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2018年10月22日 (月)

企業不祥事のケーススタディ-実例と裁判例(新刊書のご紹介)

Hushouji013今年も本当に企業不祥事が多い1年(正確には企業不祥事が多く報道された1年)になってしまいました。近時、不正が発覚するたびに第三者委員会報告書が公表され、原因分析や再発防止策が語られるわけですが、どれも紋切り型の表現が多く、企業不祥事の予防・早期発見とガバナンス、内部統制の在り方が説得的に語られている第三者委員会報告書は少ないように思われます。

企業不祥事のケーススタディ 実例と裁判例(2018年10月 弁護士法人中央総合法律事務所編 商事法務 4,400円税別)

本書は、森本滋先生(京大名誉教授)の指導のもと、中央総合法律事務所の実務家の方々が中心となって企画したセミナーや、資料版商事法務に掲載された同事務所のご論稿「不祥事事例の分析」をもとに、「企業不祥事に関して取締役等に生じうる法的責任」に係る実例や重要裁判例の事実と分析を一冊の書籍として取りまとめた新刊書です。企業不祥事発生企業に焦点をあてて効果的なガバナンスや内部統制について分析をして、さらに近時の裁判例を分析したうえで役員の法的責任を解説するところに本書の特長があります。最近の関心事であるグループ会社における不祥事予防や早期発見のためのガバナンス、内部統制にも多くのページをさいて解説がなされています。東証の「不祥事予防のプリンシプル」の解説も詳細です。

企業実務家の皆様には全編を通じて第三者委員会報告書や裁判例を通じた事例分析をお読みいただくのがお薦めですが、法曹実務家向けには144頁から186頁までの森本先生ご執筆「裁判例における取締役の責任の考え方」が参考になろうかと思います。私が不勉強なので、これまでの森本先生のご論稿やご著書で解説済の論点もあるかもしれませんが、不祥事発生企業の取締役・監査役等の法的責任の考え方に特化して解説されたものであり、「監督義務と監視義務の区別」「法令違反の認められない場合の任務懈怠と経営判断原則」「業務執行の決定と経営判断原則」「経営判断原則下における裁量範囲」「経営判断原則と信頼の権利」「内部統制システムの構築と経営判断原則」など、取締役の責任の存否を判断するにあたって微妙な問題を取り上げておられます(これはとてもありがたい)。

個人的に「これはとてもありがたい」と考える理由は、おそらく今後コーポレートガバナンス・コードのコンプライ・エクスプレインとの関係で、企業不祥事が発生した場合に(会社法上の役員の善管注意義務の履行責任、金商法上の「役員が相当を注意を果たしたことの立証責任」の根拠事実として)コードの運用責任が問われる可能性が高まってくると考えるからです。理屈・法理論のうえでは森本先生の解説を参考にして、さらにその根拠とされる裁判例、第三者委員会報告書における実例の理解については上記法律事務所の先生方の解説・分析を参考にする、といった本書の活用がお薦めです。まだ、読み始めたばかりですが、ぜひとも私自身の本業にも参考にさせていただきたいと思います。

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