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2018年7月14日 (土)

企業法務革命-企業価値向上のための法務機能とは?

51fjfiuogl私自身の論稿等が掲載されている専門誌が二つほどありますが、そちらの紹介は後回しにしまして、本日は企業法務に携わる方々にお勧めしたい新刊書をご紹介いたします。

企業法務革命-ジェネラル・カウンセルの挑戦-(ベン・W・ハイネマンJr著 企業法務革命翻訳プロジェクト 訳 商事法務7,500円税別)

今年4月、経産省から「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」がリリースされました。リーガルリスクが多様化、複雑化する中で、経営層・事業部門も法務リテラシーを高めることが必要である、法務機能の守り(ガーディアン機能)と攻め(パートナー機能)は表裏一体の関係にあり、企業の持続的成長のためには両社は単純には切り分けられないと提言されています。この報告書が公表されて以来、日経新聞でもやや後ろ向きに捉えられていた(と思われる?)法務記事が、かなり前向きに捉えられるようになり、各企業が(弁護士ではない)ロースクール卒業生などを別枠で採用したがっている、といった紹介記事まで掲載されるようになりました。そのような中で、企業法務革命と題する本書は、まさに絶妙のタイミングで発刊されたといえます。

著者は、GE社元ジェネラル・カウンセル(役員クラスの企業法務責任者)であり、ご自身の経験を踏まえて、企業法務がいかに経営にとって重要であるかを全編で説いておられます。その趣旨を一言でいえば「企業法務革命:パートナーとガーディアンとの間の緊張関係の解決」というもの(ご著者は、「日本語版はしがき」にて、本書のタイトルを、このように紹介しています)。企業は、高い業績と倫理性・誠実性、そして健全なリスク管理を統合する使命があり、法務責任者にはその使命を全うする責任がある、というジェネラル・カウンセルの基本思想が企業の在り方を変えつつある、その変遷が「革命」という名のもとで示されています(たとえば社内における法務の役割の変遷、社内弁護士と社外弁護士の役割の変遷など)。

先日ご紹介した「法学の誕生-近代日本にとって『法』とは何であったか」 においても、中心テーマは「どうやって日本が憲法典・民法典を輸入したのか」ということよりも「どうやって西欧のリーガルマインドを日本に根付かせたのか」という点でした。本書でも同じことが中心テーマです。法務部門のガーディアン機能といえば法的スキル(専門家的スキル)に光があたりますが、パートナー機能ではリーガルマインドに関心が向きます。たとえば私流に述べるのであれば「経済的合理性」「関係当事者の信頼と協働(信頼の原則)」「公正であること(実体的正義と手続的正義)」「公平であること(私的自治原則、ステイクホルダーの利益保護)」「論理整合性があること(説明責任)」「安定性があること(他の事案でも同様の解決方法が妥当する)」といったところが事業戦略には不可欠な考え方かと思います。ビジネスを進めるうえで「法的なグレーゾーン」は山ほどありますが、あえてリスクをとってチャレンジする、リスクを回避して考え得る代替手段を実践するといった決断にはリーガルマインドが不可欠かと思います。

また、私は重大事故を発生させた某社の品質管理委員会の委員として、某社経営陣の方々と議論を重ねている中で、「ジャストインタイムの生産方式は品質偽装の温床ではないか」といった私の考え方が間違っていた(恥ずかしながら・・・)ことを教えていただきました。BCPに配慮したうえで、時間とコストを極限まで省く日々の努力は、生産計画、生産管理の実効性を高めることになるので、むしろ不正の芽を摘むことになります。つまり、高い業績と倫理性はトレードオフの関係には立たないのであり、生産効率と倫理性の相乗効果をいかにして発揮するか・・・というところに法務の役割を見出すこともできるように思います。

このあたりは、そのまま私自身の日ごろの業務でも心がけているところでして(心がけているだけでなかなか実現はしておりませんが)、「適法ではあるが、正義ではない」「従業員の皆様に新たなルールを厳守してもらわなくてもコンプライアンス経営はできる」という結論を社長さんにどう腹落ちしてもらうか・・・というところに腐心しております。本書では、著者のご経験や他のジェネラル・カウンセルの方々の経験に基づく知見がふんだんに示されており、社内における意思決定、社外に対する説明責任の実践に役立つヒントとなりそうです。また、大きな法律事務所の弁護士の方々には、後半の「外部の法律事務所との付き合い方」といったところも参考になるかもしれません(やや耳の痛い話ではありますが・・・)。大部ですので、まだまだ読了には時間を要しますが、今年上半期では(先日ご紹介した)内田貴先生の「法学の誕生」に匹敵するほど、ワクワクしながら拝読しております。

