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2018年11月 6日 (火)

スバル検査不正-なぜ社内不正終結宣言後に不正が続くのか?

スバルさんの一連の検査不正については、これまで当ブログでは取り上げておりませんでした。しかし、各紙で報じられているとおり、スバルさんは「一連の車の検査不正に関連し、規程を逸脱したブレーキの検査を今年10月まで続けていた」として「新たに約10万台のリコールを国交省に届け出る」そうです(東京新聞ニュースはこちら)。スバルさんの車のエンジンは縦置きではなく横置きということで、リコールは普通の販売店では対応できないため、これまでのリコールでもかなりの時間を要するそうですが、またまた対応がむずかしくなりそうです。

なお、上記東京新聞ニュースによると、スバルさんは一連の不正は昨年末に終結していたと説明していた、とのこと。昨年10月に最初の無資格者による検査不正が発覚してから、1年が経過した今年10月まで不正検査は続いていた、しかも今回は国交省による調査で発覚した、というのはどう理解したらよろしいのでしょうか?日産自動車、三菱マテリアルでも同様の事態がみられましたが、非常に理解に苦しむところです。素直に「まだまだ出てくるんじゃないの?」と想像してしまいますので、業績にも影響が出そうですね。

ところでスバルさんは今年4月27日、①完成検査工程における燃費・排出ガス測定業務の運用状況の実態、測定値の書き換えに関する事実関係、②上記事実関係等の原因・背景の分析、③再発防止策の検討を目的として、こちらの完成検査時の燃費・排出ガス測定に関する調査報告書 (社内調査報告書)を公表しておられますが、この後、9月には社外の弁護士による調査によってブレーキ検査の不正が明らかになっていました(毎日新聞ニュースはこちらです)。

4月の社内調査報告書によれば、測定数値書換えの原因について、適正値の範囲に収まらない結果が出た場合には上司からその原因究明を求められるが、その原因究明には時間を要するために安易な改ざんに至ってしまったとあります。おそらく忙しかったりしますと、検査の公益性に関する規範意識が薄れてしまい、不正が恒常化していったものと推測します。ただ、そのような原因だったとすれば、たとえば昨年10月の不正発覚や今年4月の調査報告書の公表、さらには9月の社外弁護士による調査結果をきっかけとして、社内でも「きっちりやらないとヤバいぞ」といった雰囲気が漂い、これまで発覚していなかった検査不正もピッタリやめてしまうのではないでしょうか。その後も不正が続いていたというのはなんとも不思議です。

やはり「不正は起こしてはいけない」という経営陣の思いが社内に蔓延していた、ということでしょうか。不正防止にリスク管理の重点が置かれ、「不正発見」「不正は起きる。起きた時にどうすべきか」といったリスク管理の思想は希薄だったと解釈すべきかもしれません。ぜひとも、このあたりの社風に関連する構造的な要因について、関係者の方々からお話を聞いてみたいものです。

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コメント

次の11月1日発表のリコールなんですが、
https://www.subaru.co.jp/press/recall/2018_11_01_6443/
「原動機の動弁機構部において、設計が不適切なため、・・・当該スプリングが折損することがある。そのため、エンジンから異音が発生し、また、エンジン不調となり、最悪の場合、走行中にエンジンが停止するおそれがある。」

最悪の場合というのは、まずは起こりえないことと了解します。しかし、他のリコール原因と異なり、不適切な設計が理由となれば、検査ではチェックできない。
ユーザーに大きな不信感を与えると思うので、スバルには、このリコール発表で終わらせるのではなく、何故設計ミスが発生したのかを究明し、発表して欲しいと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2018年11月 6日 (火) 22時48分

ある経営コンサルタントさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。そうか、11月1日のリリースまではチェックしておりませんでした。たしか設計部門と品質検査部門との衝突・・・というのが他社事例でも偽装要因として挙げていました。設計にしわ寄せがいくと業績へのダメージが大きいので品質部門が偽装を許容したということも十分にありうる話ではないかと。設計の不適切さを掘り下げるとなると・・・根は深いですね。

投稿: toshi | 2018年11月 7日 (水) 11時41分

山口利昭先生
11/7の司法取引に関する記事を拝読しました。いつもながらの鋭い御指摘。確かにMHPSの事案は、制度施行よりも大分前から検察に申告して(自首に該当!?)捜査に協力してきたもののようですので、合意に基づく協力行為により「他人」の刑事事件の立証に必要な証拠を獲得したという関係には立っていないと思われ、制度の想定する適用場面ではないのではないかと見ております。
一点だけ、先生の御指摘で気になりましたのは、「取引を持ち掛ける企業側としても、『持ち掛けて失敗する』デメリットも十分にあるということを認識しておくべき」というところです。その場合のデメリットというのは、例えば、①黙っていれば発覚しなかったのに、協議申入れをしたがために発覚してしまったということでしょうか。しかし、合意には至らなくても自首には該当することになると思われますので、その意味でのメリットはあるのではないでしょうか。「黙っている」(隠ぺいとの評価もあり得る)ことのデメリットも同時に考えなければなりません。②他方、仮に自首に該当しない、つまり、捜査機関が既に端緒を把握していたという場合ですが、そのこと自体は被疑者には分かりませんので、申告しないということは、捜査機関から捜査を受けるかもしれないなとドキドキしながら座して待つということになります(あるいは結果として捜査が始まらないということもあり得るのですが(^^ゞ)。また、①と同様、後に隠ぺいというレッテルを貼られる危険性がございます。もちろん、①②どちらの場合も捜査が及んでから、検察の証拠収集の程度を推し量りつつ、合意制度への対応ぶりを決めるということもあり得るとは思います。ただ、検察として、合意制度を利用しなくても証拠が集まるのなら、それに越したことはないので、悠長に構えていれば、せっかくの合意のチャンスを失うリスクもあります。他社が絡んでいるケースですと、先を越されてしまうおそれも懸念されます。
さらに、合意制度を適切に利用しなかった場合の代表訴訟のリスクも考える必要があるように思われます(言わなきゃよかったのにということで、訴えられることは事実上考えにくいと思います)。
 いずれにせよ、個々の事案に応じ、具体的にメリット、デメリットを吟味し総合的に判断をしていくことが必要になることは先生御指摘のとおりだと思います。ただ、自社で不正を(自発的に)認識し、かつ合意の可能性があるのに、それを持ちかけないという選択肢は、そのメリデメを考慮すると、なかなか取りにくいのではないかと思います。仮に合意に至らずとも検察官の起訴裁量において有利な情状として勘案され得るという点もございます。
 的外れな点が多々あろうかと存じますが、なにとぞ御容赦ください。
 以上長々と申し訳ございません。

投稿: 山口幹生 | 2018年11月16日 (金) 15時02分

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