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2018年11月27日 (火)

ゴーン氏は自ら掲げた「日産リバイバルプラン」によって放擲された。

本件のエントリーを重ねるたびに、どうもミクロの視点になってしまって、普通のブログの読者の皆様にはわかりづらい話題ばかりに焦点をあててしまったようで反省をしております。ということで(?)、本日はもうすこしわかりやすい、といいますか、広い視野で今回の日産前会長金商法違反事件について眺めてみたいと思います。

昨年2月の当ブログのエントリー「日産自動車の次期社長は現社長ではなく取締役会が決めた?」におきまして、私は「カルロス・ゴーン経営論」(公益財団法人日産財団 監修)をご紹介し、ゴーン氏の経営論にとても感銘を受けた、と記しました。このたび同書を読み返してみて、私はゴーン氏が逮捕された今でも、その経営論については説得力のある内容と感じております。

ただ、いま読み返しますと、「有事にこそ問われる危機管理、レジリエンス(268頁以下)」におきまして、ゴーン氏が「有事にはレジリエントなリーダーでなければならない」と述べているところに関心が向きました。企業の再生にはターンアラウンドな戦略とリバイバルと呼ばれる戦略がある、これまで日産はターンアラウンドな戦略で危機を回避してきたが、自分はリバイバルプランを掲げた、ターンアラウンド戦略とは、資産を削減したり、従業員を削減したりして状況の悪化を食い止める縮小戦略であるが、その効果が続くのは2年か3年とのこと。

日産は1999年以降、リバイバル戦略をとり、V字回復を果たしたが、視野に入れているのは「元の日産に戻る」だけではなく「危機を経験してさらに強くなる(レジリエント)」ことであり、今(2017年)もその戦略の効果は及んでいる、とゴーン氏は語っています。2008年(リーマンショック)、2011年(東日本大震災)と、我々は厳しい時期を迎えたが、そこから脱却できたのも危機を経験して組織がさらに強くなったから、だそうです。

私はこのゴーン氏の危機管理、レジリエンスの考え方にはとても共感を覚えます。ゴーン氏の戦略は確実に日産に根付いた。つまり、日産が数度の危機に直面して、さらに強くなったからこそ、組織の有事において「変節したカリスマ経営者」を放擲することが可能になったのではないでしょうか。ゴーン氏が日産に根付かせたリバイバル戦略が、皮肉にも自身に退出を余儀なくさせるだけの組織に変えたのではないかと。上記「経営論」では、ゴーン氏はルノーと日産は統合してはいけない、と述べていたのですが、最近は(研究開発部門を統合するなど)言行一致とは言えない状況になっています。そもそもルノーと日産のCEOを兼務するあたりから、日産の幹部の方々が不信感を持つようになったのかもしれません。ゴーン氏を組織から放擲するためには、もはや「司法の力」を用いること以外には方法はない、といった判断に至ったのではないかと。

上記「経営論」では、ゴーン氏は「根っからのイエスマンはいない。それは企業が作り出しているのだ」(140頁)と力説しています。社員のモチベーションを高めて、企業改革を図る気持ちが社員に伝わり、今回の一連の流れを作り出したのかもしれません。また、志賀COO(当時)は、「ゴーン氏は本質と大義を重んじる」と評し、「燃費偽装のようなことは、企業の本質に反するもの」と考えていたことに言及されています(242頁)。にもかかわらず、このたびの燃費偽装事件でゴーン氏のコメントは出てこなかったことも社員の失望を生んだ可能性があります。もちろん、本事例をミクロの視点からすると数々の不正行為の疑惑があり、また、これを放置し続けていた取締役会のガバナンスの問題を指摘することも可能ではありますが、マクロの視点からしますと、「内部通報⇒不正調査チーム⇒司法取引の活用⇒ゴーン氏排除に向けた役員間の意思共有」といった一連の動きが、「ルノーと日産の統合間近」といった日産の一大事(有事)において自然発生したと評価できそうです。

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