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2018年10月19日 (金)

続・KYBの不祥事公表の姿勢-私は(やっぱり?)評価したい

昨日に引き続き、KYB社の免震装置偽装の件です。データが改ざんされた装置の交換には2年を要するとのことが報じられ、また株価についても東証1部最大の下落率となるなど、不祥事が経営に及ぼす影響は甚大なものとなっています。

ただ、コンプライ堂さんのコメントで初めて知りましたが、KYBさんは3年前の自動車部品カルテル事件でDOJから罰金の減額を受けていたようです。私も調べましたが(JCAジャーナル2016年6月号 51頁以下)、たしかに日本企業ではめずらしくDOJ(米国司法省)から「社長が率先して調査に協力したこと、コンプライアンス・プログラムの将来にわたる有効性が確認されたこと」を主な理由として罰金の減免を受けています(連邦量刑ガイドライン最大2億700万ドルのところ、6200万ドル)。なによりも、KYB社の経営トップの方がコンプライアンスを経営の最優先事項としたことが評価されています。

このJCAジャーナルの論稿でも解説されていますが、単に過去のコンプライアンス・プログラムに沿った対応が行われたとしても減額を受けることはできませんが、将来にわたるプログラムの内容が秀逸で、これを実行できる体制が認められた場合には減額もある、ということのようです。

「経営の最優先事項だったら、今回のような不正は撲滅されていたはずじゃないのか?」との批判もあり得るところですが、昨日のエントリーでも書きましたが、やはりKYB社の有事対応については(組織ぐるみでないかぎりにおいては)一応評価できるのではないかと思いますし、これからのステイクホルダーとの向き合い方についても誠実性が期待できるのではないでしょうか。

ただ、コンプライ堂さんやskydogさんもおっしゃるように、東洋ゴム工業さんの免震偽装事件が発覚した際、リスクの重大性を認識して「うちも大丈夫か?」とはならなかったのでしょうか?東洋ゴムさんもグループ総売上のうち、わずかな売上を占める部署で発生した不祥事でしたので、状況はKYB社と同様です。グループの小さな部署で発生した不祥事が、グループ全体の信用を毀損し、著しい損害を発生させてしまうリスクについては危惧していたところはあったのではないかと。どこの企業にも、同じようなリスクは潜んでいるような気がいたします。

グループ経営管理は、とてもゼロベースでリスク管理を考えることができない・・・ということを前提としますと、毎度申し上げておりますとおり「不祥事はかならず起きる、起きた時にどう対応するか」という点にも十分な資源を配分する必要があると思います。あの「ジャパネットたかた」さんでも法令違反に至る時代です。「有事において何を最優先で守るべきか」、平時のうちから経営陣で検討すべきです。

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コメント

テレビ報道の、「もうこんな不正にかかわるのは嫌だ」と上司に訴える社員、「まあ、不正と言われれば不正かもしれない」と回答する上司のやりとり。
不正に直面した時、多くの管理職や取締役は、トップは知らなかった事にすることが自分の役割だと考え、多くのトップもかつて自らもそのような役割を引き受ける者を高く評価する。まさに日本のガバナンスシステムの重大な欠陥が生々しく記録された第一級の証拠であると感じました。
録音した従業員こそ、公益通報者として日本中が感謝すべきではないかと思います。
公益通報者は、組織がまともになる迄の数年間は、組織内で生き辛いと思います。
公益通報者を行政や検察が証人保護するような法制度が整備されても良いのではないでしようか。
昨今日本のあらゆる組織で表面化している多くの国民に被害を及ぼすような不正を減らすためには、本気で公益通報者を保護する法制度が不可欠です。

投稿: たか | 2018年10月20日 (土) 00時06分

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