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2018年9月18日 (火)

不祥事企業への機関投資家の議決権行使(取締役選任議案)について

本日は企業の有事対応を支援する者にとっては興味深いお話をひとつ。

先週金曜日(9月14日)の朝日新聞朝刊(経済面)に、スルガ銀行の取締役の選任議案(今年6月の定時株主総会)に対する機関投資家の議決権行使結果が概ね開示された旨、報じられていました。たいへん興味深い結果でして、みずほ信託さん(9名の取締役)、第一生命さん(会長さんの再任議案)が反対票を投じ、三菱UFJ信託さん、三井住友信託さん、明治安田生命さんは(会社上程議案の全員について)賛成票を投じたそうです。また、住友生命さんは棄権とのこと。

三菱UFJ信託さん、住友生命さんの話では「6月総会時点では十分な情報がなかった」とのことですが、たしか第三者委員会が設置されたのは5月中旬だったので、この時点でいろいろとマスコミで出ていた情報を重くみていた機関投資家とそうでない機関投資家で結論が分かれた、ということではないかと思われます。ちなみに三菱UFJ信託さんの最新の議決権行使基準(2018年4月1日更新)の「取締役の選任」に関する基準を読みますと、「不祥事」については反対票を投じるのは「不祥事の発生により、経営上重大な影響が出ていると判断する場合」とされており、その「経営上重大な影響が出ている場合」という例示も示されています。これを読むと、たしかに5月~6月はじめのころにはまだ判断に足りる情報が世に出ていなかった、という理由にも納得できそうです。

それでは、「よくわからない」「判断できない」という場合に賛成票を投じる、というのはどうなのでしょうか。とくにスチュワードシップ・コードの実施を宣言している機関投資家の方々は、実質株主の方々に対して信認義務を負っていますので、株主権(とも言われている)行使の一環として対話を求めることも考えられると思うのですが、それでもわからないということであれば住友生命さんのように「棄権」という方法もあるかもしれません。ただ「棄権」というのも、そもそも(議決権行使の判断を放棄したものとして)信認義務に反しているという見方もありえますので、このあたりは私もよくわかっていない状況です(笑)。

先日ご紹介した鬼頭季郎弁護士(元東京高裁判事)によるご論稿(判例時報2367号)によりますと、「今後、スチュワードシップ・コードによる機関投資家の行動規範については、法律的論点となる可能性があり、企業ビジネス弁護士や裁判官にとって先回りして研究しておくべきところである」と述べられています。おそらく、このあたりも「株主との対話」に関する会社法的論点とともに、機関投資家の信認義務の内容として研究されるところになるのかもしれません。

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コメント

機関投資家の公的発言だけでなく、それぞれのご担当の方のお話を聞くと、色々勉強になります。
 組織、という要素や勉強不足という要素(是正される上司の方もいらっしゃると思いますが。)、いろいろありそうです。

投稿: Kazu | 2018年9月20日 (木) 11時37分

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