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2018年8月21日 (火)

宅配事業者の路駐解禁と「攻めのコンプライアンス」

8月20日の日経夕刊1面に「宅配の路駐、来夏解禁」とのタイトルで、警視庁が東京23区内における宅配事業者の路上駐車を解禁する(ただし指定ゾーン内に限る)方針を固めたことが報じられています。宅配需要の増加や運転手不足などを背景に、規制を緩和することで宅配事業者の負担を軽減することが狙いだそうです。

上記記事は、警視庁を主体として、宅配事業者への規制緩和を取り上げたものですが、近時のコンプライアンスに関連する話題としても重要な意味を含んでいます。つまり事業者として、規制撤廃に積極的に動くことによって、ビジネスモデルを拡大する機会が生まれるからです。コンプライアンスといえば、「法令遵守」に代表されるように事業者にとっては「守り」の要素と捉えられがちですが、最近は「攻めのコンプライアンス」を活用できる企業こそ競争で優位に立てる・・・という思想が浸透しはじめています。

たとえば上記宅配事業の規制緩和でみると、①業界団体による自主規制(業界団体ルールによって20分以内の駐車に制限する)、②規制の緩和に社会的正当性が認められる(宅配需要の増加と運転手不足はいずれも「働き方改革」の推進という正当な理由がある)、そして③運用面における官民協働(ここでは、規制緩和時の問題である歩行者の安全面について、運用における官民協働によって補完する)という点に注目します。これは、規制緩和を求める事業者が、ロビイ活動に必要な三要素です。なお、社会的正当性が認められるためには、正当化できるだけの「立法事実」を集める必要がありますが、このあたりが専門家の支援を上手に受ける秘訣ではないかと。

さらに、攻めのコンプライアンスに必要なものとして、積極的なコンプライアンス活動を展開した企業が美味しい思いをできるようなインセンティブが必要です。たとえば宅配事業に関していえば、上記の規制緩和の恩恵を受けるためには自主規制団体からの認証マークを得られるとか、運用面での安全確保に関する情報提供を、利用する全ての宅配事業者に要求し、協力をしない事業者はマークの更新資格が得られない、といった「フリーライド」を防止するシステムが必要になると思われます。

社会インフラの一部を民間事業者が代替することにより、社会的な問題を効率的に解決するためにも「攻めのコンプライアンス」の発想が必要です。コンプライアンスはリスク管理と近しい関係にあるだけでなく、まさに次世代のビジネスモデルを開発し、他社に先んじて業績を上げるための戦略としての意味でも重要な時代になりつつあります。近時、自動車メーカーによる不祥事(無資格者による最終審査)が話題ですが、行政規制の実効性と効率性を議論して、社会に合った規制の在り方を検討する「政策法務」の発想が各企業に求められています。もちろん、一朝一夕には実現することは難しいですが、経営と法務との距離を、もっと縮める必要があると考えます。

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