リスクは関係者の心の中にある(現場主義の重要性)
滞在型観光地として有名な大分県のある温泉リゾート地に二泊三日で行ってまいりました(観光であればもちろん大雨でキャンセルするところですが、事業再生の仕事の一環としての視察でしたので休むわけにもいかず、しんどい移動の連続でした・・・)。数十年前までは何もない山間部に、いまは年間400万人の観光客が訪れるようになり、日本人観光客のほうが少ない・・・と思える雰囲気にたいへん驚きました。ただ、実際に行ってみますと、旅行雑誌には出てこない(あえて触れない?)、いろいろな問題も露呈されてきており、地方再生のむずかしさを痛感いたしました。
さて、6月28日の日経夕刊「私のリーダー論」に、日揮社の新しい社長さんの紹介記事が掲載されていました。日揮社が19年ぶりの最終赤字に転落し、元副社長の方を三顧の礼で社長として迎えた、とのこと。高専のご出身で現場主義を貫いてこられた方です。その新社長さんのリスク管理に関する考え方にとても感銘を受けました。(コストや技術的な問題もあるが)リスクは往々にして関係者の心の中に起因する、というものです。たとえば応援を要請して人を動員したのになかなかうまくいかない、実は応援に来た人は「私は応援ですから」と思っていて主体性がなかったということがあり、どんなに人を増やしてもうなくいかない。関係者の心の中まで解決していかなければリスク管理はできない、というもの。
そういえば、横浜のマンション傾斜事件の際、旭化成建材の現場責任者の方がデータ偽装に手を染めたことがありましたが、あのときの特別調査委員会報告書を読みますと、忙しさは同じだったにもかかわらず、偽装に一切手を染めなかった現場責任者の方がいらっしゃったことがわかりました。なぜ彼は偽装に手を染めなかったかといいますと、彼は旭化成建材の下請け会社出身であり、下請け事業者と厚い信頼関係があったことが記載されていました。まさに「リスクは関係者の心の中にある」ということだと思います。
ここ数日、某温泉リゾート地のいくつかの旅館・ホテルの「おもてなし」を受けましたが、そこには(値段に関係なく、また顧客が日本人か外国人かにも関係なく)大きな差を感じました。つまり、「おもてなし」に感動してくれるお客様と接しているかどうか、という点です。事業構想において、そのような「おもてなし」が必要なのかどうか、という点は意見が分かれると思いますが、従業員の皆様が「しょせん、自分は金もうけに必要な歯車のひとつ」といった感覚で顧客と接するとなりますと、やはり深刻な事業リスクは増えてくるのではないでしょうか。ここでも、やはり「リスクは関係者の心の中に宿る」ものだと考えるところです。
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コメント
ESG展開を伸ばしているGPIFの公的年金運用について、リスク管理の重要性を盛り込んだ内容の日経/社説を週末に読み終えると共に、災害によるビジネスリスクも考えさせられています。
もう一つの公的…税金/公共事業:「内閣官房国土強靭化計画」を思い出し、その中に「倉敷市国土強靭化「地域」計画も見つけました。
ところが、産経WESTでの同市の消防司令長が(氾濫した河川も改修計画(22P)に盛り込まれているのに)、「甘かった。水害なんて、よその話かと思っていた」というコメント記事に触れると、被災現場の方々のリスク感覚に「?」と思ってしまいました。
春日部市にも同/地域計画がありますが、仮に倉敷市にも、春日部市に存在する様な「外郭放水路」があり、機能していたら…幾つかの被害は軽減され、後の水不足対応等に役立ったのではと、ふと思います。
公共事業への税投入の是々非々は今に始まった事ではありませんが、国土強靭視点と、より密に連携した地方創成、生産性革命、人づくり革命の土台作りも不可欠かと。
多くの人命及び経済損失が毎年のように繰り返されると、「攻めの防災公共事業」を拡充、ピッチを上げても良いのでは?と思うのは私だけでしょうか…。
(週明けには大洲市のダムが安全基準の6倍を超える放水だったとの報道も。)
我が街に「龍Q館」のような施設整備を期待しつつ…総合的な「水」対応の重要性を盛り込んだ、防災関係者へのさらなるリスク管理の啓発普及を願って止みまん…。
(被災された方々に、お見舞い申し上げます)
投稿: にこらうす | 2018年7月10日 (火) 23時09分
いつも有益な情報ありがとうございます。地球温暖化と異常気象(もう異常とは呼べない?)との関連性はわかりませんが、これほど災害が続きますと「攻めの防災対策」も喫緊の課題といえるでしょうね。リスク管理を評価するにあたっては、なかなか外から見えづらいというところがあろうかと思います。リスク管理の格付けのようなものはどうしたらよいのか、検討してみたい課題です。
投稿: toshi | 2018年7月11日 (水) 01時27分