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2018年7月13日 (金)

監査役会等の活動状況は開示できても実効性評価はむずかしい

近時の企業統治改革の流れに沿って、6月28日には金融審議会「ディスクロージャーWG報告」、そして7月5日には企業会計審議会「監査基準の改訂に関する意見書」が、相次いで公表されました。記述情報(非財務情報)を盛り込んだ有価証券報告書の深化、投資家との建設的な対話を促進するための情報の信頼性向上を図ることについては、市場の活性化、信頼性確保のためには不可欠な取組みだと思います。

ただ、これらの開示規範の中に、会社法上の機関である監査役等、監査役会等の役割と責任についてもかなり盛り込まれています。一見しますと、会社法で規制すべき監査役等の行為規範が、金商法で上乗せ規制されているのではないか・・・との疑問も湧きますが、とりあえず当局の考え方は「あくまでも会社法上の監査役等の職務権限の範囲で役割と責任を明記したものであり、監査役等に新たな法的義務を課したものではない」とのこと。私も、そのように読みたいと思います(ちなみに2021年3月期から施行予定のKAM記載は、あくまでも金商法監査に関するものであり、会社法監査については追って検討する、とのこと)。

ところで、金融審議会のWG報告書の16~17ページあたりを読みますと、監査役会等の活動の実効性を判断する観点から、監査役会等の活動状況の記載を求める・・・とあります。この(開示すべき)活動状況には、業務監査に加えて、会計監査のための会計監査人との連携や選解任に関する審議状況なども含むものと考えられます。エフオーアイ事件やセイクレスト事件の判決などを読むと、監査役に本来期待されている監査業務が誠実に履行されていなければ善管注意義務違反として監査役等の法的責任が認められておりますので、監査役等が誠実に職務を履行していることを対外的に示すためには監査役会等の活動状況を開示することにも一定の意味はあろうかと思われます。

しかし、それが果たして監査役会等の実効性評価につながるか・・・といえば疑問です(取締役会の実効性評価に立ち会うことが増える中で、最近、このような疑問を感じるようになりました)。ひごろ多くの会社の監査役(監査役会)のご相談を受けている立場からみれば、監査役会等の実効性は個々の監査役の力量(及び力量に伴う行動)に左右されるものであり、いくら会議体としての活動が開示されても個々の監査役の実効性は開示されないからです。

また、そもそも監査役が会社を救う実例に何度か遭遇しましたが、それは会社も監査役会も対外的には開示することに消極的なケースばかりであり、「当該企業の監査役、監査役会は果たして企業に問題があった場合に機能するのかどうか」という点こそ「実効性」の重要なポイントであるにもかかわらず、積極的に開示することにはなじみません。このあたりをきちんと整理をしないと、監査役会等の実行性評価は投資家をミスリーディングしてしまわないか・・・との懸念が残ります。

以前、私は(取締役会の実効性評価と同様に)監査役会も実効性評価をすべきではないか・・・と申し上げました。監査機能が充実していることを株主、投資家に示すべき、という視点からは今も考えに変わりはありませんが、世間から期待されているような「不正を暴く」といった意味で「実効性」の有無を捉えるのであれば、その評価結果を開示することは至難の業だと思います。したがって、まず監査役会等の実効性評価を行うのであれば、「実効性」とは、監査役がどのような役割を果たすことへの「実効性」を評価するのか、そこを各社で定義する必要があると考えます。

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2018年7月11日 (水)

三菱自動車救済の裏で日産自動車の燃費データ偽装?

2013年4月から18年6月まで、日産自動車さんが子会社を含む5つの国内工場において(燃費、排ガスの性能に関する)抜き取り検査のデータ偽装を続けていた、と報じられています。無資格検査事件の発覚以上に、これは驚きました。朝日新聞朝刊記事によると、スバルさんの同様の不正があったことをきっかけに調査してみたら、当社でも不正が起きていたことがわかった、とのこと。おそらく日産さんは国交省の調査要請を受けていたので、スバルさんの件が発覚したことを機にかなり厳格な調査をされたのではないかと推測します。

