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2018年10月 3日 (水)

企業不祥事対応-広報vs法務の「仁義なき戦い」?

今朝(10月2日)の日経朝刊に「海外の投資家と企業の対話支援 経団連・経産省」なる小さな記事が掲載されています。経団連と経産省が、環境配慮や企業統治といった日本企業の経営戦略について、海外の機関投資家に売り込む場を作ることになったと報じられています。投資マネーを日本に呼び込むため、「企業と機関投資家との対話促進」を図るということのようです。ここのところ、ESG投資に対応したESG情報開示の方策なども法律雑誌で特集されています。中国や韓国の企業に競争で勝つためには差別化(技術革新)は不可欠ということで、経産省も対日投資促進には本腰を入れてますね。

ところで、投資促進ということとは直接結び付きませんが、企業不祥事が発覚した場合、企業のどの部署が情報開示の主導権を握るのか・・・という点については「対話促進の時代」が進むにつれてホットな話題になりつつあります。できるだけわかりやすく説明責任を果たすことを重視するならば広報・IR担当者が広報コンサルタントの支援を受けながら対応したいところです。しかし一方で「余計なことまで話してしまう」ことによる企業や役員のリーガルリスクを排除したいのであれば法務部門が大手法律事務所の支援を受けながら対応したいはずです。

そういえばISS日本法人の石田猛行氏も、ご著書「日本企業の招集通知とガバナンス」(商事法務2015)において(株主総会対応についてではありますが)「議決権行使担当者にとっては、法務部門の情報コントロールが(今後の)大きな課題である」と述べておられました。

このあたりについて、最近は(法務部門の方々の団体である)経営法友会でも話題になっているようですが、最近の「経営法友会レポート」2018年6月号でも、小林製薬さんの広報・IR部長の方が論稿を掲載しておられました(「企業不祥事の記者会見における法務部門・広報部門の対応」)。この方は、以前は同社法務部門に在籍され、旬刊商事法務に論稿を公表したり、同誌の法務担当者座談会に出席されておられたので、いわば広報も法務も責任者を歴任されました。ということで、ご論稿をたいへん興味深く拝読させていただきました。

法務と広報とでは、想定しているステイクホルダーが異なるということで、この方の結論としては「双方が連携協力することが理想ではあるが、なかなかむずかしい。企業不祥事対応としては広報・IR部門が経営トップの理解を得ながら主導するほうがよいのでは・・・」とのことです。まぁ、おそらくいろいろと意見は分かれるところかと。

実は私も(ある事件について)企業不祥事対応の支援をしておりまして、広報vs法務の仁義なき戦いが繰り広げられるところを目の当たりにしたことがございます。ただ、最後は「双方の連携と協力」によって記者会見やその後の情報開示がなされたわけですが、なぜ和解に至ったかのは「専門家の知恵(企業秘密)」として、ここでは差し控えさせていただきます(笑)。

先日も、スルガ銀行さんの6月総会を前に、会社上程にかかる取締役選任議案に対する機関投資家(信託銀行)の賛否が大きく分かれたことをご紹介しましたが(こちらのエントリーをご参照ください)、「組織力学のバランス」が、このような場面においても重要課題となるのかもしれません。上記広報・IR部長さんのご論稿は、広報や法務の責任者としての悩ましい内面にも言及されており(注-けっして小林製薬さんが大きな不祥事を経験した、というわけではございません)、たいへん参考になります。もし入手可能な方がいらっしゃいましたら(こういった問題に触れる論文などあまりないと思いますので)ご一読をお勧めいたします。

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コメント

 スルガ銀行の株価が下落して損失計上を余儀なくされる企業が出て、
 政策保有株式のリスクが現実化した場合の対応が注目されます。こちらは、営業対財務対法務対広報・IRの四つ巴(そんな家紋はない?)になりそうです。

投稿: KAZU | 2018年10月 3日 (水) 12時46分

それ、今日の日経朝刊に出ていた話題ですね>kazuさん
おもしろそうですね。またブログネタにします。ありがとうございました。

投稿: toshi | 2018年10月 3日 (水) 14時15分

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