会社と意見相違した会計監査人の判断理由開示について(1)
(11月8日午前11時 最終更新)
今朝(11月7日)の日経朝刊において「『不適正決算』判断理由は?-金融庁、監査法人に説明求める」との見出しで、新たに金融庁内に設置された「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」が始動したことが報じられていました。第一回の懇談会資料もリリースされていますので、今後同懇談会で議論される予定の論点がわかります。いくつかの論点がありますが記事で紹介されているのは、会計監査において、会社と監査法人との意見が食い違った場合(たとえば会計監査人が財務諸表について「限定付適正意見」や「不適正意見」を付した場合など)、会計監査人はなぜ異論を唱えたのか、その判断理由を(会計監査人が)説明する(開示する)ような制度の是非を検討する、というものです。
このような制度は今のところ世界中探しても存在しないと思いますし(2020年3月期から早期適用が推奨されているKAM制度についてはすでに海外で先行していますが)、おそらく企業側からも監査法人からも様々な消極意見が出てきそうです。ただ、なぜこのような懇談会が立ち上げられ、監査法人の判断理由開示制度が真剣に議論されるに至ったのか、といったところは、(イ)東芝不正会計事件における二つの監査法人と東芝との監査意見を巡る不明瞭な問題が発生したことと、(ロ)この問題を受けて開催された経営財務3356号(2018年4月23日号)掲載の八田進二氏(青山学院大学名誉教授)と佐藤隆文氏(日本取引所自主規制法人理事長)との対談で、一定の問題整理が試みられたことが「きっかけ」になったのではないかと推測いたします(そこで議論されている論点が、審議資料2の論点表とピッタリ一致します)。キーワードを探すとするならば、数年前に国際的な倫理規則でも容認され、日本の倫理規則でも条件付きで容認されている「監査意見のセカンド・オピニオン」でしょうか。
私自身は、それほど違和感なく、この制度は経済的合理性あるものと考えておりますが、どのようなご意見が出てくるのか、今後の審議に注目したいと思っております。なぜなら、①市場の健全性確保の有効性・効率性を図ることは近時の会計不正事例の急増(昨年は不正開示事例が68件)という事態からみて当然ですし、また②会計監査の有効性・効率性の向上は、監査報酬がなかなか増えない日本の現状からみて、当然に実施していかなければ監査法人の経営維持は図れないからです。ではなぜこの制度が市場の健全性の有効性・効率性の確保、会計監査の有効性・効率性の向上に資するものとなるのか・・・、そこは「その2」以降で私なりの意見を述べたいと思います。
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