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2018年12月20日 (木)

見えてきた公益通報者保護法改正の方向性と企業の体制整備の責任

本日は内部通報関連のエントリーです。ひとつめの話題ですが、本日(12月19日)、内部通報制度の自己適合宣言登録制度に関する取扱いの概要が公表されました(消費者庁のHPはこちらです)。指定登録機関は商事法務研究会さんに決まったようですね。また商事法務研究会さんのこちらのHPに、制度概要説明会の開催要領が掲載されています。申込受付は来年の2月から、とのこと(私も大阪の説明会に行ってみようかな・・・)。

そしてふたつめの話題ですが、試行錯誤者さん、たかさんがすでにコメントされているとおり、昨日(12月18日)、内閣府消費者委員会 公益通報者保護専門調査会の審議において、最終報告書(案)が部会資料として公開されました(すでに同調査会HPにアップされております)。今後の公益通報者保護法改正の方針を示す報告書でして、さっと一覧しましたが、報告書の内容につきましては(7月に出された中間整理案と比較したうえで)また詳細に別途エントリーしたいと思います。

たかさんをはじめ、これまで長年にわたって公益通報者保護法の実効性確保に向けて尽力されてこられた方々から、こちらのニュースにもあるとおり「改正の方向に失望した」「経済界や労働組合の意見が大きく反映された内容」との意見が多く出されています。実務が積み重なったうえで、施行から13年が経過した初めての改正ということなのに、これだけかよ!っというところがご批判の趣旨でしょうか。なんといっても通報者に不利益処分を行った企業に刑事罰や行政罰が課されることにならなかった点を上記ニュースでも大きく報じています。

多くの弁護士委員の皆様とは意見が異なりますが、企業コンプライアンスや内部統制を推進するために改正を要請してきた私からしますと、まずは公益通報者保護法と内部通報制度が(内部通報制度の整備義務の履行確保の手段を通じて)初めてつながることになる「改正の方向性」については歓迎いたします(ただし体制整備義務が課されるのは従業員300名以上の事業者であり、300名未満の事業者は努力義務とのこと)。企業の自浄能力など期待できない、期待できるのは刑事罰のみ・・・といったご意見もありますが、私はこれからも企業の自浄作用を発揮できるような通報制度の運用に尽力していきたいと思っております。

なお、消費者庁の公益通報者保護実効性検討会の一員として一言申し上げるならば、公益通報者保護のためには法改正もひとつの方法ですが、民間事業者向けガイドラインや行政機関向けガイドラインの実施を促し、冒頭に述べたような認証制度を充実させることで、企業の自浄能力を高める施策も(法改正と同じくらいに)重要と認識しております。すべてが公益通報者のさらなる保護と企業コンプライアンスの実現に向けた施策であることを多くの方にご理解いただきたい。

昨日の読売新聞では、ある自治体が公益通報者保護法の趣旨に反した内規を定めていたことが明るみになりました。また、本日のニュースでは森永乳業さんがグループ会社の社員からパワハラ通報を受理していたにもかかわらず、同社員がグループ会社から報復(不利益処分)を受けたとして(グループ会社とともに)損害賠償を求める訴えを提起されたことが報じられています。法改正への期待が高まる中、上記ニュースによりますと、来年(2019年)の通常国会に改正法案を提出する見込み、とあります。ただ、この報告書を読みますと、かなり法技術上の最終整理が要請されていますので、法案作りは急を要するところかと。