しかし、以前にもご紹介した「不正の迷宮-三菱自動車」(日経BP社)の99頁以下を読みますと、軽自動車を三菱自動車さんと共同開発する中で、日産さんは(三菱の開発担当者から技術面でバカにされたことをきっかけに)三菱の燃費偽装を暴いたということのようですし、三菱の燃費偽装事件を契機に日産さんが救済出資に動いたことも事実です。そうであるならば、日産さんは2015年の秋の時点で「うちは燃費偽装については問題ないのか?」と調査に乗り出していても不思議はないと思います。もし三菱自動車さんの偽装を暴き、自社でも同様のことが起きていた、などと後でわかったらシャレにもならないはずです。でも、ホントにシャレにもならない事態となってしまいました。

抜き取り検査のおよそ50%でデータ偽装が見つかり、これはスバルさんの2倍だそうです。つまり相当の規模で偽装が行われていたようですから、そもそもなぜ三菱自動車の燃費偽装を暴いたときに、社内でも同様のことがないのか調査をしなかったのでしょうか。社内でドキドキしていた社員の方もいらっしゃったと推測されます。今後、設置されると思われる特別調査委員会の報告書において、ぜひこのあたりは(組織ぐるみと言えるかどうか、という点も含めて)詳細に解明していただきたいと思います。

なお、朝日新聞に記者会見の一問一答が掲載されていましたが、日産さんの工場のなかでも、ほとんどデータ偽装が発見されていない工場(日産自動車九州工場)があるそうです。なぜ偽装が多発していた工場と偽装が行われなかった工場に分かれるのか、このあたりの理由は、神戸製鋼さんのアルミ・銅部門と鉄鋼部門での偽装頻発状況の差にも通じるところであり、他社にとっても参考になるところかと思われます(詳しくはまた別途エントリーで書かせていただきます)。そもそも実効性のある監査体制を本気で構築する気があるのかないのか、そのあたりが分水嶺になったようです。監査の重要性を認識することができる事例といえそうです。

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2018年7月10日 (火)

公認会計士を社外役員に採用することで企業価値は上がるか?

本日(7月9日)は日本公認会計士協会東京会主催の研修講座にて「コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント」と題する基調講演をさせていただき、その後は現役社外役員の会計士の皆様がパネリストで登壇されるディスカッションのモデレーターを務めさせていただきました。懇親会にも参加させていただき、関係者の皆様にお世話になりました(ありがとうございました)。

大先輩の会計士の皆様に、かなり意地悪な質問もしましたが、意見交換をするうちに「企業がなぜ財務・会計的知見を有する人たちを社外役員にするのだろう?コンサルタントで十分ではないのか?企業価値の向上に、果たして会計士役員は役に立つのだろうか?」という点で、私なりの回答が整理されてきました。

このたびのガバナンス・コードの改訂でも、十分な財務会計的知見を有する社外役員を最低1名は選任すべし、とされましたので、どうも「理屈や論理の面で会計士のスキルが求められている」ように考えてしまうのですが、ちょっと違うように思います。むしろ、会計監査に長年関わってこられた方は、真剣勝負の監査業務のなかで、多くの上場会社の企業風土に触れてきた点に特色があります。つまり、企業が会計士を社外役員に迎える最大のメリットは、知見に基づいて企業風土の他社比較ができる、という点にあります。これは元経営者や弁護士、官僚、学者の社外役員には期待できませんし、会計士によるコンサルタント業務でも発揮できません。

他の上場会社の企業風土と当社の風土を比較することで、経営方針や事業戦略として「何を残し、何を捨てるべきか」理解する、つまり、会計士の社外役員を迎える真のメリットは、事業を遂行するにあたって求められる直観力という面で有益な意見を会社が得ることができる、ということではないかと。守りのガバナンスで力を発揮してほしい、会計監査人と会社との通訳的な役割を担ってほしい・・・などといった理由が語られることが多いのですが、そういったことよりも「サイエンス」ではなく「アート」の面で企業価値向上に資することができる、という点こそ、公認会計士が社外役員に就く最大のメリットであります。この点は、もっと会計士協会挙げてセールスしてもよいのではないでしょうか。

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2018年7月 9日 (月)

リスクは関係者の心の中にある(現場主義の重要性)

