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2018年12月11日 (火)

JICの取締役辞任問題-「ファンド」の仕事はアートである。

本日(12月10日)の日経夕刊トップ記事によりますと、産業革新投資機構(JIC)の社長ら9名の取締役の皆様が辞任をされるそうです。高額報酬の件、経営への行政関与の件などが端緒となって経産省とJIC経営陣との信頼関係が毀損されたものと報じられています。辞任を決意された社外取締役の方々のコメントがこちらに掲載されておりますが、約束を守らなかった経産省へのご批判が強く、なかなか厳しいご意見ばかりです。

私も今年6月まで約4年間、官民ファンド(大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社)の社外役員を務めていましたので、経産省とJICの対立について、守秘義務に反しない範囲で(私の個人的な)感想だけを述べたいと思います。

私も自分が官民ファンドの仕事をしていなければ「役員の基本報酬5,500万円は高いなぁ」と感じたと思います。ただ、ファンドの仕事は「引き受け仕事」ではなく、「モノを作る仕事」なのです。決して「モノ作りのお手伝いをする仕事」ではありません。それは伊藤忠ご出身の阪大ベンチャー初代社長の仕事ぶりをみていて痛感しました(恥ずかしながら、私の認識不足で関係者にご迷惑をかけたこともありました)。投資ファンドの仕事は、過去の経歴やスキルによって「国策を引き受ける」仕事ではなく、過去の経歴やスキルを参考にしながら「自ら仕事を作ることによって有望企業を世に生み出す」仕事だと認識しています。

ハンズオンによって人間関係を調整し、シーズから現実世界における利用可能性を発見し、その汎用性や流通可能なコスト低減の手法を生み出すという、総合力が必要とされる仕事だと思います。運がよければそこから上場を目指すことのできる(つまり投資回収を図ることができる)ビジネスが誕生するわけで、損を承知で試行錯誤を繰り返すことは不可欠です。また、結果にコミットしなければならない人たちが集まっていますので、職員の離合集散は激しく、これを束ねるプレイングマネージャーとしての中間幹部の人たちは激務です。ファンドのガバナンスということが言われますが、実際にはその運用はむずかしい。

経産省とJICは「投資事業という金融機能を活用し、将来の産業競争力を強化し、新事業を創出する」という理念を共有するとことでは一致していたものの、ファンドという仕事が「引き受ける仕事」なのか「作る仕事」なのか、という点において認識に不一致があったのではないでしょうか。アートに近い仕事なので、そもそも代替できる人を探すことは困難ですから高額報酬は当たり前ですし、アートに行政が関与するということであればファンド関係者が拒絶反応を示すことも当然ではないかと思います。また、アートであるがゆえに関係者の「情熱」が失われれば仕事は頓挫すると思います。今回の一件は、官民ファンドの性格を一定の枠に閉じ込めてしまうものであり、ファンドの「モノ作り」としての仕事を否定することにつながりかねないものと危惧します。

私は、経産省の上記理念自体を否定するつもりは全くありません。ただ、それであれば(ファンドによる投資事業にこだわることなく)企業が仮想通貨建てでお金を集めるような、いわゆるICOなどの最新資金調達方法のインフラを整備して、その普及を図るような政策を推進すべきではないかと。もしくは、今後も官民ファンドを産業競争力強化のために活用するのであれば、「国民の納得が得られない」などと言い訳をするのではなく、ファンドの仕事を国民に理解してもらえるように広く説明をすることから始めるべきではないでしょうか。

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コメント

ファンドの仕事は、透明性とか説明性という概念、これの言葉を言い換えれば、お役所仕事とは相いれない部分があるということではないでしょうか。それなら、国がファンドにお金を入れる官民ファンドなど作らず、ファンドの運営者の法人税を軽減するとか、ファンドを間接的に国が支援するというスキームを作るべきだったように思います。あるいは、経産省は、役員の人事にだけ関与して、「あの人に託したんだ」ということで、透明性などは問わないと腹を括るとか。

投稿: ひろ | 2018年12月11日 (火) 14時59分

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