« 魅力のある経営者OBは「社外取締役」の器に収まらないのでは? | トップページ | 企業法務弁護士は「裁判官リスク」とどう向き合うべきか? »

2018年6月 4日 (月)

企業経営者において不正リスクへの意識高まる-経済同友会調査

公益社団法人経済同友会が5月にリリースした「社外取締役の機能強化-3つの心構え・5つの行動」を読みました。会員企業や社外役員の皆様への調査結果に基づく提言でして、題名からは「社外役員に関する調査」のように読めますが、コンプライアンス問題への調査・提言も含まれています(タイトルから、マスコミでもガバナンス関連の課題だけが取り上げられているようです。たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。

コンプライアンス関連で興味を抱いたのが、経営者の皆様の不正リスクへの関心です。2005年の調査時には「当社には何らかの不正行為があると考えるべきである」と回答された経営者がわずか0.8%にすぎなかったのですが、今回(2017年)の調査では約18%に上った、とのこと。どこへ招かれても「残念ながら御社でも不正は起きます」と断言している私にとりましては、まだまだ少ない数字ではあります。しかしながら、ようやく「平時から有事を想定する」という思想が、少しずつではありますが、企業に浸透していることは間違いないと思います。

「平時から有事を想定する」というのは、平時から謝罪会見の稽古をしておくとか、敵対的株主とのIRを準備する、といったものではございません。要は有事になってもファンでありつづけてくれるステイクホルダーとの信頼関係を築くことが挙げられます。また、会社法や金商法の定める手続きには正義に適った合理的な目的がありますので、日ごろから意思決定のプロセスをきちんと履践する、といったことも含みます。有事になってからの「有事対応、危機管理」には、どんなに専門家に任せても限界があるわけでして、到底、企業が平時から履践している「有事対応、危機管理」には叶いません。その大切さを実感するためには、やはり平時から「何らかの不正行為はあると考えるべき」だと思います。

なお、上記経済同友会の提言では、もうひとつコンプライアンス関連の興味深い調査結果が掲載されておりまして、企業不祥事の原因はどこにあると考えるか、といった問いに対して「従業員のコンプライアンス意識の低さ」と回答した経営者の方が、2005年当時は12%でしたが、今回の調査ではなんと60%に上ったそうです。上記提言では、このギャップについて「経営者による従業員や現場への責任転嫁の傾向が読み取れ、経営者のコンプライアンスに関する意識やリーダーシップが不足しているのではないか」と指摘しています。

このあたりは、むしろ経営者の方々のコンプライアンス意識が高まっているからこそ、(ご自身の意識と比較して)不祥事の原因を現場従業員の意識に起因するものと考えているのではないでしょうか。そうであるならば、一番の問題は経営者の意識と現場の意識とのギャップであり、認識の壁を作っている組織風土の問題に帰着すると思います。とりわけ、私自身の不正調査の経験からすると、いわゆる「経営幹部、中間管理層」のコンプライアンス意識がすべてではないかと。ここは意見の相違もあると思いますが、経営者が現場に出向くのは、この経営幹部、中間管理層の意識を変えること(仕事における優先順位を変えること)に意味があると考えています。たとえば「働き方改革」によって形式的なコンプライアンス重視の姿勢を貫き、その結果として一番悲惨な状況にあるのが中間管理層と言われています。組織のファジーな部分を中間管理層の方々が背負うのであれば、「なにがコンプライアンスだ」と思われても仕方ないと思います。経営トップが現場に赴く理由はここにあります。

とりわけコンプライアンスやCSRという、「すぐに利益につながらない職務」については現場における権限と責任の明確化が必要です。経営トップが現場に赴くことで、誰が権限と責任を持つのか、現場組織において事業遂行上の優先順位が確認されることが重要だと思います。

|
|

« 魅力のある経営者OBは「社外取締役」の器に収まらないのでは? | トップページ | 企業法務弁護士は「裁判官リスク」とどう向き合うべきか? »

コメント

5月22日付けの経済同友会発表によると、YouTubeで提言の動画も配信されているようです。
私、【社外取締役】【コーポレートガバナンス・コード】に【公益通報者保護】を関連付けて試行錯誤しているため、経済同友会の方に5月22日の発表について電話して、上記3つの【】に関する意見を提出したいと問い合わせたところ、丸の内に持参して提出してもよいと回答されました。

ここで6月6日(水)の消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」に話を移しますが、同日の会議では【消費者保護】と【公益通報者保護】の繋がりについての議論もあり、多数の委員から消費者基本計画に掲載されている「公益通報者保護推進」についての意見も出ました。
消費者庁からは本年の内閣府消費者委員会への諮問についての説明もなされ、会議終了後に岡村長官が委員に「しっかりやっていく」旨、話されていました。
消費者委員会の「第14回公益通報者保護専門調査会」では、行政通報一元窓口を設けて、消費者庁が窓口担当することについて全委員が賛同し、システムや詳細運用について活発な意見が出ていました。

内閣府も消費者庁のやる気と熱意を感じているようなので、経済団体の方にもより深い理解を求めたいと思考します。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年6月 9日 (土) 19時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/66791904

この記事へのトラックバック一覧です: 企業経営者において不正リスクへの意識高まる-経済同友会調査:

« 魅力のある経営者OBは「社外取締役」の器に収まらないのでは? | トップページ | 企業法務弁護士は「裁判官リスク」とどう向き合うべきか? »