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2018年12月 4日 (火)

ゴーンショックが今後の法制度に及ぼす影響について(個人的意見)

日産の前会長が逮捕されて2週間が経過し、検察の立件に向けての動きとともに、ルノー・日産・三菱の三社連合の「経営の舵取り」に関心が寄せられるようになりました。このような状況において時期尚早ではありますが、今回の逮捕劇が(ひょっとすると)日本の法制度に大きな影響(変化?)を及ぼすのではないか・・・といった将来予想が法律家の間で交わされるようになりましたので、個人的な意見として述べておきたいと思います。

ひとつはなんといっても「報酬ガバナンス」の進展ですね。日曜日(12月1日)の日経一面トップに「役員報酬 きしむ日本流-「ゴーン問題」で注目 水準・透明性に課題」との見出しで報じられている問題です。企業統治改革は5年目となり、改革が「形式から実質へ」と深化していることは事実です。ただ、その中でもっとも「実質へ」と深化していないのがCEOの選解任プロセスの透明化以上に役員報酬改革です。ガバナンス・コードの施行によって「報酬委員会」を設置した企業は増加していますが、ではその報酬委員会が何をやっているのか・・・、コードが要請する趣旨を実現している報酬委員会を運用している上場会社は、おそらくコンプライしている会社の1割にも満たないはずです。

また、会社法改正審議の中でも議論の対象となった「株主総会で取締役報酬の上限枠だけ決めておけば(つまりお手盛り防止の趣旨さえ満たせば)、報酬に関する株主のコントロールは及ぶのか・・・という点についても深化した議論が期待できるのではないでしょうか。最近、有力な学者の方々から「取締役会から代表取締役への個別報酬額決定の再一任は(利益相反行為の防止という観点から)おかしいのではないか」「もし再一任するのであれば、どのような算定基準による一任なのか開示すべきではないか」との意見が出るようになりました。しかし実務はほとんど「再一任→社長に包括的委任」で動いています。今回のゴーンショックによって、まさに「再一任」はガバナンス改革に逆行したものであることが露呈されたのでありまして、会社法改正の流れにも影響が出るのではないかと。

そしてもうひとつの課題が日本の刑事司法制度の在り方です。先週のエントリーで日本版司法取引は「証拠の客観化」「取調べ偏重の捜査防止」に資するものとの個人的意見を書きましたが、それでも現実には「(日本版司法取引は)供述誘導の恐れを顕在化させる」といった(もともと懸念されていた)デメリットを強調する報道が増えています。海外からも日本の「人質司法」への批判が高まる中、近畿弁護士連合会では(11月30日)、弁護士の取調べ立会の早期実現を目指すシンポジウムが開催されました(近弁連は弁護士立会制度の確立を求める決議を採択)。いわば外圧を受けて刑事訴訟における人権保障の風が吹きつつあるのが現状です(正直に申し上げて、この流れを私はまったく想定しておりませんでした)。

一老さんがコメント欄で書いておられるように、今後の立件・公判の流れの中で、会計の世界における「相対的真実」と法律の世界における(フィクションとしての)「絶対的真実」とのブレが(長銀事件・日債銀事件や三洋電機事件のときと同じように)顕在化し、金商法実務に混乱を生じさせる可能性もありそうです。日産前会長・金商法違反事件は、今後の立件に関連する関心とは別に、本件から派生する影響がどこにどれだけ及ぶのか、といったことへの関心も高まってきたように感じます。

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