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2019年1月17日 (木)

東証・市場区分の見直しと社外取締役の複数化

日産の前会長の保釈許可申請が却下され、身柄拘束は長期化するのではないかと予想されています。ただ、このたび保釈が認められなかったのは、追起訴されるべき「余罪」(候補?)がいろいろと報じられているので、そこから未だ証拠隠滅のおそれありと判断されたものと思います。そこで、公判に向けて起訴されるべき事実も固まっていけば保釈は認容されるものと予想しています。したがって今後は弁護人らが頻繁に保釈申請を行うのではないかと。

(ここからが本論ですが)すでに各紙で報じられていますが、今年の通常国会に提出が予定されている会社法改正の要綱案が公表されましたね。日経新聞ニュースでは「社外取締役を義務化」との見出しで、主に上場会社を中心に、大規模な会社では社外取締役1名以上の選任が義務化されることになりそうです。

ただ、すでにほとんどの上場会社に社外取締役さんはいらっしゃいますので、「1名以上の社外取締役の選任義務化」といっても(機関投資家の皆様には)それほどのインパクトはないかもしれません。むしろ、本気で取締役会の性質をオフィサーの集合体から社長の選解任を果たせるマネジメントチームに変えるためには「何名の社外役員が必要か・・・」といった議論が必要な時期にきていると思います。

1月10日の読売新聞では、野村総研の大崎フェローが「東証市場の再編、特色作りが必要」との見出しで、東証による市場区分の見直しへの要望を出されており、なかでも「プレミアム市場」として日本を代表する400社ほどを選定してはどうか、その選定にあたっては時価総額だけで選ぶのではなく、ガバナンス評価なども含めて選出すべきではないか、との意見を述べておられます。JPX400との関係でどれだけ存在価値があるのか・・・といった意見もあるかもしれませんが、基本的には賛成です。

さらに、せっかく会社法も改正されて社外取締役の義務化が施行されるわけですから、私は市場区分の見直しとともに、そこに複数の社外取締役の選任義務(東証ルールに基づく)を盛り込むべきではないかと考えます。大規模な会社であるほど、指名や報酬、監査などに機能する社外取締役が要請されるわけですから、たとえば「プレミアム市場」に区分された上場会社には少なくとも3名以上の社外取締役を選任すべきだと考えます。また、単なる社外取締役ではなく、独立した非常勤の取締役の要件を明確にすべきです。

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コメント

取引所が直接的に企業のガバナンス体制を評価することは日本経済へのリスクが高く賛成できないなあと感じます

現状粉飾決算等が発生した場合、とりあえず企業は監査法人をすげかえて当面の対応をとった体をとりつつ、会計士協会や金融庁が監査基準を見直して高度化を図るという流れかと思いますが、取引所が優れていると評価した企業がしくじった場合、日本取引所(東証・大証)が実質的に日本唯一ですので、同じ基準で評価されている他の企業すべてが直接的でかつ逃れられないダメージを受けるのではないでしょうか(実際、カネボウ、足利銀行、JAL、オリンパス、東芝、日産と、数年に一度はいわゆる一流企業で粉飾決算等ガバナンスに係る問題がおきていることからも、事前の外形的体制のみで防げるものではないことは言うに及ばずです)

そもそも、かつて情報が紙ベースで取得や分析に時間やコストが膨大にかかった時代であれば一部二部等の区分も有用であったかと思いますが、誰でもネットでデータを取得して手元PCで分析できる時代に、市場区分はせいぜい興業促進のための新興市場を分ける程度で、あとは全部ひとまとめでよいのではないかと考えます

投稿: unknown2 | 2019年1月17日 (木) 16時33分

ガバナンスの自律的再生が難しくなっている上場会社の改革を促す必要性は高いですね。
いくつかの上場会社に所属した経験から思うには、上場後さほど年月の経っていない若い会社のほうがガバナンスの室が高いということです。たとえば上場後50年以上も経つと、真剣に会社づくりをした創始者の息づかいは消え去っており、出来上がった器に後から乗っかって入ってきた人材が入れ替り立ち替わり、つぎはぎのように仕組みをいじったり、小さな例外、大きな例外などを積み重ね、誰もコントロールできないガバナンスが横たわっている。歴史ある会社、有名大企業の実情ではないかと思います。
要は、その時々の上場審査という試練を受けるべきということです。士業でいう資格更新試験、実務検査のようなものにより、上場資格のリフレッシュ化を推進するべきだと考えます。そういう意味で東証一部の選別は非常に大事なことです。ただし、一時的なものにせず、例えば5年ごとに検査を受ける、臨時検査もあり得るといった制度が必要かと思います。これができれば、もしかすると監査役なんか不要になるかもしれません。