滞在型観光地として有名な大分県のある温泉リゾート地に二泊三日で行ってまいりました(観光であればもちろん大雨でキャンセルするところですが、事業再生の仕事の一環としての視察でしたので休むわけにもいかず、しんどい移動の連続でした・・・)。数十年前までは何もない山間部に、いまは年間400万人の観光客が訪れるようになり、日本人観光客のほうが少ない・・・と思える雰囲気にたいへん驚きました。ただ、実際に行ってみますと、旅行雑誌には出てこない(あえて触れない?)、いろいろな問題も露呈されてきており、地方再生のむずかしさを痛感いたしました。

さて、6月28日の日経夕刊「私のリーダー論」に、日揮社の新しい社長さんの紹介記事が掲載されていました。日揮社が19年ぶりの最終赤字に転落し、元副社長の方を三顧の礼で社長として迎えた、とのこと。高専のご出身で現場主義を貫いてこられた方です。その新社長さんのリスク管理に関する考え方にとても感銘を受けました。(コストや技術的な問題もあるが)リスクは往々にして関係者の心の中に起因する、というものです。たとえば応援を要請して人を動員したのになかなかうまくいかない、実は応援に来た人は「私は応援ですから」と思っていて主体性がなかったということがあり、どんなに人を増やしてもうなくいかない。関係者の心の中まで解決していかなければリスク管理はできない、というもの。

そういえば、横浜のマンション傾斜事件の際、旭化成建材の現場責任者の方がデータ偽装に手を染めたことがありましたが、あのときの特別調査委員会報告書を読みますと、忙しさは同じだったにもかかわらず、偽装に一切手を染めなかった現場責任者の方がいらっしゃったことがわかりました。なぜ彼は偽装に手を染めなかったかといいますと、彼は旭化成建材の下請け会社出身であり、下請け事業者と厚い信頼関係があったことが記載されていました。まさに「リスクは関係者の心の中にある」ということだと思います。

ここ数日、某温泉リゾート地のいくつかの旅館・ホテルの「おもてなし」を受けましたが、そこには(値段に関係なく、また顧客が日本人か外国人かにも関係なく)大きな差を感じました。つまり、「おもてなし」に感動してくれるお客様と接しているかどうか、という点です。事業構想において、そのような「おもてなし」が必要なのかどうか、という点は意見が分かれると思いますが、従業員の皆様が「しょせん、自分は金もうけに必要な歯車のひとつ」といった感覚で顧客と接するとなりますと、やはり深刻な事業リスクは増えてくるのではないでしょうか。ここでも、やはり「リスクは関係者の心の中に宿る」ものだと考えるところです。

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2018年7月 5日 (木)

金商法の「いま」を理解する最適の入門書(本のご紹介)

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文科省の現職局長さんが逮捕された、と報じられています。もしこれが6月1日に施行された日本版司法取引の第1号ということになりますと(あくまでも仮定の話ですが)、本丸は贈賄側ではないのかな(組織的犯罪)?とも思ったりしております。

さて、市場規制の手法については、ソフトローの重要性がますます高まっています。しかし、ソフトローの中にも、上場会社の行動規範を示すもの、投資者保護に向けた開示規範を示すもの、逆に投資家やゲートキーパーの行動規範を示すもの、あるいは民間の力を活用するための解釈指針を示すものなど、その内容も様々です。そして、なぜソフトローが興隆するかといえば、市場に参加する人たちが、①ソフトローの趣旨を理解する能力を有し、②その理解に従った行動が期待できる誠実性を持ち合わせているからです。

ソフトローが適用される企業社会では、これに対応できる企業には営業の自由が最大限保障され、逆に対応できない企業は「フトドキモノ」と社会的に評価され、行政からピンポイントで規制(行動監視)の対象とされます。私は常々、市場規制を目的としたソフトローを理解するためには、ハードローとしての金融商品取引法の考え方を理解する必要であり、その考え方を、わかりやすく伝えてくださる書籍があれば良いな・・・と思っておりました。ちなみに、私にとりましては、なんといっても河本一郎大先生の「証券取引法(金融商品取引法)読本」でありました。

このたび、私も存じ上げている梅本剛正教授(甲南大学大学院法学研究科)が、一般の方々が金商法の発想や考え方を学ぶにはピッタリの一冊を上梓されました。金商法入門(梅本剛正著 中央経済社 2,500円税別) もう10年ほど前ですが、梅本先生による「現代の証券市場と規制」(商事法務)というレベルの高い論文集を拝読し、私が副代表を務めているIPO研究会にお招きして以来、ご活躍には注目をしております。

