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2018年10月10日 (水)

不祥事企業への機関投資家の議決権行使(取締役選任議案)について(その2)

9月18日付けエントリー「不祥事企業への機関投資家の議決権行使(取締役選任議案)について」では、不祥事を発生させた企業の株主総会において、機関投資家は取締役選任議案にどう対応するのか・・・という点について意見を述べました。昨日、当該エントリーをお読みになった同業者(弁護士)の方から、「議決権行使に関するものではありませんが、こちらをご参考ください」ということで機関投資家協働対話フォーラムさんの「書簡送付のお知らせ」を教えていただきました。

なるほど、議決権行使基準とは異なりますが、パッシブ運用を行う投資家の方々は、このような視点から協働対話を求めておられるというのは参考になります。具体的な要請としては、第三者委員会への企業の全面的なサポートと適切な情報開示、そして社外役員の人選に関する考え方に関する十分な説明などが示されています(手紙を送付した不祥事企業からは、きちんとした回答が得られなかったことにも言及されています)。また、このような要請を行う根拠としては、

日本版スチュワードシップ・コード原則4-1は「企業価値が毀損されるおそれがあると考えられる場合には、より十分な説明を求めるなど、投資先企業と更なる認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである」と規定しています。パッシブ運用の投資家は、不祥事が発生した企業に十分な説明を求めるとともに、投資家が懸念する課題を伝えて課題認識を共有化し、改革を促し、企業価値の再生を支える役割が求められています。

と示されています。 「より十分な説明」の内容次第ではレギュレーションFDとの関係でルール違反にならない配慮が必要ですが、スチュワード株主の方々は業績だけでなく倫理的側面にも関心を向けておられるので、こういった手法も考えられるところです。

さらに、これは不祥事発生時の対話ではありませんが、10月1日に「株主総会で相当数の反対票が投じられた議案に関する原因分析と対応」なる書簡送付のお知らせが公表されています。近年、国内外機関投資家をはじめとする投資家・株主の議決権行使の活発化・厳格化に伴って、株主総会において会社提案議案に対して相当数の反対票が投じられるケースが増えていますが、その原因分析や今後の対応などについての説明が要請されています。こちらはスチュワードシップ・コードではなく、コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-1①が根拠として示されています(ちなみに2018年7月に改定された英国コーポレートガバナンス・コードでは、相当数の反対票の目安として20%以上の反対票が投じられた場合が想定されています)。

コーポレートガバナンス・コードのエンフォースメントについては、先日の日本内部統制研究学会でも少し話題になっていましたが、私は「対話」の存在が大きいと思いますし、そのためには機関投資家側の積極的な働きかけが必要です。ただ、機関投資家といってもスチュワード株主もアクティビスト株主もいらっしゃいますので、誰の反対票で相当数に及んだのか・・・という点には注意が必要ではないかと。「株主は一枚岩ではない」ということは、こういった対話でも心得ておくべきではないでしょうか(こういった対話の場では、会社側も「こんな株主に保有してもらいたい」という意思を示してもよいのではないでしょうか)。

協働対話フォーラムさんの代表者の方は、以前日弁連主催の社外取締役シンポジウムでもご一緒させていただきましたが、ESG投資にとても造詣の深い方だったと記憶しております。ポピュレーション・アプローチ(コードによる上場企業全体への働きかけ)だけでなく、ハイリスク・アプローチ(日本企業の「横並び主義」の傾向を前提とする、特色のある企業にピンポイントでの働きかけ)についてもパッシブ運用の機関投資家が動き出す意義は大きいのではないでしょうか。

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