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2018年7月13日 (金)

監査役会等の活動状況は開示できても実効性評価はむずかしい

近時の企業統治改革の流れに沿って、6月28日には金融審議会「ディスクロージャーWG報告」、そして7月5日には企業会計審議会「監査基準の改訂に関する意見書」が、相次いで公表されました。記述情報(非財務情報)を盛り込んだ有価証券報告書の深化、投資家との建設的な対話を促進するための情報の信頼性向上を図ることについては、市場の活性化、信頼性確保のためには不可欠な取組みだと思います。

ただ、これらの開示規範の中に、会社法上の機関である監査役等、監査役会等の役割と責任についてもかなり盛り込まれています。一見しますと、会社法で規制すべき監査役等の行為規範が、金商法で上乗せ規制されているのではないか・・・との疑問も湧きますが、とりあえず当局の考え方は「あくまでも会社法上の監査役等の職務権限の範囲で役割と責任を明記したものであり、監査役等に新たな法的義務を課したものではない」とのこと。私も、そのように読みたいと思います(ちなみに2021年3月期から施行予定のKAM記載は、あくまでも金商法監査に関するものであり、会社法監査については追って検討する、とのこと)。

ところで、金融審議会のWG報告書の16~17ページあたりを読みますと、監査役会等の活動の実効性を判断する観点から、監査役会等の活動状況の記載を求める・・・とあります。この(開示すべき)活動状況には、業務監査に加えて、会計監査のための会計監査人との連携や選解任に関する審議状況なども含むものと考えられます。エフオーアイ事件やセイクレスト事件の判決などを読むと、監査役に本来期待されている監査業務が誠実に履行されていなければ善管注意義務違反として監査役等の法的責任が認められておりますので、監査役等が誠実に職務を履行していることを対外的に示すためには監査役会等の活動状況を開示することにも一定の意味はあろうかと思われます。

しかし、それが果たして監査役会等の実効性評価につながるか・・・といえば疑問です(取締役会の実効性評価に立ち会うことが増える中で、最近、このような疑問を感じるようになりました)。ひごろ多くの会社の監査役(監査役会)のご相談を受けている立場からみれば、監査役会等の実効性は個々の監査役の力量(及び力量に伴う行動)に左右されるものであり、いくら会議体としての活動が開示されても個々の監査役の実効性は開示されないからです。

また、そもそも監査役が会社を救う実例に何度か遭遇しましたが、それは会社も監査役会も対外的には開示することに消極的なケースばかりであり、「当該企業の監査役、監査役会は果たして企業に問題があった場合に機能するのかどうか」という点こそ「実効性」の重要なポイントであるにもかかわらず、積極的に開示することにはなじみません。このあたりをきちんと整理をしないと、監査役会等の実行性評価は投資家をミスリーディングしてしまわないか・・・との懸念が残ります。

以前、私は(取締役会の実効性評価と同様に)監査役会も実効性評価をすべきではないか・・・と申し上げました。監査機能が充実していることを株主、投資家に示すべき、という視点からは今も考えに変わりはありませんが、世間から期待されているような「不正を暴く」といった意味で「実効性」の有無を捉えるのであれば、その評価結果を開示することは至難の業だと思います。したがって、まず監査役会等の実効性評価を行うのであれば、「実効性」とは、監査役がどのような役割を果たすことへの「実効性」を評価するのか、そこを各社で定義する必要があると考えます。

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コメント

監査役がそもそも社長の指名で当たり障りのない人物を選んでいる時点で、実効性に疑問が出てくるのではないでしょうか。CGコード改訂の議論でもありましたが、その指名自体に透明性を持たせることが必要なのではと思います。そもそも通常、天下の宝刀である差し止め請求などをする連発する人は、社長にとっては怖くて選べないわけで、そのへんのプロセスをまずクリアーにする必要があるのではと。

投稿: 元工場労働者 | 2018年7月15日 (日) 12時26分

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