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2019年1月21日 (月)

内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)が2月以降実施予定

最近は「内部通報制度」といえば公益通報者保護法改正の話題が多いのですが、同法改正法案はおろか(上場会社等に社外取締役を義務付ける)会社法改正法案すら今年の通常国会では提出されない見込みとなってきましたので、本日は制度認証に関する話題です。旬刊商事法務の新春合併号(2187号)に掲載されておりますが、内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の登録申請が、いよいよ2月以降に開始されるそうです(同誌121頁以下)。昨年12月、商事法務研究会さんが制度運用を統括する指定登録機関に選定されましたので、告知の意味も含めて「トピック」として掲載されたのかもしれません。

なお、内部通報制度認証の登録への流れは商事法務研究会さんのこちらのHPで解説されています。認証登録の有効期間はどのくらいなのか、同一の法人に複数のヘルプラインが存在する場合には個別で登録しなければならないのか、親会社と子会社は別々に認証を得る必要があるのか、第三者認証制度は自己適合宣言登録を経なくても申請できるのか・・・など、かなり有益な情報がQ&Aに掲載されています。

先週、消費者庁に伺った際に職員の方からお聴きしましたが、商事法務研究会さん主催の登録申請説明会(東京会場)は午前も午後も満員札止めの盛況だったようで、やはり企業の関心の高さが窺えます。大規模、中規模、小規模の区分で認定レベルも異なるようですし、また会社だけでなくNPOや学校法人なども登録申請ができますので小さな組織にも普及してほしいですね。幸い大阪会場の説明会はまだ空きがありましたので、なんとか時間を作って説明会に参加してこようと思います。

私のコメントも掲載されましたが、1月14日の朝日新聞朝刊(東京版)記事によりますと、内部通報制度を強化した日産さんでは、1年間に全世界で1000件以上の内部通報が社員から寄せられたそうです(2017年ベース)。このたびの前会長さんの件では内部通報が届いて社内調査に至ったそうですが、たしか無資格検査事件では一件も内部通報が届いていなかったようです。つまり、日産社内で長年にわたって続いていた重大な不祥事については通報制度がタイムリーには機能していなかったといえます。ガバナンスを補完するための内部通報制度の必要性を感じます。

このように、件数だけをみれば内部通報制度が機能しているようにはみえますが、その運用をみると機能不全に陥っていたとも評価できそうで、内部通報制度の評価というのはなかなか難しいですね。実効性という意味からすれば「不正の早期発見」のために有効かどうか・・・というところばかりに目がいきがちですが、実は「不正の予防」に活かすための組織風土の醸成に有効という見方、「有事対応」における信用回復に有効(たとえばリニエンシーや司法取引、連邦量刑ガイドライン等)という見方、そしてマネジメントのためのレポートラインの実効性確保の視点こそ評価すべき、という意見もあり、実効性の評価にも様々な視点があります。

改正独禁法の確約手続(事前相談制度)や、働き方改革関連法施行後の罰則付き違法行為への是正勧告など、内部通報制度が機能したことで命拾いする企業が今後たくさん出てくると思いますし、だからこそ制度構築における実力の差は大きく開くことと思います。非財務情報の開示が推奨される時代において「不正が発生したときの企業対応」という、目に見えない企業価値(組織風土)をステイクホルダーに「見える化」する意義は大きいです。認証のための審査は内部統制や内部通報制度に精通した有識者の方々が行う・・・と上記HPでは説明されていますが、どういったところにポイントを置いて評価するのか・・・、今後いろいろな試行錯誤の中で運用が向上することに期待をしています。

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コメント

1月16日午前の部で、商事法務研究会さん主催の登録申請説明会(東京会場:秋葉原【満員御礼】)に参加しました。
遠藤弁護士による前半のご講演ではコーポレートガバナンス・コード【原則2-5】の説明もあり、質問時間に【補充原則2-5】社外取締役・社外監査役への通報ルートについて質問し回答いただきました。
私がバイブルとしている「企業の価値を向上させる実効的な内部通報制度」36ページを見ながら記述しています。
2015年のコーポレートガバナンス・コード策定以前の2012年より社外取締役・社外監査役に通報しており、昨年あたりからようやく理解されてきた感じがします。
1月14日の朝日新聞朝刊記事は一昨年10月にSMBCホールで山口先生とパネルディスカッションされた奥山編集委員によるもので、手元で熟読しています。

3月には東京三会主催の「公益通報制度の新次元」シンポジウムが開催される予定であることが12月の日弁連シンポジウムで紹介されました。
消費者庁消費者制度課企画官によるご講演と、消費者庁「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」委員であった水尾順一先生、内閣府「公益通報者保護専門調査会」委員、大阪弁護士会、H弁護士、上述の遠藤先生によるパネルディスカッションも予定されています。
16日には水尾先生と遠藤先生に挨拶しました。

山口先生が2014年、消費者庁「公益通報者保護制度に関する意見聴取(ヒアリング)」アドバイザー時より検討会、ワーキング・グループ委員を歴任されていたことは存じていますが、現在も消費者庁と話し合いをしていることを拝読し嬉しく思いました。

投稿: 試行錯誤者 | 2019年1月22日 (火) 19時25分

昨日1月23日、消費者庁HPにて「公益通報者保護専門調査会報告書」に関する意見募集、すなわちパブリックコメント募集が発表されました。
募集期間が2か月以上あります。
報告書をまとめた内閣府消費者委員会による内閣府のパブコメになるのかと思っていたら、保護法の所管である消費者庁消費者制度課のご担当です。
ここであらためて認識したのは、「公益通報」というのは「消費者を守る」ためのものであるから消費者庁の所管だということです。

個別論点について、意見の【対象項目(番号)】【内容】【理由】を明示することが必要で、ネットだと字数制限があるので【項目】を変えて複数回送信できるようです。消費者庁の方にも問合せしました。

認証制度の件も公益通報者保護法の実効性の向上も、消費者庁殿がご尽力しておられるので、私もパブコメなど微力ながら協力いたします。

投稿: 試行錯誤者 | 2019年1月24日 (木) 10時45分

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