タイトルを「金商法入門」とされた理由は、おそらく「金融商品取引法入門」なるタイトルは、すでに著名な先生方の執筆されたご著書が複数存在するから・・・と推察いたします。そして、本書の内容も「金商法」というタイトルのとおり、他の教科書が詳しく説明している内容を大幅に省き、本当に重要と思われるお話に絞って(図表もふんだんに取り入れながら)書かれています。本書の目次の進め方(入門の入門→企業内容開示規制→投資者が受ける規制→証券会社→証券取引所→不公正取引規制)にも、そのような「わかりやすさ」や「考え方や発想を学ぶ」ということを重視した姿勢が示されています。読み物としても面白いのは、商法学者でありながら、著者ご自身も「泣き笑い」の投資家人生を歩まれているからではないかと。

一般の方にお勧めしたい本ですが、実は私もじっくりと拝読させていただいております。というのも、金商法は法律だけでもたいへんな分量ですが、関係政省令の改正が毎年のようにございますので、正直、勉強が追いつきません。本書では、本文もさることながら、ふんだんにコラムが掲載されていて、金商法界隈の最新事情も入手できます(クラウドファンディングやフェア・ディスクロージャー・ルールなども、金商法の条文との関係で概要だけでも理解できます)。まさに「金商法の今」を知る、学ぶためにとても重宝しております。

そして、もうひとつ指摘できる本書の特色は、著者が毎日のように更新されていらっしゃるブログ(匿名)の存在です(ブログの存在を書いてよいのか迷いましたが、本書ではご自身のブログを紹介されているので、その存在だけご紹介しておきます。ブログのタイトルとアドレスは、本書の著者紹介欄に記載されています)。金商法や会社法に関連する話題、たとえば今年の6月総会における話題の事件の解説、機関投資家と経営陣との支配権争いに関する法律解説など、本書とブログを併せて読むと、ますます金商法の理解がすすむのではないかと思います。ソフトローを含めた「金商法の今」を理解するためのおススメの一冊です。

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2018年7月 3日 (火)

グループ・ガバナンスの在り方に関する実務指針(未来投資戦略2018より)

昨年4月21日のエントリー「監査法人必読!もうひとつのエフオーアイ事件」でご紹介した裁判ですが、今年4月12日に東京高裁にて控訴審判決が出ています(最新号の金融・商事判例に全文掲載)。なんと控訴審判決では、ほぼ同じ事実が認定されていながら、エフオーアイの架空循環取引に協力した取引先従業員の方の損害賠償責任が否定されていますね(従業員および取引先企業の逆転勝訴ですね)。まだ解説文しか読んでおりませんので、また判決全文をチェックした後で自分なりの判断を書かせていただこうかと思っております。

さて(ここから本論ですが)、働き方改革法案の成立、TPP11整備法の成立による独禁法(確約制度-ただしハードコアカルテルへの適用は除外されるようです)改正など、今後も法律雑誌等で大きく取り上げられそうな話題が豊富ですね。そのような中で、6月15日に公表された「未来投資戦略2018」では、会社法改正によって認められる「株式交付」を活用した事業再編の推進と並んで、ガバナンス改革5年目の目玉としてグループ・ガバナンスが取り上げられている点が注目されます。

投資戦略2018の130頁あたりに「・企業グループ全体の価値向上を図る観点から、グループ経営において 「守り」と「攻め」両面でいかにガバナンスを働かせるか、事業ポー トフォリオをどのように最適化するかなど、グループガバナンスの在り方に関する実務指針を来年春頃を目途に策定する。」とあります。最近、グループ経営管理に関するご相談案件が東京でも京都・大阪でも増えていますが、私個人の感想としては「グループ・ガバナンスは難易度が高い」施策と認識していますので、汎用性のある実務指針が開発されるのであれば、たいへん興味があります。

たとえば海外子会社管理のガバナンスについては、先日のこちらのエントリーで示したように、同業他社と比較しても三者三様であり、一律にベストプラクティスといえそうなものは見当たりません。グループとしての中長期的な企業価値向上のために、どのような経営体制を敷くかは、各社で検討すべき事項が多いと思います。とりわけ、会社法がグループ・ガバナンスに対応していないので、親会社取締役の子会社管理と善管注意義務の関係を整理する必要があるのではないでしょうか(基本的に平成26年会社法改正における議論の積み残しではなかったかと)。また、子会社取締役からみれば、TMS、CMS等のグループ資金マネジメントシステムの導入など、利益相反問題と善管注意義務の関係などにも法的な課題があるように思います。

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