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コメント

山口先生 いろいろとお世話になりましてありがとうございました。ここ数年間、毎年来賓者である消費者庁長官よりお話を拝聴する機会がありました。今年はその会に長官は欠席されておりました。・・・今から、四半世紀前になりますが、私は、製造物責任法が施行される前夜となるタイミングで、竹内昭夫教授が学外への声かけでオムニバス式により、法案に関わった立法実務者、学内外の教授・助教授が講師を務めるという夢のような正課授業を履修することが出来ました。その授業で鮮明に覚えているのは、星野英一放送大学教授と竹内教授が、私たち社会人夜間大学院生をお叱りになるという場面がありました。(私の個人的意見でありますが)お二人は、ありとあらゆる審議会や小委員会で様々な改正・修正案を議論するたんびに後出しジャンケンで反体勢力により反対されて、(ことごとく闇に葬られてしまったことで)悔しい気持ちから、私たち有職者院生を叱ったのではないかとご推察致します。叱るという行為も、現役学生向けではないリカレント教育に必要とお考えになって、ワンパッケージで提供されたのだと私は考えています。天国にいらっしゃる竹内教授にありがとうございましたとお伝えしました。

投稿: サンダース | 2018年12月20日 (木) 07時36分

サンダースさん、ご無沙汰しております。消費者保護関連だけでなく、会社法の世界でも官僚主導(政治主導?)による法案作成の傾向が以前にもまして強くなっていると思います。
ただ有識者(学者)<法務省(官僚)といった図式だとそうなのですが、国民>法務省という図式もあると、最近の刑法関連の改正作業をみていて感じるところです。法務省を動かすのは(世論に後押しされた)法律を知らない素人委員の力です。公益通報者保護法も、まずはどんな改正内容であろうとも、認知度を上げること、活用事例を増やして不便さをアピールすること、そして最終的には消費者の利益向上につながる制度であることを知ってもらうことが前提だと考えます。そのために、私はこれからも尽力したい所存です。

投稿: toshi | 2018年12月20日 (木) 11時16分

お仕事中に申し訳ないと思います。
12月26日10時に「第24回公益通報者保護専門調査会」が開催されると内閣府でも公表されたので申し込みしました。
本日21日は消費者団体の「公益通報者保護」意見交換会に参加したところ、18日の「23回調査会」山本座長の冒頭あいさつ、(感極まった)絶句の瞬間(林委員の心配そうな様子)に肯定的な意見が寄せられ、消費者庁の説明には是非の意見がありました。
ネットでの意見についても質問・意見・回答があり有意義な意見交換会でした。

「行政機関から要請を受けた場合の通報に係る内部資料提出」への対応についての質問には、明確な回答は得られませんでしたが致し方ないと思いました。

投稿: 試行錯誤者 | 2018年12月21日 (金) 17時50分

通報者に不利益処分を行った企業に刑事罰や行政罰が課されることにならなかった、という店で安心されている企業の方が多いと思いますが、実際は反対ではないでしょうか。
 不祥事を早期に発見して自浄作用を発揮しないと、会社の名誉が地に落ちる、社長の顔に泥を塗る(下町ロケット参照)ことになり、そのために公益通報は社長さんにとって伝家の宝刀なので、それを放棄しちゃっていいの?と思っています。
 内部通報によって不利益を被るので反対するのは、本当のトップではなく、中間管理職やトップ以外の役員ではと思いますので、トップの方は、本当に何が大切か考えていると思いたいです。

投稿: KAZU | 2018年12月26日 (水) 11時24分

本日12月26日の「第24回公益通報者保護専門調査会」、NHKや朝日新聞のネットニュースが流れ始めていますが「第23回」の報告書案と大筋変わりません。
「全会一致でない場合は反対意見を記す」というスタイルを貫く方針は明確となりました。
むしろ山本座長が急遽欠席になったことに傍聴席は驚いていました。
またヤフーニュースの記事、「3号通報のハードルが高くなった」という部分には委員や事務局から異論も出ました。

私が悔やんでいるのは明日27日に開催される第289回消費者委員会本会議で本調査会の報告予定があるのに16時までに傍聴登録できなかったことです。
本日午前中(調査会開催中)に明日の本会議開催案内が掲載されたらしく気づきませんでした。明日の会議が今日告知されるのはなかなか無いことです。それだけ総理大臣への答申に向けてバタバタしたのでしょうか?

投稿: 試行錯誤者 | 2018年12月26日 (水) 22時31分

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