投稿: JFK | 2019年1月17日 (木) 22時06分

上場企業の多くが監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行している点が気になっています。

前者の場合、社外監査役2名と社外取締役1名、計3名の社外役員を最低限置かなければなりませんが、後者の場合社外取締役2名で足りるので、社外役員の最低人数が少なくなってしまいます。

また、監査等委員会の場合は各監査委員は独任制のある機関ではなく委員会の決定に従う必要があり、常勤の監査役を置く必要もありません。

以上から監査等委員会設置会社ではガバナンスの弱体化が懸念されており、実際に組織変更に反対する海外機関投資家が出たり、議決権行使助言会社の代表が「私たちがガバナンスの面で『悪い』と分類する会社に限って監査等委員会設置会社に移行している」と苦言を呈するなどの動きが見られています。
https://business.nikkei.com/atcl/skillup/15/275626/071500016/?P=3&mds

今回の社外取締役の義務化も、既に社外取締役を置かない場合の説明義務が課されており、監査等委員会設置会社に「逃げられる」状況下では全く意味が無いと思います。

投稿: unknown4 | 2019年1月18日 (金) 00時27分

山口先生のエントリーはじめ、私や皆様のコメントは、主に新聞や業界誌等の「印刷物」を参考に加えた記述が中心ですが、(このコメント/1月18日早朝)NHK総合の朝の時間帯に、「あさイチ(8:15〜)」という番組があります。
そこに、かつて逮捕・起訴/長期身柄拘束後に無罪になった元厚労省の村木厚子女史が本日出演予定です。ご退官後の2016年に伊藤忠商事社の社外取締役をご経験されているのでここにコメントを記しました。主に主婦視聴者対象内容ですので、話の内容は未知数ですが。
村木女史の関連書籍を読んだ一人として昨年11月下旬にコメントを記させて頂いた事もあり、村木女史の出演背景/この時期でのタイミングが意味するもの…等に興味を抱きつつ、放送時間帯=8:15〜9:45内のどこに出演されるかは生放送で流動的ながら、拝視聴させて頂こうと思っています。
村木女史の当時の勾留期間は164日と紹介されておりますが、NISSAN元会長との比較がされる事も予想される背景…そして、番組進行/ディレクター諸氏が番組構成において、女史の社外取締役経験等に触れるかどうかに、注目したいと思っています。
阪神淡路大震災から24年と一日が経ち、亡くなった方々のご冥福を祈り、国土強靭化への想いを再認識しているタイミングで、村木女史の元職場(厚労省)では別件の不祥事が「激震」状態となっている様です。生放送の筈ですので、その件についても述べられるかも知れません。

投稿: にこらうす | 2019年1月18日 (金) 05時18分

取締役会を国の機関に例えると何か、という点が、アメリカと(今までの)日本とでは捻じれていることが、議論がかみ合わない原因のように感じます。
日本では「内閣」に例えられるのではないかと思います。
これに対しアメリカでは「議会」にたとえられます。主な任務は、CEO(大統領)の監視であり、取締役(議員)が業務を執行することは基本的にありません。(ex officioと言われる人を除く)。取締役会(議会)は株主(国民)の代表で構成され、その中には「野党議員」も一定数存在します。
日本では、「部長の上が取締役」というイメージが有りますが、アメリカではVP(省の長官)と取締役(議員)の間に上下関係はありません。日本では社外取締役に「経営への助言」が期待されることがありますが、アメリカでは「経営への監視」が期待されます。
結局、取締役会が「内閣」なのか「国会」なのか、イメージをはっきりさせないと、議論が先に進まないように思えます。日本でも「国会」だと割り切れば、社外取締役(野党議員)がいても拒否感はなくなるでしょう。また「全員一致」でないことも、当然と受け止められるでしょう。

投稿: unknown3 | 2019年1月20日 (日) 14時08分

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