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2018年9月25日 (火)

注目されるダイキン工業の「攻めのグループ経営戦略」

昨日(9月24日)の産経新聞1面に、ダイキン工業さんのグループ経営管理に関する記事が掲載されていて、とても関心を持ちました。「本社⇔子会社 情報パイプ役~ダイキンが専門職新設へ~経営戦略や現場の声 正確に」との見出し記事です。ダイキン工業さんは、会社の経営方針をグループ会社内の隅々まで浸透させる「橋渡し役」(ブリッジ・パーソン)の専門職を、今後3年以内に50名ほど選任するそうです。

この50名は、経営目標や理念に精通した一定基準を満たした社員から選抜するそうで、組織内の情報の目詰まりを取り除き、トップの経営判断を迅速に実行に移す体制の整備が目的とのこと。これまで、多くのM&Aによって大きくなったダイキン工業さんのグループでは、情報伝達の在り方が大きな課題になっていたそうです。空気清浄では超一流の会社でも「現場の空気が本社に上がってくるときにはきれいな空気に変わるのはマズい」ということで、不祥事防止にも、「ブリッジ・パーソン」への期待がかかるそうです。

企業統治改革5年目の目玉として、経産省CGS研究会でも実務指針作りのためにグループ経営管理の在り方が審議されていますが、「ブリッジ・パーソン」なる専門職を新設するというのは、さすが海外売り上げが8割を占め、多くの海外企業を買収しておられるダイキン工業さんらしい「攻めのグループ経営戦略」だと思います。こちらのエントリー(イオン監査役アカデミーは企業価値を向上させるか?)でもご紹介しましたように、過去にもイオンさんが「イオン監査役アカデミー」を新設したり、また不祥事を起こした近鉄さんが子会社常勤監査役を大幅に拡充した例はありましたが、グループ経営の有効性や効率性を主たる目的として「50名もの専門職を新設する」というのは、これまであまり他社事例で聞いたことはありません。

講演等では毎度申し上げますとおり、グループ経営管理にはマニュアルはない、50社のグループ会社があれば、経営管理手法は50通り必要である、というのが持論なので、ダイキン工業さんの手法は経営管理手法としては、結果を出すために現実を見据えたものではないかと考えております(同制度の今後の運営に期待しております)。

ただ、経営方針の共有にしても、また不祥事予防にしても、グループ経営管理のためには「役職員間の時間軸の共有」が必要です。とりわけ「持続的成長に向けた株主との対話」などと言われる時代となりますと、社長と経営幹部、現場責任者と現場社員とでは、それぞれ「儲けること」の時間軸はずれてきますので、これを修正する作業が必要になります(現場責任者や社員にとっては、今シーズンの当該部署の業績がすべてであり、「中長期的な企業価値向上」への認識はあまりもてないのが当然かと)。「儲けの時間軸」を一致させる努力なしに「グループ会社との情報共有」などできるわけもなく、そのあたりに「橋渡しの専門職」を設けた一番の存在意義があるように思います。

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