持バイアス」がはたらいてリスク回避型となる傾向があります。

東芝事件が連日新聞を賑わせていた際、「チャレンジ」という言葉が流行しました。「このままでは東芝は将来がない」という意識のなかで「チャレンジ」と言われれば「不正がばれないことに賭けてでも会計不正に手を染めてしまう」ことが考えられます。当時、他社の経営者の方が「チャレンジ」という言葉は自分でも使うことがある、とおっしゃっていましたが、その「チャレンジ」は現状維持でも問題ないが、10年後の会社の将来のためにリスクをとろうとすることを念頭に置かれていたのではないかと(つまりそこで語る「チャレンジ」は東芝で出てきた状況とは異なります)。そのような状況での「チャレンジ」には、危険を冒してまで不正に手を染めようとの動機は、あまり役職員の間では生まれないですね。

いっぽう東京海上さんやMS&ADさんのように本社が手綱はガッチリ握って管理する、というケースも多いと思いますが、その場合には本社における(海外グループ会社管理に関する)権限と責任の明確化を図る必要があります。海外グループ会社の外国人トップからよく聞かれる不満が「日本本社の誰の指示を信用してよいのかわからない」というものです。事業部門の担当役員なのか、地域統括会社のトップなのか、それとも本社コーポレート部門の責任者なのか、ということです。なので、海外戦略のスピードが遅くなりますし、誰もリスクをとりたがらず、「健全なリスクテイク」が期待できない状況になります。

一口に「健全なリスクテイク」といいますが、グループ会社管理においては、そもそもリスクテイクができない組織になってしまうおそれもありますし、不確実性の期待値が同じ場合であったとしても、これを経営トップがどのように社員に説明するかによってバイアスの働き方が変わり、不正リスクにも影響を及ぼす可能性があることを知っておくべきではないかと考えます。

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コメント

昭和48年に上映された「日本沈没」という映画を劇場で観た世代です。
終盤では主人公や、生き延びて海外脱出した人達が、世界各地に生活の場を求めて移動するシーンが続きます。

地震多発の国で生育し就労し、構築してきた有形無形の財産を、(承継も含め)災害/損失から回避するという事・・・大袈裟ながら、究極のリスクマネジメントの一つではないかと思っています。
(海外をイメージしつつ)日本国土における、財務諸表/IR評価における「土地」とは何か?と考えています。大きな地震が(それにしても、何故日本は震度表示に固執するのか?マグニチュード値の加味/積算のリスクマネジメントに進展しないのが不思議/機会あれば提唱したいぐらい)発生する度にふと、考えます。
(被害妄想が過ぎたら、ご容赦願います)

企業会計では、人的貢献度対価は人件費として処理されますが、資産計上はされず、財産とみなされない…。有能か否か…ダイバーシティ的な面を含め、個人差こそあれ「継続は力なり」「生きててナンボ(関西表現?)」かと思っています。
有能な人材ほど、生産性の高いポストで活躍させるのが経営責務の一つと思います。
しかし当の本人が、好ポジションなのに、度を越すチャレンジや視野の狭い安定思考、保身に偏向すると、組織のブランドイメージという財産の崩壊になる恐れがあるのでは?と、ドイツ/アウディ社の現役社長逮捕の報道から、感じました。

日本では「クルマの耐久レース」の類に多大な社会文化的価値を見出す習慣が希薄ですが、ディーゼルエンジンの可能性にチャレンジして多大な栄光/記録を樹立してきたアウディ社でしたが、親会社=VW社の不正もあって(?)数年前に耐久レースから撤退。「ルールから巧みに逸脱しての、これまで勝ち得た栄光では?」と揶揄されない状況下です。
今年はTOYOTA社が念願の「ル・マン24時間耐久レース」で総合優勝を果たしました。代表の豊田氏に恨みがある訳ではありませんが、TOYOTA社もかつてラリーの世界で「永久追放に近い処罰」を受けた事がありますし・・・老婆心/僭越ながら、日本企業のトップでもある方の逮捕劇にならない事を切に願っております…。

リスクに対する「攻め」「守り」のバランスと、セキュリティー視点の再考…。
某書物からの引用で恐縮ですが、
「セキュリティーに自信をもつのは勝手だが、いかなる守りも、管理者が自信を持ち過ぎたその瞬間から、崩壊が始まるものだ・・・」というセリフに考えさせられています…。

富裕層でない限り、収支バランス上での保険加入は不可欠ですが、近年特に変化拡大傾向にある、保険商品からベストチョイスを下すのに、毎度悩まされています。
今も大地が揺れ動いている様な気分:部屋の中で…。

(長文になり大変恐縮です。又コメントの最後にもなり大変恐縮ですが、ご理解頂ければ幸甚です。)

大阪北地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。

投稿: にこらうす | 2018年6月19日 (火) 08時07分

海外子会社の統制での葛藤は、規制の強い金融セクターの場合、本社の命令という実質とローカルの規制環境への対応との間にあります。社内のモニタリング機能は苦労させられますね!

投稿: Qchan | 2018年6月19日 (火) 18時44分

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