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2018年12月27日 (木)

上場会社の社外取締役は本当に役員報酬に関与しているのだろうか?

日産前会長の金商法違反事件や産業革新投資機構の高額報酬問題など、近時は役員報酬が話題となっています。そんな中で、12月21日の日経朝刊において、「社外取締役の22パーセントが役員報酬決定に関与せず」なる民間調査の結果を報じています。

KPMGジャパンさんの調査(東証1部上場企業の社外取締役585名の回答)によりますと、2割強の社外取締役が「役員の報酬決定には関与していない」と回答されたそうです。上記記事では「こんなに多くの社外役員が関与していない」といった論調ですが、むしろ私の驚きは、逆に8割もの社外取締役さんが報酬決定に関与している、と回答されていることです(うーーーん、ホンマに?)。私が知る上場会社では、取締役会で「具体的な報酬配分は社長に再一任する」といった決議をするところが多いので、この回答結果についてはかなり意外でありました。たしか直近の東証調査では、1部上場企業の4割に任意の報酬委員会が設置されているそうなので、「まぁ5割くらいは関与しているのかな」といったイメージでした。

私なりにこの調査結果を解釈しますと、まずこういったアンケートに回答される社外取締役さんはかなり「前向きな」方であり、社外取締役全体を反映しているとはかならずしもいえないのではないか・・・と思われます。ガバナンス・コードに「コンプライ」している会社も多いことから、関与していないとは回答しにくい面もあるかもしれません。

一番の問題は、「関与」といいましても、いったいどのような関与をされているのか、という点です。独立公正な立場の社外取締役が報酬決定に関与するのは、そのプロセスの透明性を高めることに意味があります。そうだとすえれば①報酬基準の方針決定に関与する、②業績連動における報酬への業績反映の決定過程に関与する、③社内報酬決定方針に従って、個別取締役の具体的な報酬額を決定する、といったいくつかの関与方法があると考えられます。

しかし①~③の決定関与のレベルは相当に異なるわけでして、関与の方法次第で職務に要する時間も、社内取締役との軋轢が生じる可能性も大きく差が出ます。また、その差はハッキリと取締役会の実効性評価にも影響を及ぼすはずです。有価証券報告書において、役員報酬の決め方の開示が厳格化するそうですが(たとえば産経新聞ニュースはこちら)、社外取締役がどのような方法によって役員報酬の決定に関与しているのか、できるだけ詳しく開示することで、会社と株主との建設的な対話を実現する必要があると思います。

オムロンさんや資生堂さんのように、報酬決定方針を詳細に開示する企業も同様だと思うのですが、社外取締役が報酬決定に関与するためには、そもそも取締役の指名や業績評価にも関与していなければ困難です(監査等委員会の職責をみれば当然ではないかと)。当該会社がどれほどコーポレートガバナンスの構築に力を入れているか・・・というのを判断するにあたっては、当該会社の役員報酬決定への社外取締役の関与方法をみるのがポイントだと考えております。

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