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2018年7月11日 (水)

三菱自動車救済の裏で日産自動車の燃費データ偽装?

2013年4月から18年6月まで、日産自動車さんが子会社を含む5つの国内工場において(燃費、排ガスの性能に関する)抜き取り検査のデータ偽装を続けていた、と報じられています。無資格検査事件の発覚以上に、これは驚きました。朝日新聞朝刊記事によると、スバルさんの同様の不正があったことをきっかけに調査してみたら、当社でも不正が起きていたことがわかった、とのこと。おそらく日産さんは国交省の調査要請を受けていたので、スバルさんの件が発覚したことを機にかなり厳格な調査をされたのではないかと推測します。

しかし、以前にもご紹介した「不正の迷宮-三菱自動車」(日経BP社)の99頁以下を読みますと、軽自動車を三菱自動車さんと共同開発する中で、日産さんは(三菱の開発担当者から技術面でバカにされたことをきっかけに)三菱の燃費偽装を暴いたということのようですし、三菱の燃費偽装事件を契機に日産さんが救済出資に動いたことも事実です。そうであるならば、日産さんは2015年の秋の時点で「うちは燃費偽装については問題ないのか?」と調査に乗り出していても不思議はないと思います。もし三菱自動車さんの偽装を暴き、自社でも同様のことが起きていた、などと後でわかったらシャレにもならないはずです。でも、ホントにシャレにもならない事態となってしまいました。

抜き取り検査のおよそ50%でデータ偽装が見つかり、これはスバルさんの2倍だそうです。つまり相当の規模で偽装が行われていたようですから、そもそもなぜ三菱自動車の燃費偽装を暴いたときに、社内でも同様のことがないのか調査をしなかったのでしょうか。社内でドキドキしていた社員の方もいらっしゃったと推測されます。今後、設置されると思われる特別調査委員会の報告書において、ぜひこのあたりは(組織ぐるみと言えるかどうか、という点も含めて)詳細に解明していただきたいと思います。

なお、朝日新聞に記者会見の一問一答が掲載されていましたが、日産さんの工場のなかでも、ほとんどデータ偽装が発見されていない工場(日産自動車九州工場)があるそうです。なぜ偽装が多発していた工場と偽装が行われなかった工場に分かれるのか、このあたりの理由は、神戸製鋼さんのアルミ・銅部門と鉄鋼部門での偽装頻発状況の差にも通じるところであり、他社にとっても参考になるところかと思われます(詳しくはまた別途エントリーで書かせていただきます)。そもそも実効性のある監査体制を本気で構築する気があるのかないのか、そのあたりが分水嶺になったようです。監査の重要性を認識することができる事例といえそうです。

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