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2019年1月15日 (火)

代表取締役の報酬決定過程への関与は甘くない!(と思う)

代表取締役の報酬決定過程の在り方について、個別事件でも会社法改正審議の中でも話題になっています。またグループガバナンスの一環として、グループ企業の役員報酬の決め方についても経産省「ガバナンスシステム研究会」で議論されているようですね。本気で企業統治改革を進める(深化させる)ためには、代表者の選解任過程とともに役員報酬の決定過程を公正なものにすることが求められています。

ということで、日産前会長さんの高額報酬とガバナンス・・・という点も問題となるわけですが、以前どなたかがコメント欄で紹介されていた(代表取締役の再一任決議に基づく高額報酬が問題となった)平成30年9月26日東京高裁判決を(全文)読みました(金融・商事判例2019年1月1日号)。自動車部品メーカーであるY社の会長さん(当時)が14億円の報酬を受領していたのは、会社の低迷した業績の中で株主の委任の趣旨を超えている、そもそも取締役会が再一任したこと自体、他の取締役にも善管注意義務違反が認められる、として株主代表訴訟を提起した事件の控訴審判決です(地裁判決も平成30年4月に出ています)。

結論からいえば

・取締役の報酬総額の限度額を定め、その具体的配分を取締役会に一任する旨の株主総会決議と各取締役が受けるべき報酬額の決定を代表取締役に再一任する旨の取締役会決議により、その報酬額の再一任された代表取締役は、具体的な報酬額を決定するにあたり善管注意義務及び忠実義務を尽くす必要があり、これに違反すれば損害賠償責任を負う。ただし報酬決定に至る判断過程や判断内容に明らかに不合理な点がある場合を除き、そのような義務違反は認められない。

・報酬決定が、株主総会への提案理由などに照らして、株主の合理的な意思に反するものとは認められない。

というものであり、まあまあ妥当な結論ではないか・・・とも言えそうです。ただこの判決文を読む前は「創業家会長さんの報酬なんて誰も咎めることはできないよね」と思っていたのですが、意外と他の取締役さんたちが頑張っていたことがわかります。取締役報酬枠が10億から30億に定時株主総会で増枠されたのですが、最初は50億に増枠する方針を、かなり強い反対意見で否決し、増枠自体にも最後まで反対意見が取締役会で出ていたようです(最後は30億に落ち着いたようです)。また、会長さんは報酬素案段階では28億円程度の報酬決定に至る予定だったのですが、これも多くの取締役の反対で14億円に決まりました(法務部門も強い反対意見を述べています)。いったん14億に落ち着いたものの、また会長の気持ちが変わらないかどうか気をもんでいる役員の行動も、判決文に如実に示されています。みなさん「覚悟」をもって会長さんの報酬決定に真正面から向き合っていたのであり、本当に役員報酬に取締役会が関与する、というのは厳しい職務であることがわかります。

日産の利益は当時、Y社の40倍であるにもかかわらず、Y社の会長さんはゴーンさん以上に報酬をとっていたとしていろいろと批判の対象にはなったようですが、内情はかなりガバナンスが機能していたものと思われます。今回の日産の事例においても高額報酬に目が奪われがちですが、このY社のように、高額ながらも日産による一定のコントロールが効いていたのかどうか・・・私はそこにとても関心がありますね。

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コメント

日本は歴史始まって以来、徐々に症状は緩和されてきているものの、基本的には高額報酬アレルギーです。
わたしなどはむしろ、高額報酬をもらいたければもらえばよいと思います。ただし報酬を貰う以上、見合った権限と責任を負うべきというシンプルなことが欠けている、それが日本の経営者報酬議論の問題だと思います。
取締役会の全会一致でしか物事を進められないトップは、高額報酬をもらう根拠に欠けていると思いますし、ゴーンのような経営者は、リスクにさらされているぶん、高額報酬をもらう理由があると思います。
政治家の給料も同じで、議員報酬カットなどチマチマやってないで、国民のために働くのなら沢山もらってしかるべきです。
報酬額の妥当性について、儲かっていれば、という視点がクローズアップされがちですが、報酬、責任、権限を合わせて議論するのが妥当です。

投稿: JFK | 2019年1月16日 (水) 08時53分

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