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2018年8月 8日 (水)

金融庁の地銀立入検査-監査役監査は「対象外」?

8月7日付け東京新聞(夕刊)第2面に「金融庁、地銀立ち入り-スルガ銀問題受け『内部監査』を検査」との記事が掲載されており、金融庁が全国の地銀に対して、行内の不正行為をチェックする内部監査機能に焦点をあてた立ち入り検査を開始したことが報じられています。スルガ銀行さんや東日本銀行さんの不適切営業が発覚したことを受け、金融庁では専門チームを設置したそうで、内部監査部門と併せて社外取締役の実態も詳しく調べるそうです(ちなみに日経ニュースによると、東日本銀行さんの不正発覚は内部告発によるものだったそうですね。存じ上げませんでした・・・)。

金融庁では、たしか数年前から不正予防を目的として、内部監査担当役員や実効性を高めるための監査役面談などを実施しておられたように記憶しています。過去の不正を暴くことよりも、将来の不正を防止できる体制作りを金融機関に要望しておられたのですが、結局のところ金融庁の思惑通りにはいかなかった、ということでしょうか。いくら内部監査部門のスキルが充実しているとしても、そもそも不正を経営陣に指摘できるかどうかは全く別です。不正の疑惑を見つけることよりも、見つけた「疑惑」を経営陣に指摘するほうが10倍以上むずかしい、というのがホンネのところではないでしょうか。最近、内部監査部門を「キャリアパス」の一環として捉え、社内に重要ポストとの認識を浸透させようと尽力している企業さんも見受けられますが、「経営トップにモノを言う」ことが出世につながるかどうかはホンネベースで言えば微妙です。

ところで、金融庁の立ち入り検査では、「内部監査部門と社外取締役との情報共有」についても調べる、とありますが、一般の企業において社外取締役さんが内部監査部門と情報共有の機会を設けているところはどのくらいあるのでしょうか?私の予想ではかなり少ないのではないかと推測いたしますが、これを調べてみるのもおもしろいかもしれません。攻めのガバナンスが語られる時代となり、リスクマネジメントの専門家よりも、経営者OBやコンサルタントの方々のようにビジネスに精通した社外取締役さんとの情報共有のほうが効果的ではないでしょうか。内部監査部門が「モノが言えない」という状況を補完するためにも、社外取締役さんとの情報共有というのは不正の早期発見や不正の芽を摘むためにも有効のような気がいたします。

先日ご紹介した「企業法務革命」を拝読しておりまして、著者ベン・W・ハイネマン氏(GEのジェネラルカウンセル-法務担当役員)の提言を、GEのCEOがなぜ受け入れるのか・・・と考えましたところ、ハイネマン氏がビジネスリスクをギリギリまで受容したうえで、代替案を提示したり、リスクテイク後の経営環境にまで配慮していたことにより、CEOの絶大なる信頼を得ていたからではないかと考えました。日本企業にもジェネラルカウンセルのような役割を担う人たちが増えることを期待しておりますが、現実論としては、まず経営トップとビジネスを語ることができる社外取締役さんこそ、経営トップの暴走を止めたり、苦言を呈して異なる意見を通すためには役に立つのではないかと。

なお、上記記事を拝見していて、「金融庁は監査役監査には期待していないのだろうか」との疑問を抱きました。金融庁は、これまで監査役(取締役監査等委員)との面談などにも力を入れておられたようですが、金融庁としては「監査役監査の実効性はあまり感じられなかった」というのであれば、それはやや残念です。また調査報告書などが公表された時点で注視したいと思いますが、スルガ銀行さんや東日本銀行さんの不適切営業について、監査役が指摘をしていた、という事実は報じられていません。ここのところ「モノ言う監査役」さんを報じる事例などがあまり報じられませんが、ぜひとも地銀にも「野崎修平」が出現することを期待したいと思います。

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コメント

日本の上空では多くの気象変動…
日本の地下では多くの地殻変動…
(本日、第一報報道で、マツダ、ヤマハ社もデータ改ざん)
日本の地表に存在する法人や金融、スポーツ界等、諸組織内の「人格変動」は果たしてどこまで行くのでしょう…。
避暑を兼ねて、シェルターのあるスイスで、現実社会を忘れて、
ゆっくりしたい心境です。(私の所有物件ではありませんが)

投稿: にこらうす | 2018年8月 9日 (木) 07時19分

「内部監査部門と社外取締役の情報共有」だけでなく社長や社外監査役も含めて不正情報の共有が重要であることを金融庁ほかの行政機関がいくら指導しても「モノが言えない」のは、不正を指摘すると不利益を受けるのが当然という文化が蔓延しているからです(あらためて「言うまでもないコト」ですが)。

私の実体験ですが、コンプライアンス部門から「内部監査で問題が無いからメスをいれにくい(調査できないというメールも来ました)」と言われたり、監督省の調査に協力後の事業者との密室面談で「社長や社外取締役、社外監査役に通報しないという【念書】」を書かされそうになったこともあります。この【念書】は例文まで準備されていました!
これらのことを現在、行政や社外取締役と情報共有しています。

ところで、消費者庁が開催する「民間事業者向け内部通報制度及び認証制度に関する説明会」が大人気で、東京二会場はすぐに満席(8月1日は開催済み、私は9月7日に参加します)で大阪会場8月24日も先週、満席になってしまいました。
通報制度があるだけでなく実効性があることを認証するのが消費者庁の目的(事業者とすれば認証されたいのが目的)なのでしょうが、認証判断を下す際に「通報経験者が当該企業実相についてモノを言う」ことは必要不可欠だと思います。
この「物言い」も上記の通り、なかなか難しいのですが。。。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年8月 9日 (木) 22時52分

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